デジタル無医村問題

 今、世間ではWinnyの余波で管理強化がなされているのだろう。
 地方はさぞ大変だと思う。東京勤務の僕の場合は「こんなことやんなきゃなんなくなったよ」と愚痴りに行く相手はいる。それなりに分かっている相手がいるということだ。アドバイスや実現可能性について相談に乗ってくれることもある。
 が、そういう人が周りにいないときはどうなんだろう。こういうのは露骨に言った方がいい。ようするに田舎の人だ。そういえばと思ったんだ。Winnyによる個人情報流出まとめで、2006年になってからの情報流出の報道件数を都道府県別に見ると、第1位の東京(24件)、2位の大阪(8件)は当然として(流出元が分からないのは本社の所在で振り分けたで見かけ上多いという要因もある)、以下兵庫(6件)、愛媛、福岡、北海道(5件)と続く、三大都市圏にある愛知、神奈川、千葉はその後(4件)だ。人口比率やパソコン普及台数と相関を出していないが「田舎の方がやばいんじゃないか」という直感はわかってもらえると思う。(IPA、出番だ!)
 件数が目立つ愛媛県、北海道では恐らくWinny対策、ついでに情報漏洩対策、ついでにIT機器管理強化!と担当者は目を回しているだろう。(北海道はコールセンター誘致、なんてこともやっているから大問題だ。)

 願わくばWinny被害を高見から見下ろしたつもりで「添付ファイルをクリックしなければいいじゃないか、するのが悪いんだろう」という上司に哀れな担当者がケズられていませんように。Winnyはクリックするためのファイルを探してくるソフトなの。だからそんな対策はありえないの。(かなり昔だが、MS-Blasterが流行ったとき、電車の中で大声で「添付ファイルをクリックしなければ大丈夫だから」と威張っている人がいた。電話機を取り上げて「MS-Blasterは違うの、とにかくLANケーブルを抜け!」と言って切ってあげるべきだったかと今だに思っている。)

 IT時代になって中央と地方の情報格差が狭まったという説があるが、やはり知っている奴が周りにざわざわ居るところと、あんまり居ないところの差はでかいなあ、と言う感想。
(格差ついでにアピール、デジタルデバイドがいけないのは「格差を再生産するのみならず、別の格差を助長するからだ」という2000年5月の主張は「格差社会」が流行語になった今、読み返すと含蓄が増えた。)

 考えてみれば当たり前、大学は東京に集中、コンピュータ系の専門学校もそんな感じだろう。(統計は分からない。コンピュータも教えますという専門学校は地方にも多いが、コンピュータ技術者を育てることができる学校の卒業生の数字がわからないと何とも言えないのだ。)当然、人集めの面からコンピュータ会社は東京に集まる。ジャスダック初の卒業生、サイボウズは松山→大阪→東京と、人を求めて本社を移動させている。徳島を離れないジャストシステムが例外なのだ。
 しかるに、パソコンは技術者がいる/いないに拘わらず至る所に普及した。インターネットも同様、ということは悪いことにコンピュータウィルスは、そういう地方にも分け隔て無くやってくるのだ。かくしてウィルスに罹患した患者はそれなりにいるのに、医者は極端に少ない、ということになる。これを表現するために「デジタル無医村」という言葉を作った。さすがに「無」ということは無かろうから乱暴な言い回しだが自分では気に入っている。

 というわけで、情報セキュリティのコンサルティングは地方の方が需要は大きいかもしれんぞ、ウィルスはネットにつながっていればどこにでも行くが、医者は地方に少ないからね、と軽く結論づけたところで(ではどういうサービスを実現すればよいか、というのはとても興味を惹かれる問題なんだけど・・・まとまったらまた書く、そーそ、インターネットは使えないのよ、PCが病気なんだから)、本論。ただし今までの脱線よりも短く、面白くない。いやね、管理強化、でいろいろ調べてたんだわ。ソフトウェア管理をどうするかって。
 まあ、台帳作って・・・と思って対象をどこまで広げるか考えたところで、うーん。アウトソーシングの受託で使っているソフトを対象とするべきだろうか、使ってはいるんだけど、と、そんな感じで考えがひととおりくるくる回ったんだわ。が、なんか引っかかる。そもそもソフトの借用、ってあるのか?という疑問。一番ナンセンスなマイクロソフトの使用許諾契約を見た。なになに、6条でソフトのレンタル、リース、貸与を禁止している。
 私の仕事は楽になった。OSはMS-Windows、使うのはMS-WordとMS-Excelという一般的な会社において、借用ソフトというのは「あり得ない」。もしあるとしてもガリバー型のマイクロソフト製品に適用できないソフト管理ルールなんて無意味。というわけで保有ソフトだけを管理すればよい、と堂々と言える。
 そういえばリースも禁止になっているよなあ。ということは、リース用のPCはOSなしで売っていることになる。へー、プレインストール無しモデルってあるんだ。
 まてよ。使用者は本当に自分で箱を買ってインストールしているのか?気になった。とうわけでPCをリースする会社のホームページへ。リース対象一覧として並んでいるPC、思いっきりMS-Windows積んでいるやんけ。つまり彼らはライセンス条項に違反したビジネスモデルを実施していることになる。PC本体はリースできても、MS-WindowsやMS-Officeは使用する個人なり会社が別途購入しなければならないはずなのに。
 というわけで、Microsoftは使用許諾契約書を元に、リース品を使っている各社にMS-Windows、MS-Officeを買わせることができる、ということだ。更にリース会社からは思い切り違約金をとれる。もっともリセール契約やライセンス契約を結ばせた方が入ってくるお金は大きくて継続的だろうし、裁判の必要もないだろうから期間も短縮できるのでそうするがね。
 おー、ビル=ゲイツ、表彰してくれ。私をシアトルに呼んで無駄話する価値は十分あると思うんだがなあ。(ついでに家族の旅費も出してくれ。)ゲイツは嫌いだが話もしたくないわけではない。全く尊敬はしていないがたいした奴だとは思っている。
 言うまでもないが、そうなるとメーカー各社は「MS-Windowsプレインストール無しモデル」を発売してくれることになる。するとLinux,FreeBSDなどのOSを使いたいからとPCを買う人は、MS-Windowsの代金を払う必要が無くなる。(一応こういう意図はあるのだ。)

 なお、ゲームソフトは「借用」がありうる。これはドラクエ最終画面を掲載したFLASHを製造元のエニックスが訴えて勝った(んだよね)以上仕方がないのだ。その時の主張は「ゲームソフトは映画類似物」だから画面に著作権があるというもの。つまりゲームソフトは「映画類似物」と認めてもらったわけだから、映画ソフトの貸借が可能な以上、ゲームソフトも貸借可能ということだ(と僕は思っている)。なにしろ「映画類似物」というのはゲームソフト会社側からの主張だ。自分から「違う」とは言えないよね。

コンピュータネタ、目次
ホーム