負けるが勝ちのジャストシステム

 ジャストシステムが松下電器に訴えられて敗訴している件。
 いろいろと変なことが多く、あちこちで批判されている(松下に好意的な意見は一つとして聞いたことがない)が、どうもストレートな意見が多すぎるので、多少ひねる。

 とりあえず、プログラムに特許権が認められることを認めるとしよう。特許の対象は自然法則を利用したものという大原則がある。プログラムがなんで自然法則を利用しているのだろうと思ったら、自然法則を利用したコンピュータで動くことが前提だから自然法則を利用しているのだそうだ。ふーん。この論法が正しいとすれば、音が伝搬するという自然法則を前提とした話すという行為や、黒鉛の棒を紙になすりつけると線が引けることを前提とした書くという行為で表現されたものも特許で保護される対象となる。ならばジャストシステムは判決文や弁論文で自分を敗訴と断じそうなありとあらゆる表現を特許として登録してしまうという防衛策がある。この場合裁判官は判決文がジャストシステムの特許を侵害するわけにはいかないから、結果としてジャストシステムを敗訴と断じることはできない。表現の自由がどうかという問題はあるが、なあに、それが特許というものなんだそうだ。少なくとも松下電器は異議を唱えることはできまい。

 判決でどうしても解せないところがある。一太郎と花子の廃棄を命じたところだ。修正プログラムを配布すること、というのならまだわからんでもないが、廃棄まで言うか?一般ユーザーの利便性を完全に無視している。(なるほど松下電器はそういう会社か、ならあの会社の製品を買うのは不安だと不買運動を起こすのは実に合理的である。)
 どうしても廃棄を求めるのであれば、松下電気は廃棄と同時に一太郎互換ワープロソフト、花子互換ドローソフトを作るべきであろう。そして一太郎と花子の登録ユーザーに無償配布しなければならない。
 まあ、販売済みのものを回収することまでは求められていないから、無償配布するのはやりすぎとしても、既存ユーザーに対してもなんらかの便宜の提供は必要であろう。

 であれば、ジャストの防衛策は簡単だ。即日一太郎、花子を廃棄する。当然松下電器は1日で一太郎、花子互換ソフトを作らなければならない。(もちろん、MS-Wordは互換ではない。)できるわけがない。ならばとれる方法は極めて限られる。ジャストシステムから一太郎、花子を購入するか、ジャストシステム自体を買収するしかない。従って松下は頭を下げて浮川夫妻のところにやってくる。「売ってくれませんか」。松下は自分が起こした訴訟に勝ったわけだから、絶対に判決に従わなければならない。たとえいくらかかろうと。浮川夫妻は1000億円だろうが、1兆円だろうが好きな価格で売却できる。

 しかし、子どものいない浮川夫妻にとって、一太郎、花子はそれこそ子どものようなものだろう。いくら金を積まれても子どもを売る親は(ちょっと前までは)いない。というわけで浮川夫妻はこう提案すればよい。
 「売ることはできません。そのかわりライセンスを提供します。ただしライセンスを提供した以上、今後特許権がどうのと言わないでくださいね。」
 かくして、ジャストシステムは松下電器という有力なリセラーを得、かつ特許紛争から解放される。

 松下電器のやったことは、実はこういうことだ。
(松下電器のこの訴訟を潰しておかないと、OpenOfficeがあぶないのよ。)

 まずは、パナソニックガンバ大阪の試合に言ったときにやじるところから始めよう。
 「おい、そのターンはクライフの特許侵害だぞ!」
 これって・・・褒め言葉に聞こえるなあ。

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