マイクロソフトが無料で配るということは

 2009年4月9日(木)の日本経済新聞。変わった記事が出ていた。
 要するにGoogleとかがやっているオフィスソフトをWebで使えるよう提供する、をマイクロソフトもやる!というのだ。で、広告付き無料でサービスするとか。
 日経新聞社の情報ソースはビジネス部門担当社長、スティーブン・エロップ氏。

 この話、パソコン出版系の情報サイトに載るかな?と思っていたところ、特に無し。確かにWeb版オフィスの話は既出だが、広告付きとはいえ無料提供するとまでは載っていないし、エロップさんのインタビュー記事もない。

 この広告費が削られているご時勢にこのビジネスモデルへの新規参入が可能なのか?とか、がめついマイクロソフトが広告付きとはいえ無料提供をホントにやるのか?とか、後発のシンプルなオフィスソフトではペイするビジネスモデルでも異様に多機能化したマイクロソフトオフィスは高コスト化しているはずだから、同じビジネスモデルは採用できまい、とかクエッションマークが飛び交った。
 もっとも、全部が全部Web上の広告付き無料版になるのではなく、有料版もいくつか提供されているらしい。なんとなく安心。ではマイクロソフトはなんでこんなことを言い始めたか。

 新バージョンオフィスの導入促進ではないかと思うのだ。ご存知の通り、マイクロソフトのニューバージョンの導入を見送る企業が増えている。企業の「Vista飛ばし」が鮮明に、などと書かれれば心中穏やかではあるまい。それはユーザーがほしいというXPなりOffice2003 or lowerの販売を一方的にやめ、要らんと言っているVistaなりOffice2007を売ろうとしているのだからうまく行かないのは当たり前なのだが、高コスト体質化したマイクロソフトは定期的にバージョンアップをしていってくれなければ倒れてしまう。

 マイクロソフトがプログラマー採用時に新卒主義をとったのも悪かった。当初は安く済んだかもしれないが、そのうち給料も上がる。が品質の低下をものともしないプログラマは生産性が悪い。当然、高コスト体質になってしまう。
(品質と生産性は正の相関を持つ、「優秀なプログラマーは生産性が高く、品質も良い」という言い回しを奇異に感じる人は少なかろう。生産性論議の際「生産性を上げれれば品質は低下する」というのが前提として捉えられていることが多いが、プログラムを書くのは人である、ということを思い出し、どんな人か、を考えるとこの前提崩れる。で品質の悪いプログラムを作ってきた組織は劣悪な/または平凡なプログラマしか抱えてはおらんので、生産性は悪く、つまり高コスト体質になるのである。)

 では、何が何でも新しいマイクロソフトオフィスを買ってもらうにはどうするか。Webで使えるバージョンをタダないし安価で配る。そして新しいマイクロソフトオフィスのフォーマットを普及させる。景気が悪いから飛びつく会社も多いかもしれない。
 ところが、ちゃんとした企業は、セキュリティに問題のあるWeb上のアプリケーションを使うわけには行かないから、シェリンクラップの新バージョンを買う。
 ついでにシェリンクラップの新バージョンはMicrosoftの新しいWindowsでしか動かないようにしておけば、OSまで買い換えてくれる可能性大である。

 ということで、再びOSやオフィスソフトの新バージョンが売れ始める。
 2010年とかの新オフィス。Web版はWindowsXP上のIEでも動くけど、パッケージ版はWindows7でしか動きませんよ、などと言うことになれば当方の予測的中である。

 どうも頭が固いな。マイクロソフトの考えることはこのパターンしかありえない、という既成観念に囚われている。
 でも、それ以外、彼らが考える方向性があるのか?
 シェア奪取/新市場をつぶすために無料で配るはあるけど、Webでオフィスは既に立ち上がったサービスだからねぇ。仮にWebでオフィスをつぶせたとしてもGoogleによるStarSuiteの無料配布まではつぶせまい。(まてよ、IBMによるSunの買収が成立したら・・・。)

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