オフショア開発は国内で

 オフショア開発というのを最初に聞いたのは、10年くらい前だったか、ヨードンの本「ソフトウェア開発の落とし穴」でだった。ヨードンさん、本文ではいかにも前途有望であるかのようなことを書いているが、付録で「安定的な電力供給が期待できないようなところでソフトウェア開発をするのはいかがなものか」という主旨のことを書いている。その時の印象が強いので、「オフショア開発」と聞くと、言葉や商慣習の問題より先に「電気は通じているの」という懸念が出てくる。もっともニューヨークでも停電はよくあることだそうだ。アメリカ人は気にしないのかもしれない。やはり10年前のNewsweek、新しいソフトウェア大国インド、とかいうオフショア開発特集でもそんなことは気にしていなかった。

 電気の問題はおいておいて、ブリッジSEや視察に行くエライ人にとっては、やはり滞在中の快適さ、というのも大きな要因だろう。生水を飲むと一発でやられるというインドはちょっと敬遠したい。ここはやはり先進国。でも人件費が・・・。
 と思ったところで、ならば旧共産圏の中欧、東欧でオフショア開発すればいいじゃないか、とひらめいた。コンピュータアーキテクチャーを考えたフォン=ノイマンはハンガリー人だぞ。少し古いデータだが国際大学対抗プログラミングコンテストも旧共産圏の国が上位を独占していたそうだし。
 確かに言葉の問題はある。ならそれを逆手にとって形式仕様記述を導入。中欧は形式仕様記述発祥の地。こちらで仕様を作って、中欧で検証・デバッグしてもらう。時差が丁度いいから、こちらで書いて/送って帰宅する。こちらが寝ている間、先方は検証してくれて、こちらが出勤すると質問事項や修正分が送られてきている。時差を利用して高効率開発!というメリットが強調できる。(アジア諸国だとこうはいかない。)
 よっしゃー、オフショアやりますと手を挙げるぞ、具体的にどの国にしようかな、頭の中で流れるBGMはもちろん「美しき青きドナウ」。うきうきしながら地図を見ると。ん。EUってこんなに拡大していたのね。
 つまりEU内は労働力の移動がとても自由だから、実力ある人はすでに西欧に移っている可能性が高い。母国の人間の命や健康を守る医者ですらポーランドを見捨てているそうだ。ならばコンピュータ技術者は他国の人間のプログラムを作るくらいなら、ドイツに出稼ぎに行くだろう。
 で残ったのはルーマニアとブルガリア。要するにわけありでEUに加盟できなかったところ。
 ルーマニアは美人が多いという話ですが。。。

 かくして「中欧/東欧オフショア開発計画」、見事に頓挫したのでありました。

 オフショア開発というと人口密度の低いオーストラリアで労働集約的なシステム開発をやろうとすると否応なく取り組まねばならないことだと思うんだが、英語圏だから外国人にお仕事頼みやすいし、ノウハウたまってないのかなあ?と思っていたらMandataという政府の人事管理システムは、イギリスとかで求人して、オーストラリアに来てもらって開発したそうな。こんなほうがいいかもしれないね。中国で求人して、日本で働いてもらうの。なんか密入国を助けそうだなあ・・・いや、そんな偏見は良くない。信じることが出来る人間だからこそシステム開発を頼むんだから。さて、大規模な開発場所が必要だが、これは規模が縮小になって余った自衛隊の基地や米軍基地の跡地を安く払い下げてもらうことにしよう(米軍はともかく、自衛隊は時機を逸したか?)。電気水道完備だし、宿舎もあるし。警備はしやすそうだし。広くて緑は多いし。基地内コンビニなんかもあったりして、いいことばかりだ。

 逆のオフショア開発も聞いたことがある。追い込みに入った国内プロジェクト、開発要員全員を香港に連れて行って、パスポートを取り上げ、ホテルと開発ルームを往復させるだけ。人権無視もいいところ。
 たった一つ評価できるのは、完成させるためにそこまでお金をかけたこと。やはりお金をかけないといいものは作れない。ところがオフショア開発はお金をかけずにいいものを作ろうという発想から来ている。ならば何を犠牲にするか。
 日本語にこだわらないという割り切りがあれば、もう少しなんとかなるかもしれないなあ。変かい?IBMのメインフレームを使っていた頃は、日本語にこだわってなかったから、そう無茶な話でもないと思うよ。

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