国民経済はドットネットに乗って

 IT投資促進税制の対象となる電子計算機の定義を見た。
 メインメモリが256MB以上と定められている。
 が、サーバー用については128MB以上でもよいという追記がある。
 クライアントの方がサーバーよりメインメモリが大きいという非常識をお上が認めたわ けだ。
 しかし、256MB以上のメインメモリを必要とするクライアントなんて、事実上、WindowsXPしかないんではないかい。

 つまり、減税の恩恵を受けようとすると、必然的に非常識なほどメモリを喰うクライアント用OSであるMicrosoft WindowsXPを使わねばならなくなることになる。
 財務省とMicrosoft、ついにつるんだな。(そうでなければ、別にクライアントの主記憶制限を256MBとする必要は無かろう。)

 もっとも財務省がMicrosoftとつるんだ、以外の理由も考えられなくはない。
 まだ財務省が電子商取引の推進を考えていて、通産省との縄張り争いに勝とうとしているのであれば、なんとかして実用化実験を先行させなければならない。そうなれば当然クライアント用OSが統一されている環境を想定できるように仕向けた方が有利である。かくして、税制をいじくることによって国内企業の皆様にMicrosoft WindowsXP導入を強力に促せるのであれば、それもまたよし、と考えたということもありうる。
 そのとき電子商取引の基盤整備もMicrosoftの.NETに乗っかれば楽だぞ、認証はPassportもあるしね、と安易に思っているのだとすれば大変である。省庁の権益争いのために国民の個人情報を売り渡すとは何事だ!と騒がねばならない。
 それについてはまあTRONの坂村さんが何とか言ってくれるだろう。

 なお、以前どこかの省庁の納入基準に「OADG106キーボード」という条項が入っていたことがある。事実上のNEC9800シリーズ締め出し策である。でもこれは、ネットワークに繋いだときトラブルとなりやすいからNEC98をつないでほしくないという担当者側の事情から来たものである。
 もちろんすぐに98用純正106キーボードが発売されたことは言うまでもない。

 住宅ローンの税制優遇を受けるには、面積が一定以上でなければならない。これは、広い家を買うように仕向けて、結果的に国民の住環境を良くしようという意図に基づいたものである。同様に主記憶256MB以上という制限は、国民のPC環境を良くしようという意図に基づいたものと考えることができるかもしれない。
 しかし、その考えは変だろう。ハイスペックなPCは、多量の資源を食いつぶす側面もある。同じことができるなら、スペックが低い方が、少なくとも消費電力の面からは地球に優しい。財務省の減税基準は、省資源で動くソフトウェアを作ろうという誘因を消してしまうのでは無かろうか、これが問題である。
 そこそこのスペックで動く、日本製のソフトが増えれば、これはアジア諸国へのソフト輸出拡大にも繋がるはずなのだ。日本製ソフトは、アルファベット国で生まれたソフトと異なり、必然的に2バイト文字を扱える。そして多くのアジア諸国では2バイト文字を取り扱うことを必要とするのだから。

 優遇税制を受けるのに、巨大な主記憶域を持つことが条件となるのは、あたかも同じ距離を走るのにより多くの燃料を必要とする、大排気量の自動車を税制面で優遇するようなもの、と例えられるのでは無かろうか。


(2003.4.1補足)
 256MBなどという非常識な主記憶を必要とするクライアント用OSというとMicrosoftWindowsXPしかないだろう、と思っていたところ、実はMacOSXもそうなんですね。唖然。
 まあ、Macintoshは今やUNIXワークステーションですから・・・といってもすごい主記憶。初代Macは128KBのメインメモリで動いたというのに、その2000倍!になったとは。(まあ初代マックはワープロ数ページしか扱えず、実用になるには512KBのFatMacが必要であったそうだが)
 もともとMacOSってメモリ喰わないはずなのですがね。モノクロとはいえGUI付きで128KB。ちなみに初代9801の搭載メモリは標準で同じく128KBでした。でも、GUIなんて夢の夢、DISC-BASICをしこしこと動かしていた。

 ちなみに、Linuxはと見ると、RedHat9のグラフィック環境で最小128MB、推奨192MB。  さすがに256MBは割るがそれにしてもでかい。

 今のマシンでWindows95を走らせるとものすごく速いだろうなという話はちらちら聞くが、今のマシンでNeXTSTEP for IntelProcessorを走らせると、、、劇速だろうなあ。
 そういえばNeXTSTEPは、CPU486/66かつメインメモリ16MBでともかくも動いたぞ。で、同じMachカーネルベースのMacOSXが256MB必要とは。。。で、一説には500〜600MBで遅いのは当たり前とは。。。

 確かにWindowsXPやMacOSXのGUIはいろいろと機能が豊富で、その分重そうだ。しかし、ここまでメモリを喰うとなると思う。プログラマがタコなんじゃないだろうか。まあコードやデータを全部メモリに読み込ませることを前提としてプログラム書くと楽ではあるのだが。

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