最適なシステム開発プロセスのノウハウを持つのは?

 システム開発のプロセスは新規開発を想定して作られることが殆どである。
 教科書的事例として紹介されたものを特に反省のないまま「当社標準」なんて定められた日には「これなんじゃい」であろう。コンサルタントに頼んで、なんて経緯だったら暴動を起こしたくなるくらいだ。まずは自社の中の好事例をまとめて、ってのが常識的ではないか?出来上がったプロセスはつぎはぎであってもどこかに経験者がいる。だからそのうちに馴染んでくる。
 もっとも〜こうやって相手の情状酌量をするのは私の悪い癖らしい〜外部に頼む理由も分からなくはない。というのは、標準ということは網羅的な開発プロセスを想定したがる。するとゼロからの開発が全てを網羅していると思われ、収まりがよさそうだ。ところが新規でシステムを作るなんて実は滅多にない。なので社内では実例が集まりにくく、よそから持ってくるしかないのだろう。
 かといってコンサルティング会社も実例を知っているわけではない。結局は作られた標準プロセスだ。社内で検証しようにも新規開発がないもんだから使いようがなく、初めから形骸化が運命づけられているわけだ。網羅的な新規開発があるのだからそれを都度アレンジして・・・やりたくないね。どこのだれが作ったかもわからん上に、新規開発でなければ必要ないものを都度切り捨てることになるが「なぜ切り捨てるか」をいちいち証明しなければならない。そもそも現行の仕様とプログラム構成、動作条件を確認する、という絶対に必要なプロセスが入ってない。馬鹿らしくてやってられない。適当に作った方が早い。どうせ必要のないものだ。

 だからといってよりどころとなる標準プロセスが不要というわけではない。品質確保が難しくなるからね。世の中には清水さんのように派生開発と名付けてプロセスを標準化すべく長年頑張ってきた人もいるが、やはりネームバリューで負けている。
 ならば、と思った。うちの会社人材交流制度があるんだから、あの会社にやってくれ。そこで日本で一番派生開発の標準化の有りがたさを知っている人と仲良くなって帰ってくるから。もちろん却下されたが、その人がどういう位置にいる人か、くらいは説明しておきたい。日本IBMにいる、かつてLotusにいてNotesのローカライズをやっていた人である。
 海外製ソフトの日本語化が主たる仕事、という外資系ソフト会社の日本法人、やっていることは既存ソフトの「日本語化」「日本の特性に合わせた修正」である。これが主な業務と初めから決まっているのだから当然、派生開発に近いプロセスが標準として作られるであろう。それだけであれば他の外資系でも同じなのだがLotusと指定したのはちゃんと理由がある。IBMにNotesごと買収されたからだ。
 軍隊にも例えられるIBMの規律ある動き。CMMI5レベルの社内文化。それまでは各自のスキルとノウハウでNotesのローカライズをやっていたLotusの人間はここでIBMのプロセスを目の当たりにし、標準化のメリットと具体的にどこがどう役に立ったかを肌で分かっているはずだ。というわけで標準化NativeのIBMプロパーよりも旧Lotusメンバーの方が本質を見抜き、有効性を体感する機会に恵まれていたというわけだ。

 ひょっとして日本マイクロソフトもそこそこ行っているかと思う。日本法人改変後、ずいぶんとMS-Windows、OfficeSuiteの質が上がった。印刷すらできなかった最初期のMS-Windows3.1、「はがきスタジオ」みたいな新規開発の駄作とはかけ離れた出来た。よし、ここで誰かお友達を作って・・・と思ったが、そういえば
「Windows2000は全世界単一バイナリで提供され。」
そっかー、本国で多言語版を作るノウハウが蓄積されたというだけか。出来すぎだと思ったよ。

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