重要情報を守る話

 「フリーソフト開発秘話」で発表しましたDiskRamble、Vectorに登録されました。こちらです。みなさんじゃんじゃん使ってくださいね。
 でも、Vectorの新着ソフトレビュー等で大々的に取り上げられることはないでしょう。なぜならまさに今、トップページで「注目の新着!」として紹介されているDELETE MASTERに近い機能があるからです。確かに機能はあっちの方が多いようですし、データの消し方も念入りです。多分MBRやTRACK0も消去してくれるのでしょう。使い勝手もいいのでしょう。

 しかし、当方のDiskRambleの方が優れている点もあります。OSの入っているドライブの空き領域を消してくれるというのは、他では得難い機能です。元々、作ったきっかけは、以前消したファイルについて、その痕跡を消すことでしたから。
 パソコンをリプレースするので使っている奴を返すことになって、ファイルを片っ端から消した後に考慮漏れを指摘されたことです。ファイルを「完全削除」みたいなツールで消さないと、後から見られる可能性があるぞ。
 げげ、もう消しちゃったファイルだからどうしようもないぞ。それにそれを言うならこれまでの間作って、消して、あるいは(ドライブまたぎで)移動したファイル群はどうするんだ。
 なわけで作りました。

 それになんといっても当方のDiskRambleの方が優れているのは「オープンソース」であることです。確かに消し方はそれほど念入りではありませんが、ファイル復活ツールで復活できないようにするにはこれで十分ですし、ほんの1時間あれば、国防総省基準の削除にまでレベルを上げることが出来ます。だいいち(前にも書きましたが)この種のツールを使うほど疑い深い人がソースも分からないツールを使うわけがないではないですか。

 かくして実用性・将来性はDELETE MASTERより、DiscRambleの方が上とさえ言えるでしょう。しかしあっちは商品、こっちはオープンソース。Vectorとしてもこちらを取り上げるわけにはいけないでしょうな。
 ところで知りたいのはDELETE MASTERの販売元、開発元にもオープンソース運動を支持している人がいるだろうけど、その人が自社の商品を侵害される可能性があると分かったときに、どういう反応をするかであります。

 さて、先ほど私は「ほんの1時間あれば、国防総省基準の削除にまでレベルを上げることが出来ます」と書きました。(実はトラック0をクリアする方法は127個ダミーファイルを書くことしか思いつかないんだけど。)ならば当然「なんでそこまで作ってから発表しないの」という疑問がほとんどの人に浮かぶでしょう。
 理由は簡単。そこまでする必要は普通はないし、そこまでする必要のある人は、ソースを書き換えれば済む話だからと考えたからです。

 出来る限りデータは念入りに消すべきだという考えは当然あるでしょう。では国防総省基準の上書き回数3回ではなく4回上書きすべきでしょうか?もしディスク1枚に1億円かければ、3回上書きしてもデータを復活させることが出来るということが分かれば。
 でも普通は言うでしょう「ディスク1枚のデータを読みとるのに1億円もかけないよ」。
 その通りです。ディスク領域を一回ヌル文字で書き尽くした場合、元データを読みとるのにいくらかけなければならないか知りません。が、いずれにせよそれだけの金(と手間)をかけてデータを復活させようとする人はまあいないだろう、だったらそこまで厳密に消す必要はないな、というのが当方の考えです。むしろ、データ削除完了までの時間を短くする方が実用的と考えたわけです。  さらには将来の技術向上により、10万円も出せば3回上書きしても復活できるとなれば、市販のデータ削除ツールは4回上書きするようにバージョンアップしなければならない、そして利用者はそれに買い換えなければならないということになるのでしょうか。
 そういうときのために、本DiscRambleをお使いください。すでに3回上書きするようにしていれば、4回上書きするように作り替えるのは10分で済みます。
 しかしヌル文字で一度上書きする必要はあります。ファイル復活ツールを使えば簡単に復元できる、ということは興味本位でやっちゃう人もいるから。

 もちろん国防総省が、国防総省だからこそデータを念入りに消すというのには根拠がある。がそれは、国家機密を扱っているから万が一にもデータが復活しないよう、という理由だけではなさそうだ。相当の金をかけてデータを復活させる人間がいるからである。それが国防総省が使っていたディスクと分かっていれば、そのくらいの金と手間をかける人間は必ずいる。
 つまり、国防総省が捨てる(ないし使い回す)ディスクにそれだけの手間をかけなければならない理由は、国防総省のディスクなら手間をかけてデータを復活させる価値があるからである。
 従って、データを守るためには「誰が捨てたか分からないようにする」という手段も考えられないことはない。

 データを収めた対象がディスクだと、出来を消すのは難しいが、ディスクでなければそう難しくもない。つまり通信の場合はそう難しくもなさそうだ。
 こう考えるとインターネットは言われているよりは安全な通信手段では無かろうか。つまりいろいろなデータがパケットという細切れになって、いろいろな経路で飛び回っているからである。データの何割かはIPアドレスの問い合わせである。データの何割かはスパムメールである。わざわざ費用と手間をかけて解読するに値するデータは率から言うときわめてわずかである。

 逆に専用線の方が危険かもしれない。これが国防総省の専用線と分かっていれば常時盗聴しようとする人間は必ずいる。銀行の送金データが通っていると分かれば、割り込みに何億円出してでも惜しくないという人間も必ずいる。従って専用線であるからこそ、強度な暗号化を行わなければならない。
 もっとも専用線といっても、通信業者の局内で一緒くたになっているということで、公衆回線との違いは常時接続・帯域保証だけなわけだから、そこまで気にする必要はないのだろうが。(別に特定の銅線を銀行の送金データが通っているというわけでもないし。)

 もちろんインターネットがパケットを覗かれ放題というのは事実。特定の宛先のIPアドレスが付与されたパケットのみを集めれば、結構なことが分かってしまいそうなのも事実。が、だからといって専用線とどっちが危ないとすぐに断じることも出来そうもない。
 ただし気になるのは、ゴルゴ13の「最終暗号」にあった主張。インターネットの情報は合衆国政府に筒抜けである。軍事用のネットワークを解放するという時点でおかしいと思うべきだったのだ、というもの。エシュロンなどという盗聴組織もあるという話だし、何らかの仕掛けがあってもおかしくはないなあ。
 それを知っている国防総省だからこそディスクのデータ消去に過敏なわけなのか。

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