孤島の一台(その1)

 USJの水のみ場の水が工業用水だったという件。さもありなんという感想である。
 だって、Universal Studioはその名のとおり「スタジオ」だよねえ。だからそこにあるのは全部「セット」。セットの水のみ場にとって、問題なのは水が出るかであって、カメラに写らない限りその水に雑菌が混ざっていようが関係ないだろう。
 Universal StudioにいるETやキングコングが本物でなかったとしても誰も文句を言わないのに、水のみ場が本物でなかったからといってどうして問題になるのだろう。
 まあ、こんなのがあったなあ。どこかの博物館かフェアかなんかで神社を展示していた。ついついお賽銭を入れる人がいる。このお賽銭は遺失物か、それとも宗教団体の収入に準ずるものか?まあそういった問題だろう。USJの水のみ場はセットかそれとも本物か?
 言い訳という点から見ると、USJが最初に言うべきなのは上のようなことであろう。

 1997年初頭にパリに旅行に行ったことがある。行きの飛行機の中で隣に座った人がごそごそとノートパソコンを取り出した。林檎マーク入りのかっこいいやつである。もちろん私もノートパソコンを叩いていた。19800円アウトレットのThinkPad220である。
 機種と価格の差を超えてたちまち意気投合したことは言うまでもない。彼もやはりパリから電子メールとかを送るつもりだという。NiftyのIDを持っている同志、着いたら早速連絡をとろうと約束した。
 しかし彼からのメールはこなかった。そういえばシベリア上空で電池が切れたんだっけ。残念ながら海外からの通信の準備を殆どしていなかったようだ。せっかくパリでモジュラージャック変換アダプタを売っていそうなところを教えてあげたんだけどな。

 当方のThinkPadは古く安い。しかし通信準備はばっちりであった。もちろんDOSしか動かないが、海外からコンピュサーブを通じてNiftyにアクセスできるよう、ログオンスクリプトは書き換えておいたし、動作テストもばっちり(日本から国際電話でパリのアクセスポイントを使った)。
 持っていったモデムは2つ。予備のパソコン(PC110)も準備。電話線と直接モデムを繋げることができるようなワニ口クリップも自作。極めつけは単一電池6本の外付け電池ボックスである。簡単なものだが効果は絶大である。おかげで長時間の機内もまるで電池を気にせずに済んだ。(手荷物検査でひっかかったがPanasonicという世界的に有名なブランドの電池だったせいかおとがめはなし。)

 当時、もちろんWindows95発売後ではあるが、インターネットでメールを送るということはそれほど一般的ではなかった。電子メールといえばまだまだパソコン通信(まもなく死語になりそうだな)を連想する時代であった。ちなみに、パソコン通信はキャラクタベース、設定や操作にはそれなりのスキルも必要だった。(今でこそ偉そうなことを言っているが、私も最初は自分ではサインアップができず、ニョーボのおととに全部やってもらったのだ。)

 今であれば、インターネットの設定ツールがパソコンに勝手にプリインストールされており、参考書もあふれている。だから適度に苦労はするものの、ダイアルアップくらいなら初心者でもなんとかできる。その代わりパソコン通信で鍛えられた人たちと違って、どうもうまくいかなくなった時に頼りにできる経験がない。そんなわけで、日本では「インターネットに毎日繋いでるよー、常識だろう」という顔ができている人でも、さあ海外に行ったら手も足も出なくなるのではなかろうか、と心配しているのだ。多くの人はモデムの動作を設定するためにATコマンドというのがあるとすら知らないだろう。
 インターネット接続なんて簡単簡単。海外だって楽チンだよ。ローミングサービスの電話番号は調べたし、つながりさえすればインターネットに国境はないからね、と考えて海外に出た人はかなりの割合で愕然とするのではなかろうか。

 インターネットって便利なんだよ。居ながらにしていろいろ調べられるからね。で、オーストラリアから接続しようとして調査する。例えばBIGLOBEはこんな風に書いている。読んだ人は思うだろう。ふんふん簡単そうだな。
 でもこのサイトの説明、不十分もいいところである。ダイアルトーンが違うということも書いていないし、モジュラージャックの変換アダプタが必要となる可能性が高いことも書いていない。(だいたいこのサイト中をうろうろしているとブラウザの「元に戻る」ボタンが効かなくなる。)

 かくして、パソコンを持っていったはいいがモデムがダイヤルしてくれない。モデムの初期化時に"ATX3"と打ち込めばいいのだが、ATコマンドなんてまるで知らない。だいたいATコマンドをどうやって打てばよいかも分からない。思い余ってインターネットカフェに駆け込んでなんとかしようとしても「ふつーの海外でのパソコンは日本語が使えない」。
 それとも時代が変わったのかなあ。モデムの初期設定が既にダイヤルトーンを無視するようになっているのかしら。Windows2000は英語版でも日本語が扱えるそうだから、日本語も使えます、という設定に既になっているのかしら。

 今の時代、海外にパソコンを持ってゆく人は結構パソコンを頼りにしているはずなんです。ニュースは見れるし、流行も分かる、メールのやり取りもできる(ハズ)、しかし現地で初めてこのままでは使えないと気が付いたとして、さあどうすればいい。普通は回りに教えてくれるような人はいないぞ。旅行ならあきらめもつくかもしれないが、しばらく滞在するとなると結構致命傷になるかもしれない。

 かくして問いかけをうちたてた。「海外に1年行く人がいる。インターネットに接続したい。さあ何をもってゆけばいいだろう」。結構大事なんじゃないかな、これ。あ、もちろん行った先の大学で自由にインターネットが使える環境だ、なんてのは別よ。まあWindows95以後パソコンを使い始めて、普通に使える(年賀状をパソコンで作れる程度)の人を想定しましょうか。

以下、次号(回答でるんかいな)
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