システム稼働セレモニー用プログラム

 「このシステム、なかなかいいのでオープニングセレモニーを開きたいんだが。」
 こんなことを言われたとする。誇らしい反面、追加要件として考えた場合、これほど嫌なものもない。大型汎用機を使っている場合はまだよい。クライアント=サーバーシステムだった場合など悪夢である。

 まず、案件が値切れない。なにしろオープニングセレモニーに出てくる人は偉い人である。へへーと平身低頭、了承するしかない。
 万が一にもトラブルを起こせないというプレッシャーもなかなかだが、オープングセレモニーの場合、だいたい偉い人が「スイッチ」を入れる。つまりシステムとしてみた場合、オープニングセレモニーを行うということは、システム稼働のスイッチを作れという要件を追加することを意味している。しかも、まさかホテルで行うということはないだろうが、どこか当初予定されていなかったところにそのスイッチ(システム起動のオペレーションを行う端末)を置け、ということになる可能性はある。薄ら寒いコンピュータルームに首脳陣や報道陣を入れるわけにもいくまい。コンピュータルームを解放するということはセキュリティ上も問題となる。すると物事はとてつもなく大変になる。

 汎用機の時代ならまだよかった。VTAM定義を1つ追加して、線をずるずると伸ばしダム端末を置けばよい。そして偉い人にものものしく実行キーを叩いてもらう。
 キャラクタ端末だと、それなりの重々しさがある。いかにもコンピュータ、簡単にはさわれない雰囲気。起動も速いぞ、繋ぐとすぐに画面が現れる。そこから適当なジョブをサブミットしてもらえば、格好は付く。

 しかし、クライアントサーバーシステムでは、まず線をズルズル引っ張ってくるだけでも大変。他の環境に影響がないようにとセグメントを1つ割り振ったり、そうなるとルーターを一個追加することになるか?ネットワーク設計も監視設計も影響を受けるぞ。
 下手に端末にWindowsなんぞを使っていたとすると大変だ。汎用機なら実行キーの押下で納得してくれても、Windowsならマウスカーソルをあわせてクリックという動作を当人、期待しているかもしれない。そうなると操作ミスがないよう、そして見栄えがいいようにカスタマイズされた画面を作らなければならないかもしれない。それもシステム起動という重要な部分を。

 端末の起動時間も大変だぞ。電源を入れて立ち上がるまで2分くらい待つか?

 最もみじめなのは、セレモニーが終わった後である。「おーい、そのパソコンもかたずけてくれ」「いいえ、オンラインサービス中は他に影響を与える懼れがあるので電源落とせないんです」「困るなあ、昼からここ使うんだよ。」

 かくして、システム担当者が正気であれば別のことを考えるだろう。「システムを起動しているように見えるダミーシステムを作ろう。」
 ウィンドウの上部には「○○システム起動」というフォントに凝った文字が並ぶ。ウィンドウの色は会社のイメージカラー。左にはリストボックス。右には大きな「スタート」ボタン。スタートボタンをクリックすると、リストボックスに予め用意されたメッセージが刻一刻と出力される。

「08:45:00 ○○システム稼働開始」
「08:45:02 データベースが起動しました」
「08:45:05 LANが起動しました」
「08:45:08 ○○部門システムとのセッションが確立しました」
「08:45:10 データ取込開始」
 うう、むなしい。でもジョークソフトとして作ると面白いかもしれない。

 セレモニーはこの通り乗り切ったとして、実は裏でトラブルを起こしていたとしたら、偉い人の怒りはものすごいだろうなあ。(^^;

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