利用しようのないコンビニ

 「例えばネットにコンビニを作るという発想」
 マイクロソフトのテレビCFで使われているキャッチフレーズの一部だが。売り上げはゼロだろう。(縁故者が買ってくれるかな)
 ネットにコンビニを作る、という発想は「コンビニは伸びている」+「ネット販売は伸びている」=「ネットでコンビニを作れば伸びる」という単純な計算で導き出されたものであろうが、なぜコンビニが伸びているか、なぜネット販売が伸びているか、ということを理解して生まれた発想ではないからだ。

 コンビニは「いま、そこにある」から便利なのだ。電球が切れた。困った。すぐに買ってこよう。これがコンビニのいいところだ。これに対して、ネット販売はその辺では見つからない珍しいものが購入できるから利用するわけである。それとも夜中に突然いなりずしが食べたくなって、ネットで注文する人間がいるかね?
 ネットに限らず通販の欠点として「注文してから届くまで時間がかかる」というのがある。コンビニはそれがないのが長所なのだ。
 ネット通販の広告で「全て注文を受けてから精米!」というのがあったが、これも似たような取り違えをしている。近所の米屋ならその場で精米してくれることは言うまでもない。そういえば似たような広告文を昔考えた。「焼きたてのクロワッサンを、本場パリから毎日空輸しています」。もちろん日本に着いた時には焼きたてではなくなっているというギャグのつもりだ。

 万が一でも利用する可能性があるものであれば、無いよりもあった方がいい。ひょっとしてネットにコンビニがあれば利用する人がいるかもしれない。しかし、それがビジネスとして成り立つかどうかは別である。

 技術者がよく陥るわなに「技術的にできるようになったから、みな利用するようになるだろう」と思いこんでしまうことがある。独居老人支援のネコ型ロボット。本体5万円はよいとしても独自プロトコルの通信ユニット50万円となればだれも利用しないだろう。テレビ電話だって、とっくに市販されているが利用されていない(私は買ったが)。この手の最悪の例が「キャプテン」だと思っているのだがいかがなものだろう。ロータリーエンジンは残念でした。でもプリウスはマーケティングとのバランスがとれていました。開発費込みで原価をはじき出して、販売価格を決めたとすれば、さあどうなったでしょう。

 同様なことが、インターネットでサービスを立ち上げるという分野で起こっているようだ。例えば「ネットでコンビニを開くという発想」。30分以内に品物が手に入らないとすれば、誰が利用するだろうか。インターネットを利用したビジネスモデルの場合、ハードウェアと違って思いついてから実装するまでのハードルが低いだけにむしろ始末が悪い。

 でも、まあ、ネットでコンビニの品揃えが分かると便利だなあ。子どもが「ドーナツがほしい」と主張するので、夜中に買いに行ったが、さて、どのコンビニにあるだろうか?と悩みながら出かけたという経緯が夕べある。コンビニの在庫管理はPOSを利用した最先端のものの筈だから、リアルタイムで提供することも不可能ではないでしょう。
 でも、これが売り上げ増加につながるかは不明。「ドーナツがあるかなー」と思って行くと無かった。でも折角だからお煎餅を買った。こういう動きがなくなるからである。逆に、もしネットでドーナツを買いに来たお客さんに、雑誌を買わせることができるような仕組みづくりができたとしたら、ネットにコンビニを作ることの価値はあるかもしれない。
(コンビニは、お客さんの視界に入る商品の量がものすごく多い。これに対してパソコン画面はあまりに狭すぎる。そんなわけで、商品の陳列はコンピュータお得意の「階層構造」に沿って行われる。コンビニは商品を種類別に分類して陳列していても、お客さんの目にはフラットに見えるのだ。つまり「ネットにコンビニを作るという発想」をとても好意的に考えると「ネット販売に、階層構造以外の分類手法を作る」ということになるのかな。でも、「それを支えるのがマイクロソフト」とはとても思えない。)

 ちなみに、ニョーボの名誉のために付け加えますと、ドーナツとかを焼くのは得意です。作るのに必要な時間以内にドーナツがほしかったから、コンビニに行ったわけです。


 ニョーボからクレーム。ドーナツを「焼く」と言った点ですでにおかしい。ドーナツは「揚げる」ものだ。ドーナツにはパンタイプとケーキタイプと二つあって・・・(以下延々と続く)
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