十年落とし

 当局のプログラムを抜いたことがある。苦手なコンピュータもそろそろわかってきたころ、ちょっと自分の力を試したくなったわけだ。
 そんなことが犯罪になるのかどうか、検討もされてない昔のことだ。
 というか、いまでも刑法上の罪には問われないはずだ。民法上も問題がなかったはず。
 現行法では中身を漏らせば文句を言われる可能性があるが、当時はその規定すらもなかった。

 しかし私は念のため、其のプログラムに対して「きれいだった/きたなかった」の感想すらも述べないこととしたい。
 さて、厳重に保管してきはしたものの、万一それが暴露ウィルスによってたとえばWinnyネットワークに放流されたとする。意図的に中身を漏らせば訴えられても文句は言えないが、この場合、私は罪の問われるのだろうか、と気になった。
 なんとなく「管理不行届」と文句を言いたい自分はいる。もしホントに起こったら恥じ入るだろう。が、当たり前だが罪には問えない。

 それが罪だったらさあ、鍵かけ忘れて家を出てモノ取られたら刑法的に責任があるってことじゃないの。法律の整合性を確保する必要上、クラッキングの被害者は過失があっても無罪せねばなるまい。さらに過失をつくこと自体は実害を与えない限り、犯罪とは言えない。「お嬢さん、パンツ見えてるよ」と指摘したら痴漢として連行されたのではたまったもんじゃない。嫌な顔されるのは仕方ないけどね。コスプレ会場とか、コスプレ会場とか、コスプレ会場とか。

 ちなみに当局のプログラムだろうとなんだろうと、抜こうと思えば原理的に抜ける。
 というのは、コンピュータのメモリー上にはこちらが入力したデータも、先方が用意したプログラムも、分け隔てなく展開されている。だからデータが入力できる以上、プログラムについても手出しはできるのだ。(たとえばバッファオーバーフローというのは、先方が予想した以上のデータをこっちが打ち込むと、同じメモリー上のなわけだからコンピュータはそれをプログラムと誤認識する、ってことだ。同様に・・・。)

 ただし相手が「当局」というのはまずいかも。Winnyネットワーク上で見つかったりすると、社長はただでは済まないだろうな。
 更に悪いことに「自社」のものであれば「守秘義務違反」で罰することができても、「当局」のものを社員が抜いても「守秘義務違反」などのローカルルールですら適用できないのだ。それとも服務規定に入れるかね?「当局のご機嫌を損ねること禁止」。
 明文化する風評被害は小さくないと思う。社員がそういう不心得をおこさないような労務管理もできてないということだからね。

 いやあ、古いフロッピーに鋏を入れて焼いてしまって(磁石だから熱を与えると読み取り不能になる)、これで絶対に漏れない段階に達したということで、茶目っ気を出して書いちゃいました。てへっ。

 ちなみに私はセキュリティ意識高いよ。使用者の意図に反してキャッシュに重要情報が入ってしまったのでは、と疑いを持った1台のPCについて行先を丁寧にトレースし続け、廃棄、となったとき、そこに飛んでいき、お願いしてディスクをフォーマットさせてもらった、なんて肌理の細かいことをやってきた実績がございますので。
 んで、そのとき「本当に入っているか」を確認したいという欲求に打ち勝った人間が、危ないことするわけないよね。てへっ。

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