パソコンの無責任な世界

 インターネットと教育とかデジタルデバイドというあたりでいろいろと調べていると、村民にパソコンを配った「インターネットの里」山田村の例でこんなのがあった。スキャナを買ったけど動かないと言っているのでお助け隊として出かけてみると、スキャナを箱から出してもいなかった。
 これで思い出してしまったのが、「マッキントッシュへ愛を込めて」にあったディスク圧縮ツールを買ったが変化がない、という苦情の内容をよく聞いてみると「ソフトの箱をハードディスクの隣に置いただけでディスク容量がアップすると信じていたという例。

 では笑っていればいいのかというと、そうでもないことに気がついた。先日誰でも知っている有名パソコン専門店で外付けスピーカーを物色しているときである。一つの棚にあった6種類のスピーカーで、接続の方法が書いているのはわずか1つであった。それもUSBのロゴがあったから「ああ、USB接続なんだな」と分かるだけであって、結局、パソコンにスピーカーがつなぎたいなと思った人が、その接続の仕方を確認して購入できる製品は、はっきり言って「皆無」であった。
 自分のパソコンはサウンドカードがついているデスクトップだからRCAピンプラグで接続しないといけないな、というところまで考えた人が店を訪れたとしても、どのスピーカーが繋がるのかが分からない。外部アンプが必要なのかどうかも判然としない。名の通っているメーカーのスピーカーだからと買ったはいいが、自分のパソコンにはミニプラグしかついていないので繋げないと知ったのが帰ってからだとしても、それは買った方が悪いわけではなかろう。
 ものによっては、パッケージに自社のノートパソコンと並べた写真を使っているものもある。もちろん結線はない。そういえばこのメーカーはワイヤレスのヘッドホンステレオを作っていたような気がする。そうなると「隣に置けば音が出るのか」と考えるのはとてもまっとうな発想である。
 それともパソコン関連商品は、シールドを破ると返品不能になるから売りつければ勝ちとメーカーは思っているのだろうか。

 パッケージを破れば返品不能という契約を押しつけることに成功したと思いこんでいる安心感からであろうか、これがパソコンソフトになるとさらに状況は悪くなる。
 WindowsNT4.0がこっそりとHPFSのサポートをやめたのもひどい話だが、これはWindowsNT3.51のCD-ROMからドライバをもってきてレジストリを書き換えることによって対処可能である。(厳密には契約違反だそうだが、既存HPFSのデータをNTFSにコンバートするサービスをMicrosoftが行ってくれない以上、この契約に縛られて業務を止めるわけにはいかない。少なくともインストーラーを立ち上げて初めてサポートしませんよと言っているのはあまりにもあまりである。)
 一番どうしようもなかったのはソフトボートのPartition Commanderである。これはWindowsNTに対応していると書いていながら「起動ドライブがFATでなければ使えない。」その情報が知らされるのはシェリンクラップを破いたあとである。おい、では返品に応じてくれるのか?しかたがないので、知り合いの条件が合う人に使っていただいた。え、契約違反?では御社は私の開発した「ソフトのバグを検知する」ソフトを何も言わず1万円で買ってくれますか?わずかフロッピー一枚のコンパクトサイズ。もちろん機能は「バグは常にもう一匹いる」という格言を表示するだけですけど、実際には使えないという点ではあんたが売っているソフトと使用価値は似たり寄ったりでしょう。

 冷静を装うのが得意な私としては珍しく熱くなってしまった。ようするに、パソコン業界ということになると、商取引の慣行が急に言ったもん勝ちになってしまうのは問題では?ということだ。普通の取引ならばとても許されないであろうに。
 もっともシェリンクラップを破いたソフトについて返品に応じさせたことが一度だけある。「まだCD-ROMは開封していない」から使用許諾権契約が発効していないという理論武装。これはわが子の遊び用ソフトなので泣き寝入りするわけにはいかなかったのだ。デモをしていたのと同じキャラクタを使用したシリーズもののソフトが隣に山積みしてあったら、ついつい間違えて買ってしまうではないか。しかも「デモしていたのと同じソフトはそこには売っていなかったのだよ。」交換に応じてくれたことには感謝するが、ガソリン代と駐車場料金は私が負担したから、その陳列に問題があった店へのリンクのみ張っておくことにする。

 長年基幹業務を背負ってきたメインフレームには、こんな無責任体制はないのである。例えばこちらなんかを見るとディスク障害で起こった問題についてメーカーに損害賠償を請求する予定だ、などと書いている。当然だろう。WindowsNTを基幹業務に入れたいというなら、このへんもMicrosoftは見習ってゆかねば同列に比較してもらえるようにはならないだろうね。
 それにしても銀行がここまで発表するとはね。包み隠さず公開するのが信用か、それとも不安を与えないように隠しておくのが信用か、社内におけるイデオロギーの対立が凄かったろうと思うのですが。でも私としては福岡銀行のこの行為に拍手。
 なんとなくこの対立、セキュリティを守るには、ソースコードを公開した方がいいか、隠した方がいいかという議論との共通性を感じるのですが、私だけですかね。

 しかし、ファイルシステムのバグが怖いからフラットファイルは持たずに全部データベースにするという設計をしなければならないといわれてしまったUNIXを基幹業務に使うというのも、相当きている発想だとは思うのですが。

 愚痴りついでに、ねえ、みんなどうしてDLTなんか使うの?Quantum一社しか作っていないんだよ。Syquestが倒産したような例もあるんだから。ねえ。例えばZIP使おうなんていっても、だいたいはMOにするでしょ。そのとき必ずZIPは一社しか作っていないから将来性に不安があるって言うでしょ。どうして首尾一貫してなくて平気なの?

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