ラブウィルスのその後

 ラブウイルスはその印象深さゆえに、報道されると誰もが忘れずにセルフチェックをかけてくださったようです。国内で被害にあった企業って少ないのではないですかね。

 犯人探しも一段落ついたのですかね。フィリピンの男女説、やはりガセだったようですね。それはそうでしょ。同性から「ILOVEYOU」なんて来ると、気持ち悪いと開いてもくれないと想像するのが普通でしょう。開くとすればやはりあっちの方々ではないでしょうか。それに思い至らなかったはずの作者がノーマルな男女のカップルというのは考えにくい。

 日本では広まることの少なかったラブウィルス。これは何よりも各ユーザーの努力によるものです。ついにメリッサの教訓が生かされたという記念すべき出来事であったといえましょう。
 逆にワクチンソフトメーカーは「何もやっていない」ことがばれてしまいました。というのは、私がいつもお世話になっている「小さな流行」社の「ウィルス破砕機」は、デフォルトの設定ではラブウィルスを発見できないからです。
 理由は、先日書きましたとおり拡張子がvbsのものをチェックに行かないことです。もちろん設定することはできますが、その会社のホームページでは一切アナウンスしていません。あたかもパターンファイルをアップデートすれば大丈夫と言わんばかりです。
 さらに、コマンドライン型ウィルスチェックプログラムvbscan.exeも拡張子vbsのファイルを検索してくれません。
 試しにやってみたんですよ。適当なテキストファイルの拡張子をvbsに変えて、コマンドラインより検索をかけてみる。
 《検索したファイルの数 : 0》と表示されました。

 そんなわけで、今回のラブウィルス感染を止めたのはユーザーの努力であると、このように判断していいと思います。

 なんでこんなことを言うかというと、先週の週刊アスキーのコラムを読んで、あまりのいい加減さについに怒ってしまったからであります。先ほど紹介しましたワクチンメーカーの人がインタビューに答えて次のようなことをのたまわっております。

 おい、ちょっと待て。きちんと仕事してから言えよな。自分のワクチンソフトが対処できなかったのだから、対策ソフトのインストールをしても無意味でしょ。対処していないにも係わらず対処したように見せかけたことはウィルスの蔓延を助長したのだから、ネットのモラルに御社も反してるんではございませんか?挙げ句の果ては添付ファイルを開いたのが悪いだのと、ユーザーの責任にするとは、あまりじゃござんせんか。
 ひょっとしてこのメーカーが自社製品がラブウィルスを検索できないことを本当に知らなかったのかもしれません。先ほど紹介したような最低のテストもやっていなかったということですから、本当にそうかもしれません。とすると「実際に動くかどうか分からないものを売っている」ということになります。なるほど「未知ウィルスに対応」というのはこのことでしたか。自社において未知の、つまりテスト未済のウィルスについてもひょっとしたら発見できるかもしれない、そういう意味ですね。

 製品のテストもせずに売るというのはMicrosoft以来この業界の伝統ですが、それにしてもね。せめて他者のワクチンソフトをバンドルして売るといった程度の良心は持ち合わせておいてほしいものです。

 いずれにせよ、VBS_NEWLOVE.Aですか?ラブウィルスの改良型。この会社のワクチンソフトでは検出できないことは間違いありませんな。でも、それはまだいいんです。製品が値段通りの役割をしなかった。あるいは約束した機能を果たしていないというだけです。
 問題は、検出できないことを知らないことであり、挙げ句の果ては感染の原因をユーザーに押しつけたことなのです。

 いいですか。メリッサの教訓を生かして、添付ファイルはかならず一度ウィルスチェックをかけてから開く癖を付けている人でさえも、御社のワクチンソフトを使っている限りは感染/発病してしまったわけですよ。それに対して、どう申し開きをするつもりなのですか?
 というわけで、この会社にメールを出し、週刊アスキーにもメールを出しましたが今のところ黙殺されております。

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