RPADemo

 今年に入って、急にRPAというのが流行っている。既存のシステムに対し、そのオペレーションを人間の代わりにプログラムにやらせようというものだ。デモを見せると非常にわかりやすく、アピール効果も大きく、よしやれ!とトップも決断しやすい。

 ところが、そのデモを交えた説明の時、実際のプログラムの作り方について解説があったりするが、そういうところには問題が多い。

 RPAツールを使って、画面操作を記録、それを例えば入力データを替えながら再生という開発手法を使うかぎり、従来の設計というものがいらないらしい。(言ったほうもちょっと口が滑ったのだろうが。)ところが、異例データの時どうするか?なんて話になると作りこみが必要になるので、なんらかの「設計」が必要になる。
 お客さんのところを訪問して作業をする場合の資料として顧客データの住所から、たとえばGoogleMapsで地図を検索して、その画像を載せるという作業を自動化したはいいが、例えば、もしその地図サービスが停止していたらどうなるかというのが問題になる。画像を貼り付ける欄は空白になればまだよい。まずいのは前のレコードで読み込んだデータがクリップボードに残っており「不適当な地図」が貼り付けられることだ。これを防ぐには、上手に止まるための何らかの措置を講じる、ないし次のレコードを読み込む前に、クリップボードをクリアするないしクリップボードに「該当の地図が見つかりません」という文言を入れるという「設計」が必要になる。
 とっさに思い付いた名言「設計がないということはメンテができないということなんだ」。
 さらには地図が空欄となる場合は、サービスが止まっている場合だけとは限らない。存在しない住所が記載されていた場合もありうる。たぶんWebサービスはそれなりのエラーメッセージを返してくれるはずだから、RPAツールで作成する資料にも「住所が間違っている可能性があります」という文言を入れていかねばならない。この場合顧客マスターのほうも間違っている可能性があるということだからマスター管理部署にもそれなりのフィードバックをしないといけない。(京都市左京区吉田本町、が正しい住所だが、東大路一条東入ル、でも間違いではない、なんて場合どうする?)
 このように詳細設計レベルとはいえエラー処理はかなり神経を使う設計作業である。
 これを作りこまねば、という気になる。

 なぜかシステム化するとなると、作ってもらう側は完成後、「あとはお願い全自動」で済むと思っている。作るほうもそれで済ませなければならないという先入観があるらしい。それがあるから「設計必須」になるわけだ。ところがRPAでのデモを見る限り「こういう問題が起こる可能性がありますが、とりあえず最後までやってしまいます」という発想で作って許されると思っているようだ。(よくある経路検索の自動化。大手町を東京と仮定して進んじゃうのが普通みたいだが、愛媛県の会社が導入するとしたらどうする?)
 地図を貼り付けるだけならそれでも通用するかもしれない。見つからなければ空白にする、という程度の設計をしておけば、使う人が地図見ればなんか変だとすぐにわかるからね。でも基幹システムになんらかの「入力」が必要な場合でも、相変わらずそう言っていられるだろうか?

 ロジックが大いに不自由なRPAツールにこのへんを任そうとすると一挙に荷が重く、つまり作りこみが大変になる。とても手軽に作れるというものではなくなるだろう。ではどうするか?
 何のこたあない。設計が必要な部分とRPAツール担当部分を分離すればよいのだ。確実に通る典型的なデータだけをRPAに任せて、あとは今まで通り手で打てば済むのだよ。つまりややイレギュラーのデータを予めチェックアウトする前処理をかませればよい。
 あるいは、入力データをチェックしてきれいにする前処理を入れる。誰でも経験あるんじゃないかな?路線検索ソフトないしサービスで駅名に「大手町」と入れると「大手町(東京都)」と「大手町(愛媛県)」の選択が出てきたこと。RPAでこれを処理しようとすると、そのたびごとに止まって、ユーザーに選択を促すか、とりあえずシェアの大きい「大手町(東京都)」を入力して、おかしかったら見つけてくれ、ユーザーに投げちゃうという作りこみになると思う。
 私が作った奴の場合は、駅名を入力してもらったあと一度チェックプログラムを動かすと、「大手町」は使用頻度の高い「大手町(東京)」に変換する。そのうえで、元々入力された「大手町」を別欄に移動させて黄色地で表示し、確認を促す。それからWebにアクセスに行くのだ。ちなみにURLにその他の詳細条件を載せるから、サイトへのアクセスも最小限で済み、結果、Winactorのデモの倍以上の速度で処理が終わる。
 Webアクセス第一作でこれをやってしまう自分のセンスの良さに気が付くよりも、その程度のことも考えずにデモをやってしまうNTTDへの不信感が先行したことは言うまでもない。

コンピュータネタ、目次
ホーム