Linuxは太らせて食え

 いきなり過激なタイトルでございます。
 Solaris8がオープンソースになりました。日本語版リリース次第注文しようと思っています。先日近所にパソコンショップができて、開店記念のセールで買った20GBのハードディスクが空いているのです。本来はVine Linux2.0を入れる予定でしたが、発売が延期になってしまい、ええいSolarisにしてしまえ。

 このSolaris8の無償化。SUNの戦略のえげつないまでのしたたかさにむしろ感動してしまいました。Windows系システムのバグやセキュリティホールの余りの多さに、NTがサーバー用から駆逐されはじめ、UNIX系の良さが見直されてきた。そしてUNIX系の先頭を走るのが史上もっとも足の速いペンギンくんらしい。とある会社の営業の人に聞くと確かにLinuxの案件も増えているそうだ。
 でも、実際に使おうとすると思うんだよねえ。「大丈夫?」

  1. きちんとサポートしてくれるの?
  2. ミドルウェアはそろうの?
  3. KDE?GNOME?ウィジェットによって互換性の問題に悩むことはないの?
  4. WindowManagerを変えられるのはいいけど、みんな同じ画面の方が楽じゃない。
  5. これでもかとパッケージをバンドルしてくれるはいいけど、データベースサーバーで知らない間にメールサーバーやFTPサーバーが走ってくれたりするとセキュリティホールになりやすい。
 そんなころにSolarisは無償よ。などといわれるとうれしいんですね。サポート料は高いけどSUNがしっかりとやってくれるだろうし。ミドルウェアもそろっている。
 デスクトップ環境はCDEで決まり!ワークステーションをいくらかでも入れている会社でSUNを使った経験のないところは逆に少ないだろうから、どこかに使えそうな人がいる。
 何よりうれしいのは「開発端末が足りません!」「運用監視サーバーがもう一台必要です!」というよくある状況になったとき、その辺のパソコンにFreeSolaris入れれば何とかなるかもしれないという可能性があるということ。
 あー気が楽。

 SUNが「Windowsに振り回されるのはもうたくさん。Linuxはコスト面では魅力だが不安が残るなあ、、、」と悩んでいる人へ向けてSolarisを公開したのなら、ホントコレはすごい。LinuxがUNIX系OSの良さを再確認させ、皆の目を向けさせたところで真打ち登場といった感じ。LinuxとSolarisを同じく無料で提供されて、あなたはどっちを選びます?
 FreeSolarisは撒き餌と分かっていても、そっちに食いつくのが企業ユーザーというものではないかなあ。

 更にSUNがオープンソースの開発モデルが構造的に超えられない弱点に気がつき、そこを突いたとしたならこれは偉い。この構造的限界は私が気がつく限りでは次の2つ。

  1. テストできないプログラムは作れない。
  2. 先端技術は実装できない。
 確かに反例はある。IBMは大型汎用機System390で動くLinuxをオープンソースにしたらしい。しかしこれはオープンにしてもその特性を生かせないのではないかな。だれが書き換えてテストをする?個人では到底買えないS/390のOS部分に手を入れてテストできる自由を持っている人が果たして世界に何人いる?
 テストできないプログラムは作れないということはこういうことだ。原子力プラントの制御プログラムは公開してもテストできない。そうでなくとも、個人として自由にできないレベルの環境をぶん回すプログラムは、もうテストできない。従って「独立ピアレビュー」は機能しない。
 もっとも、企業としてそのオープンソース運動に乗った!というのはあり得ないことではない。期待はしているのだ。
 とりわけ、大規模ネットワークの運用監視ツールやHA切替ツール。これは個人の環境では必要なかろうから、フリーソフトウェアとしては誰も作らないし、テスト環境もない。でも企業なら(どういう損得勘定が働いているかは別として)動かし得る。なんかモトローラがHA Linuxというのを出したらしいのでそんな動きもあることはあるのかな。
 しかし私だけの感覚かもしれないけど、「オープンソース」というと企業が作って公開する、という感じ。フリーソフトウェアは個人や教育機関がつくるというイメージだなあ。ストールマンもそこまで言ってくれそうだった。

 先端技術が実装できない。というのはそれをしてしまうと、十分な開発者が揃わないから。コードを支える開発者コミュニティが作れなければオープンソースのモデルは成立しないことになる。ある程度スキルがあれば、誰でもさわれる程度のソースプログラムでなくてはならない。
 そんなわけで、Linuxは複数CPUへの対応が遅れてしまったのではないかと考えている。その代わり、大変ではあるが技術的にはさほど高度なものではない2000年対応はいち早く完了している。
 さらに言うと、GNUはマイクロカーネルベースのOSを作ることはできなかった。しかし、アップルが社内資源を投入するとLinuxはマイクロカーネルベースに変身した。どうしても企業の規模で支えなければならない技術水準も存在するのでは、ということである。このレベルをオープンソースのモデルではクリアできないんじゃないかも。

 しかし、企業が本格導入を意志決定するのは、このレベルのツール(というかミドルウェア)があるかに左右されるのである。確かにOSがマイクロカーネルであるかどうかはどうでもいい。しかし、今後業務が拡大したとき、スケーラビリティは問題となる。いざとなれば128CPUが必要なときもくるのだ。HA構成も様々なレベルでの切替を選択しなければならないのだ。たしかにTurboLinuxのサーバー版にHA切替機能はあった。しかし、pingが返ってこなかったらバックアップ機が立ち上がる、そのとき共有DASDは引き継ぎません、では話にならないのである。DBが落ちたとき切り替えなければならないときもあるし、トランザクションが滞ったとき切り替えなければならないこともある。もちろん運用中のデータはそのまま引き継ぐ。

 Solarisはこのへんが揃っている。だから、今Linuxが気になっている人はやがてSolarisを選択することになろう。心配なのは、SUNは今度はどこを潰しにかかるかである。Javaの移植が終わったところでBlackdownをつぶしたという前科があるからなあ。(やがてFreeSolarisでLinuxの開拓した市場を奪う戦略がある以上、Linux上のJavaがこれ以上発展してもらっては困るのだ、彼らにとって。)

 いろいろ書いてきたが、私は94年からLinuxを動かしている。典型的なタコちゃんで、Xも立ち上げられなかったが(Power9000なもので)、それでもコマンドラインからログインして感動に打ち震えた記憶がある。最初にrootでloginするとyou have mail。あれ?スタンドアロンなのに、とマニュアルを繰って"mail"と入力。welcom to linuxのメッセージを見て涙があふれてきたのは私だけではあるまい。そんなOS他にあります?だから私も実はLinux大好きです。

 しかし、ビジネスの世界では。
 ユーザーは安心を求めてSUNにゆく。
 ベンダーはLinux用だと無料か破格の安値で製品を提供しないとならないようであるが、Solarisならばそれなりの値段付けができる。
 フリー/オープンソースで作られたLinux用のプログラムは、ソースが公開されているために、どんどんSolarisに移植される。
 どうしよう?(なんか思うところがあればメールください)

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