NOTハイパー、ざっくりテキスト

 コンピュータ言語を勉強してみようかと思い立って検索すると、Web上に詳しく教えてくれるサイトがあるのを見つけた。なんとやさしい人であろう。そこで早速勉強し始めましたところ、
 無理だ。
 コンパイラの入手先や言語仕様はもちろん、開発ツールの使い方やサンプルプログラムまで、丁寧にもれなく解説してくれているからである。いいじゃないかって?そうでもないのだぞ。リンク貼ってくれている先に飛んで、また戻ってを繰り返していると、今どこにいるのかわからないのである。それでもってサポートするデータ構造の仕組みまで余すところなく書いてくれているものだから、そこそこがんばったつもりでも、全然前に進んでいる実感がない。緻密さを好むはずの私でさえ言いたくなった。
「まずはざっくり教えてくれません?」

 書いてくれている人はざっくり分かりたい人にも便利なようにと書いてくれているのだろう。それはわかる。ハイパーテキストなんだから、とりあえずリンクに飛ぶことを考えずに読めば概要は分かることになっている。詳しく知りたいところだけ飛びましょう。
 一読で概要(まあ項目だけという気がしなくもないが)、詳しくはリンク先で。合理的なのだが、うーん、なんというか「まずアタマを作る。テンパったらリーチ」というとりあえず家族マージャンなら始められるような、そういうものが欲しかったりするわけだ。
 というわけで紙の本には(紙の本を作る編集者には)まだまだ需要が多いというか、役割が多いというか、そんな気がするのだが、ひょっとしたら更に進んで、もっと「ざっくりとした」というか、悪い言い方をすれば「その場しのぎの」解説が必要な報告に、世の中は動いているかもしれないという気持ちになってきた。「こういうときどうすればいいの?」「こうしなさい」というサゼッションの提供が求められている、という意味だ。

 ピンと来ないかもしれないが、「チャットボット」というと納得してくれる人が多いかもしれない。さすがに為替ディーラー用は作れそうもないが、オペレーター用ならできそうな気がする。「次に実行するジョブはなあに?」と尋ねると「現在、データセットのバックアップを行っています。完了までおよそ5分間お待ちください。」いやこれくらいだったら自動化した方が早いな。せめて「台湾の中央銀行向けの送金制限について教えて」に答えてくれる程度に人間らしい判断が入るものが必要でしょう。そのくらいのスキルなくてどうすんだというのが本音だが、スキルがなくてもできるように、を優先してスキルを捨てるのがトレンドらしい。(というわけで、豊富な知識と卓越した計算力、神業的に相手の出す金額を予測するキオスクのおばちゃんは排除された。)

 こいつを開発言語で言うと「ファイルをコピーしたいんだけど、コードを教えて」とつぶやくとサンプルコードがコピペ可能な状態で、ディスプレイに表示される、といった「ざっくりとした知識しかない人でも、コードが書ける」サゼッションの元となるようなマニュアルが、必要になるわけだ。いってみれば「逆引き」という形で今までも存在してきたものなのであるが、もう少し踏み込んで「ファイル読み込んだら文字化けしてしまったんだけど」と言うと、そのバイト列を見て「読み込んだファイルの文字コードはUTF-8です。通常のRead命令では文字化けします。次の命令を使って読み込んでください」というところまでがんばってほしい。おお!これで素人のぼくでもコードが書ける。

 となると、今までとは違ったブツ切れで、即物的なマニュアルが必要になる。逆引きだって慣れるまでは分かんないもんね。
 ハイパーテキストってすごい!と思っていたけど、今後は別のシンタックスを持つ文書(連想でやんわりと結びつき合った短い文の集合体)が徐々に台頭してきそうである。さて、それはどういうデータ構造になるのだろう。

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