プロ用キーボード

 ドイツの労働省では、ノートパソコンの使用が禁止されているらしい。
 キーボードとディスプレイが指と目にあまりよろしくないからなのでしょう。

 もっとも日本のオフイスではそんな贅沢もいっておれず、ノートPCが使われていることが多い。
 さて、当方、仕事の引継の用が生じ、大量の文字入力をする羽目になってしまった。会社の備品がいくらキータッチに定評のあるThinkPadとはいえ、ノートPCのキーボードではちょっときつい。ここでIBM PS-2キーボードを持ってきたいところであるが、長年ノートPCのキーボードに慣れて指が弱ってしまったためか、あのカ・イ・カ・ンとも言えるキータッチでも長時間入力では指が疲れて仕方が無くなってしまった。
 評判のいいHappy Hacking Keyboardも、一度借りて使った限りではキーを押したときの「カスカス」とした感じがいただけない。KINESYSのErgo Keyboardは持っているけど慣れ親しむほど使い込んではいない。ならまあ同じ部とはいえ異動で気分一新、ということでキーボード一枚買ってしまった。ちょうど自宅のデスクトップPCのキーボードが今一つだという事情もある。

 買おうと思いたったということは、目を付けているものがあるということで、それは去年後半から人気沸騰の東プレRealForce106である。キーを押し下げたときの静電容量の違いを検知するというもので原理的に接点を持たない。指の弱った私にはピッタリね。ということで、娘をつれて秋葉原に買いに行った。
 ちなみに秋葉原を歩いていて一番ポイントの高いのは、可愛い娘を連れていることと当方勝手に思っている。さすがにキーボードを買いにいくとは言えないので「交通博物館に行こうね」と連れ出した。例によって白雪姫のコスチュームなので一歩間違えると、いろんな意味で危うい。

 RealForce106。実は2種類あって「キーの重さ中心部45g、周辺部30gのレギュラー品」と「全域30gの展示会限定品」で、そこは世界の秋葉原、展示会限定品が売っていたりする。力の強い親指・人差し指・中指・薬指が叩くキーと小指が叩くキーの重さを変えているというこだわりをとるか、世界で100枚ないであろうという希少価値ととにかく軽いキータッチをとるか、人によって違いがあろうが、ちょろっと叩いて全域30gを選択してした。
 このキーボード、「叩いて、快感」という程ではないが、1週間の間、休みなく引き継ぎ資料を叩きに叩いたところでは大満足。全然指が疲れない。ちなみに私がかつて「叩いて、快感」を感じたキーボードは、IBM PS-2(オリジナル)およびHP-100LX、ThinkPad240である。キータッチの快感は実際の叩き易さのみに左右されるわけではない。(HP-100LXを使っていた人ならこの感覚分かってもらえると思う。見た目からは信じがたいほどの叩き易さににんまりとしてしまうのだ。)
 ただし一つだけ欠点がある。キーが軽すぎるのだ。ホームポジションに指をおいて考えているとしばしば指が勝手にddddddddと押してしまう。それを考えると中心部のキーは45gのレギュラー品の方が使いやすいのかな。ただしキーストロークは十分深いので救われている。

 コンピューターの発明はオペレーターという職業を生み、IBMは彼らのためにキーボードを作った。この時に必要とされる特性は「コマンドが間違いなく打ち込まれていることを指に伝える」ことであった。間違って別のジョブをキックしてしまったら大変だ。だからキータッチはかっちりしたものとなった。(もちろん以前書いたように、オペレーターをキーボードに縛り付けておくために、キータッチの快さを提供する必要もあった。)IBM PS-2はこの流れをくんでいる。
 オペレータという初期のキーボードユーザーは短い文字列を正確に入力する事を主眼としていたが、今や圧倒的多数となったキーボードユーザーはワープロやメーラーで文字入力をすることを主目的とするがゆえに、さほどの正確さは要求しないかわり(すぐに直せばよいのだ)とにかく楽に入力できることを求めるようになっているに違いない。
 とりわけ機械式タイプライターの伝統を持たず、入力時に仮名漢字変換で余分な負荷をかける日本語入力についてはそうであろう。(断言できないのは、携帯電話のキーを目にも留まらぬ早さで叩いてメールを入力している新世代がいるためである。)

 かくして「軽く叩けて癖がない」東プレのキーボードみたいなのが、時代にあったキーボード、ということになる。なお、全域30gのキーボード、展示会では30枚が3時間で完売となったそうだが、もっと売れるキーボードがあるぞ。106キーボードのテンキーに「000」をつけてくれ。US配列101キーボードのテンキーに「00」がついたのはあるが日本語キーボードに「000」がついたものはなぜかないのだ。
 日本円にはセントとかペニーといった補助通貨がないので、やたら「000」を入力する必要がある。従って世間の経理関係者は「0」をやたら叩いているはずである。これが銀行の円資金担当だと「000」の叩き過ぎで腱鞘炎を患っている人すらいると聞く。
 一応USB接続のテンキーで「00」がついたのはある、が、金額入力は3桁単位だし、そういうところはセキュリティとやらでパソコンのUSBを殺しているのが常、ということでPS-2接続のキーボードがやっぱほしいのよ。
 東プレさん、作ってくんないかなあ。だめえ?Bloombergのキーボードよりは作りがいがあると思うけどなあ。

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