ウィルスの平和利用について

 忘れたくても忘れさせてくれないのがコンピュータウィルスである。忘れたころになるとかならず騒ぎになる。
 何が悪いって、電子メールに添付ファイルをつけるからこんだけ広がるのだ。そんなわけで、私は画像以外のファイルを添付して送るときはかならずウィルスチェッカーをはたらかせて該当のファイルをチェックし、そのログをメールにつけることにしている。これが信用というものだと思っている。
 そんなわけでこのたび、この良い習慣を広めようと思った。そこでダブルクリックでフロッピーをウィルスチェックしてくれ、さらに電子メールソフトを立ち上げて、チェック結果をペーストし、添付ファイル選択画面を開くというプログラムを書いた。多分普及しないだろうなあ。(このソフトは当社の環境に極めて深く依存していますので、公開は見送らせていただきます。どうやって作ったか知りたいというお問い合わせがあればお答えしますが。)

 しかしいつも思うが、ウィルスチェックプログラムを「ワクチンソフト」と呼ぶ喩え、なんとかならないものか。普通に聞くと一度走らせておけば二度とウィルスに感染しないかのように思われるではないか。だから本当は「抗生物質ソフト」とか呼ぶ方が適当だろう。あ、抗生物質は細菌には効くが、ウィルスには効かないか。
 このへんの誤解しがちな面を最強に突いたのが「ウィルスのつかないフロッピー」だろう。このうたい文句嘘じゃないぞ。抗菌プラスチックで作ってあるそうだ。でも、生半可な知識の人が聞くと、コンピュータウィルスがつかないのか、と思うかもしれませんな。
 ただし、もろ「ワクチン」と呼んでいいソフトが作れないことはない。例えば4096は、感染したファイルの日付を100年先にするので、感染前からEXEファイルの日付を100年先にしておけば感染しない(はずである)。メリッサは発症の有無をレジストリに書き込むので、あらかじめ「メリッサ発症済み」の情報をレジストリに書いておけばメリッサは発症しない。
 メリッサのソースから発症部分を取り除いてレジストリだけ書き換えさせて免疫をつけるなんて、いかにもワクチンではないか。しかし、レジストリまでいじれるマクロ言語というのもすごいねえ。ということはWindowsNT WorkstationをWindowsNT Serverに変化させるウィルスというのも書けそうですね。MS-OFFICEのマクロウィルスでこれをやられたら、さすがのMicrosoftも何もいえないかもしれない。

 かつて私も一度だけウィルスを書きたくて仕方がなくなったことがある。300個のMS-Excelファイルにかなり複雑ながら機械的に同じ操作をして最後に印刷する必要に迫られたときだ。ああ、その処理をマクロで書いてついでに同一ディレクトリ内の他のMS-Excelワークシートに感染するようにしておけばMS-Excelファイルを開きさえすれば自動的に罫線を引いて計算をして、印刷までやってくれるはずだ。できたらなんて楽だろう。
 しかし、どうやったら無秩序に広まることを押さえられるかが分からなかった。うまく使いこなすことができれば、LAN上のパソコンの資源配布なんかに応用が利くのになあ。

 核融合は「とにかく爆発させる」という点では実用化されているが、核融合炉は実用化されていない。つまりは、そういうことだろう。

コンピュータネタ、目次
ホーム