WPC Expo2003のレポートで勢いにまかせて書いた、こんなグループウェア(というかPIM)がほしい〜〜〜という件。意外なところに反響がありました。まずは、自分の希望に一番近いと当方が述べたTaskPrize2の作者。なんと開発日誌で取り上げてくださいました。実は同じようなことを考えていたそうです。で、TaskPrize2を自身は案件進捗管理に使っているそうです。
また、案件ごとに進捗が確認できる簡易グループウェアを作ってしまったかたもおられます。案件ごとに串刺し検索ができる電子掲示板、というほうが適切なのかもしれませんが。ASPとしても公開しているようです。この電子掲示板「工番名人」と言うそうです。特に推薦するわけではありませんが、それを作った思想的背景には耳を傾ける価値が十分にあります。
作った人の頭の良さには感心しました。ホームページを読んでいると、開発の動機を紹介しているところで「人間が一度に認識できる数は7だ」というのを、かの「超整理法」の受け売りと書いております。人間が一度に認識できる数が7というのは、常識といえば常識です。別に野口さんに教わることでもない。でも、この人は知らなかった。つまりそれまで、そういうことを知らなかった人が、野口さんの著書を読んだぐらいで、これほどのことを考えついたということになります。めちゃくちゃ頭いいじゃないか。皮肉じゃないぞ、ほめてるんだぞ。似たような例がある、BGMで流れていたピアノ曲を聞いて、いきなり「えらいタッチがきれいだなあと思ったら、全部黒鍵で弾いているのか」と言った人がいた。曲はショパンの練習曲「黒鍵」。
ショパンに「黒鍵」と呼ばれる曲があって、全部黒鍵で弾いているのは、ある程度クラシックに詳しい人にとっては常識である(最後の方では白鍵を使うらしい)。この人はそれだけの知識もなかった。それなのに、曲を聞いて、絶対音感で全部黒鍵と判断したのだ。しかもタッチがきれいだということも追加できる耳の良さ。たいした素養がないのに、それだけの音感を持っているなんて、すごい才能だ。この人を「ショパンの黒鍵も知らないのか」と馬鹿にする人はいない。こういう例を引き合いに出せば、私が「感心した」というのも分かってくれるでしょう。ただし、非常に残念ながら、当方がほしいなと思っているのは「工番名人」のような掲示板ではなく、どっちかというとTaskPrize2のような案件別の進捗ができるものなんだな。もっともどのタスクがどこまで進みました、というのではなく、案件別のイベントや工程の割付ができるもの。もっと端的に言うと、スケジュール作成支援&スケジュール管理ソフトなのである。そしてこれを個人単位にスケジュール帳のように見ることができるもの。
うーん、なかなか説明しづらいなあ。ようするに案件が与えられて、それをこなさないといけない。で、案件をサブタスクに分割し、期限までに終わらせるとすると、と考える。サブタスクには他人に問い合わせをしなければならないものもあれば、発注をしなければならないものもある。発注のために社印がいるとなれば、それも織り込む、でうんたらかんたら考えてサブタスクを日割りにするところまで落とし込む。いってみればWBS(Work Breakdown Structure)というやつだ。そのまま線表を作れば「ガントチャート」というやつになって、プロジェクトのスケジュール表一丁上がり!となるのだろうし、プロジェクト管理ソフトというやつは、このへんまで支援してくれるようだが、物事そう簡単には終わらない。自分が実際にスケジュール通りの動きができるかどうかは、やはり普通のスケジュール帳を開いて、見積時間に沿ってプロットしてゆかないと何とも言えない。(また時間の使い方を考えろ、という趣旨のご本や記事は、このへんのスケジューリングを厳密にやれということが書いてある。)
つまり、自分が抱えているいくつかの案件が、きちんとこなせるか、こなすにはどう時間の割付をすればよいか、は案件ごとののスケジュール(よくプロジェクト管理ソフトがサポート)と日別の時間割(PIMがサポート)のを両方見ないと何ともいえんのだ。一つのデータを二つの見方で見たい/編集したい、ということだから、いかにもコンピュータを使うとうまくいきそうなところだが、双方をサポートしているツールは今のところ見つからない。
さらに欲を言えば、案件ごとにちょっと思いついた留意事項やアイディアは、さささとメモして案件に貼り付けておきたいし、タスクをこなす障害となる事象も案件やタスクに貼り付けておきたい。そして、始業時や終業時(あるいは報告作成時)に、メモや障害事象を案件ごとに一覧として出しておきたいのである。
ついでに言うと、よくある案件はいちいちWBSをしなくて済むようにテンプレート化してすぐに呼び出せるようにしたいなあ、とも思う。ついでにその際必要となる用紙のショートカットなんぞが貼り付けられるともっといい。
どうせなら、今やる必要はないが、何かイベントがあったり期日が迫ったりすると取りかからねばならない案件も同じプログラムで管理したいなあ、などとも思うわけだ。
確かにスケジュール作成支援&スケジュール管理ソフト(&案件管理ソフト)として、こんなものをほしがる奴は少ないかもしれない。例えばヘルプデスクの仕事などは、かかってきた電話が即案件となるから、悠長に一件一件タスクに分割してスケジューリングをする暇なんてないだろう。私も営業に出ていた頃は、そんなソフトを必要とはしなかった。
でもプロジェクト管理の現場では、ほしがる人も多いだろう。逆にグループ全体のスケジュール管理やToDo管理を行う際には当然期待できる機能じゃないかなあ。だったら個人用PIMとしてはなくても、グループウェアとしてならあるんじゃないかなあ、と考えたわけである。しかあし、見つからない。しゃーない。自分で作ろうか、と大胆なことを考えた。ところがそんなプログラミング能力、自慢じゃないがありません。特に画面デザインのセンスは皆無であります。この種のプログラムはデータの見せ方が特に重要。ならばdesknet'sの画面でも思いっきり参考にしようか、などと思ったわけだ。HTMLならパクリやすいぞ。そうそう、サイボウズがdesknet'sの製造元をデザイン盗用で訴えていた件、あのくらいでは盗用ではない、という判決が出たそうですね。ならば、desknet'sの画面も参考にし放題だ。
とかなんとかいいながら、少しだけそれっぽいプログラムが見つかった。オンライン・プランナーとかいうやつで、12月10日の次期バージョンでは、案件ごとの管理を行う画面ができて、それが日ごとのスケジュール帳のページに自動で反映するらしい。タスクの分割が1階層しかできないとか制限はあるが、まあ試用くらいはやってみたいかなと思う。
が、これインターネットを通じたASPなんですよね。インターネットにつなげる環境があれば使えますといっても、データは全部向こうに行っていることに懸念。ログインはパスワードで保護され、データ転送はSSLで暗号化してますとはいえ、手帳屋さんにはおすすめしません。というのは送ったデータが先方で暗号化して保管されているとは限らないからです。つまり自分が、このプログラム提供元と同じ業種の手帳屋であった場合、調子に乗って仕事の情報を入れていると、お客様情報その他が全部このフランクリンなんとかという会社に暗号化すらされずに流れてしまうことになるからです。
しかもこの会社、プライバシーポリシーすらHomePage上で明らかにしてない。情報漏洩があっても責任とらない可能性が高いじゃないのかなあ。決してこの会社を信用しないわけではないけども、信用するに足る要件を満たしていないとは判断できるわけです。
利用規約を読んでも、お客様情報を第三者に開示することはありませんとは書いていますが、「自分ところで使わない」とは書いていません。つまり、私がこのサイトの有料サービスを使って登録した情報を、第一者であるフランクリン・コヴィー社が使っても文句が言えないということになります。これは絶対に手帳屋さんが使ってはいけないサービスだなあ。一応、その辺のことをこの会社に問い合わせるメールを出しました。あっという間に返事が来ました。お客様の情報にはとても気を配っているそうです。で、自社がそれを使うことはないそうな。だったらそれをプライバシーポリシーとしてWebページに書けよ。その程度の気も配れないようなところが「データはしっかりと守ります」と言っても、とっている施策はたかがしれていると判断するのが普通だろう。
まあ数時間で返事が戻ってきたのは評価・・・と言おうとしたが、どうやら想定問答集の文例をCopy&Pasteしただけみたい。というのは片手間でやっているのが明らかだから。いやね、問い合わせメール、宛先がよくわからないから「商品開発について」と書いてある封筒のアイコンをクリックしたのよ。すると宛先アドレスがakira.masaki@franklincovey.co.jpだって、普通webmaster@franklincovey.co.jpとかsupport@franklincovey.co.jpとか専用のアドレスを作るだろう。なのにいかにも普通の業務で使っていそうなメールアドレス。これが片手間でなくてなんだというのだ。しかも、名前がもろに出ている。少しは隠そうとしないか?たしかに機密情報ではないかもしれないけども、出さなくてすむ個人情報は社員のものであっても出さないようにするのが普通だろう。つまり、この会社の個人情報を守るという意識、この程度なのだ。
よし、試用期間中に私用目的に使い込んで、いずれ自分でスタンドアロンプログラムを作るときの参考にするぞ。
お金を払えば済むことを、セキュリティ上問題があるからということで仕方なく自分で作る羽目になってしまった。でもデザインは参考にする。
きわめて筋の通った行動だと思うけど、フランクリン・コヴィーという手帳メーカーは気分を害するかもしれないなあ。(自社を手帳メーカーというなら、以上の苦言は言い過ぎかもしれない。でも何らかの知的ツールを提供している会社のつもりであれば、真摯に受け止めてもらわないと。)で、こんなプログラムを作るとすると、いかにもB-TRON上で作ると楽そうである。しかしファイル保存がとてつもなく遅いというからなあ。でもMS-Windowsで作ってもデータの持ち方によってはファイルをいちいち検索しなければならないから遅くなるなあ。
となるとデータベース・・・階層構造を持たせたいからXMLにする?しかしアクセスするクラスが見つかんないねえ。(と、いろいろと考え始めるのであった。)
上記のように「こーんなスケジュールソフトがほしい」とぶつぶつ言いながら探していたら、琴線に触れそうなのがあった。コンピュータネタ、目次へ
ToDoChartというものである。作者自身による紹介文をごそっと引用すると、
ToDoを階層化できる=案件を段階的に詳細化できるのがまずマル。(ガントチャート作成ソフトとしては「がんすけ2」の方が高機能だが、案件を階層構造でブレークダウンできないというのがあまりにもツライ。)ToDo Chartは、「ガントチャート風日程表示つき階層型ToDoリスト」です。
以下のような機能があります。
- フォルダを使って階層的なToDoリストを作成できます。
- ToDo項目には開始予定日・終了予定日・メモ・関連リンクを設定できます。
- ToDo項目やフォルダには「待機中」「進行中」「今日が期日」「遅延」「完了」の各状態が表示されます。
- 二週間分の日程を、ガントチャート風に表示できます。
- 一日分のToDo項目を一覧表示できます。
- ウィンドウを閉じて、タスクトレイに格納できます。
- エクスプローラからのドラッグ&ドロップで、そのファイルにリンクしたToDo項目を作成できます。
ToDoの各項目に実施すべき期日(ないし期間)を設定できるのもよい。(ただし、未設定項目が作れないのがちょっと痛い。案件が飛び込んできたときに「とりあえず、メモ的に登録」というのがやりづらいから。)
関連ファイルをDrag&Dropで登録でき、ランチャー的に使えるのも便利。
いかにも当方の好みにフィットしたのは、各項目毎にメモを登録できることができ、メイン画面で項目を選択するとステータスバーにメモの内容が表示されるというところ。自分としては、一日のスケジュール作成とリンクしてほしいところだが、毎朝《一日分のToDo項目一覧表示画面》を見て、手帳に記入していけばなんとかなる。定例の連絡会議出席、なんて繰り返し項目を登録する機能はないが、終われば期日を1週間ずらせてゆけば不自由というほどのモノでもない。先程述べた「とりあえず、メモ的に登録」という場合でも、「○○についてスケジュールを立てる」というToDo項目を本日期限で作り、伸ばしてよければ、終業時に翌日回しとすればよい。こんな風に運用でカバーする気にさせてくれる。よくできている。
何と言っても、デザインがすばらしい。よくぞこれだけすっきりとまとめたものだ。ドキュメントを読むと、Delphi4で書いているだって・・・これなら私も持っているぞ。オープンソースにしてくんないかなあ。自分が欲しい機能は自分でくっつけるから。もちろんフィードバックもする。(こういうとき、自分自身がフリーソフトのソースを公開していると説得力があるぞ。)
とりあえず、作者のページの掲示板に行って参ります。なーお、私が「オープンソース」とか言いながら、ソースを添付するだけで、特にライセンス条項を付けない理由は「ライセンス条項というイデオロギーに関わるのがやだ」という理由です。ソースはオープンでもイデオロギーはガチガチというのがオープンソース(というかGPL、というかストールマン)なので、イデオロギーの論争を避けたい当方としては、何も言いたくないだけであります。(可哀想なLinusはGPLを使ったために、ストールマンにいろいろと干渉された。Linusさんがストールマンを嫌っているのは本人が『それが僕には楽しかったから』で表明している通り。)
そういえば、LinuxJapanの編集長だった風穴さんが、新雑誌COMPUTERWORLDで、オープンソースはソースがオープンであるだけではだめ、みんなが開発に参加できなければならないと言っていた。風穴さんはオープンソースはイデオロギーであるということをきちんと把握しているようだ。(イデオロギーと言い切ってしまうと、引いてしまう読者もいるだろうから、そこまではっきり言っていないが。)
ただし、風穴さんのように言ってしまうとOpenOfficeは「オープンソースでない」ことになってしまう(開発自体はドイツの会社で行っているそうだ。)しかし政治的にはOpenOfficeをオープンソースと言いたいだろう。このジレンマを風穴さんがどう乗り切るか、実は楽しみにしている。