ビッグデータはM(S)IS?

 「ビッグデータ」というものが話題になっている。
 なので、外部セミナー(無料)に出かけた。招待状は来たけど他に誰も手をあげないんだもん。行って分かった。誰も手をあげないはずだ。見ず知らずの受講者4人ほどでのグループ実習があるのだ。しかも「今までのコンサルト事例を集めて作った、今回初回」のもの。要するにモルモットだ。ものすごく非現実的なシチュエーション(裏山を掘ったら金が出てきてそれで会社が作れたとしても、現行日本では規制があって存在不可能なレベルの持ち株会社の抱えるビッグデータとはあまり関係ない面食らうほど幼稚な問題をそれっぽく解決する計画立案)。これを30分で解答つくれだと?突っ込んでいてはできませんね。「情報処理試験の問題と思って解くよ」と宣言して、脳のリミッター解除して解答を作ってゆく。ああ「楽だった」。いつも遠慮して相手の力量測りながら話しているので疲れるのよ。
 ひどい言い方ですって?ちょっとムカッと来たのでね。解答を模造紙に書いたのだが、講師が最後に言った言葉。
「こちらで捨てます。」
 そこは(嘘でも)「参考にさせてもらいます」だろう、と教唆した。少なくとも、ここまでこなれていない問いを、これだけきれいに解くことを、出題者は想定してなかったと思うからね。
 招待してもらっていて、これでもかとボロボロにけなしているが、幸い守秘義務はない。雑誌社が取材に来てたってことは、外部に内容筒抜けでいいんだよね。それでもいつもの習慣で肝心なことは何も書いてないんだけど。(たとえば雑誌社の名前とか。)

 さて、このセミナーをやってくれた会社、ビッグデータ活用に熱心でコンサルティングもやっている業界では有名なところなのだが、それゆえに「ビッグデータ」がバズワードと言うのが分かった。
 データを多量に集める、というのは分かった。不定形のデータと言うのも分かった。成功例があるというのも分かった。んでもってなぜか古典的な解析技法を説明してもらった。ツールの名前も教えてもらった。が

コンピュータは要するに1と0しか扱えない。
だから何を残し何を捨てるかが肝要だ。
ビッグデータは捨てることを考えてないようだが、1と0に還元する過程で何か捨てることを無視してはいけない。
 なんて当然すぎる疑問は全く扱われなかった。これでは「コンピュータでM(S)IS」と変わらない。ようするに多量のデータを集めてデータベースを構築しビジネスに生かしましょう、って言っているわけだからね。MISの方がまだイメージができるだけましかもしれない。だって1と0でできているというのが、ある程度コンピュータの気持ちになれる人なら想像できるからね。加工の仕方は後で考えよう、という部分はデータウェアハウスに近いかな。
 というわけで、ビッグデータというのは、MIS→SIS→データウェアハウスときた流れに乗っての経営情報システム売込み用ワードらしいということが分かった。

 でも動画を「とりあえず蓄積」しておくといいことがあるかもしれなかったなとは思ったよ。今の勤務場所、新築ビルの初テナントだったのだが、皆さん初出社の時、エレベーターホールで一様に迷った。事務室へのドアが分かりにくかったんだよね。そこで当方、エレベーターホールで案内役を買って出たのだが、途中で気が付いた。
「ほぼ9割の人間が、反射的に右へ行こうとする」。
 ならばエレベーターホールの右側にいて、ドアを示せば、とりあえず皆さん事務室には入れる。席を探すのはそれからでいい。きっと顔見知りがどこかにいる。人の流れは、とてもスムーズになったはずだ。動画が残っていれば、それを証明するデータが得られ、今後の人の動線を想定するのに役立ったはずだ。
 たまに「こっちだよ」と教えてもあえて逆方向にゆく人がいたが(必ず迷った)、その動画が残っていれば、その場合の共通点はなんだろうという方向で分析する可能性が残されており、今度は顧客満足度を高めるためのショッピングセンターなんぞの設計に使えるかもしれない。

 なんでこんなことを考え付いたか、今回はきっかけがはっきりしている。セミナー中に火災訓練の放送が入ったのだ。講師は間が持たなくて、てきとうに「大事なことですね」とつぶやいていたが、こういうハプニングが大好きな私は(いつまでたってもガキだなあ)、間の悪さをつぶすのに協力した。
 「監視カメラの映像をビッグデータとして利用できれば、会社やフロアによる反応の違いが分析できる。すると、どうすれば避難者がぶつからないか、あるいは会社ごとに連絡の順序を変えたほうが全体的にはスムーズにゆくのではないか、あるいは場所ごとに非常放送の音量を変えたほうがいいのではないか、そういうことが分かって安全性が高まりますね。コンサルティングもできて金になるかもしれない。」

 この反応および先ほどの課題の解答。多分、私をセミナーに招待した会社は十分元が取れたと思います。もっとも私の提供した「データ」を生かせるかは受け取り手によります。
 今回は無理かもしれませんね。私一人の反応など「ビッグデータ」の中ではけし粒のようなもの。例外扱いではじかれるでしょう。
 ん?意図せずして「ビッグデータ」の弱点を見つけてしまったかも。

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