ブラウザゲームはクラウドで

 ネットワークに接続して、サーバー上のアプリケーションを動かしてスコアを競うブラウザゲームには、飽きさせないためか課金を稼ぐためか定期的にイベントがあって、○月○日○時までにスコアを稼いでランクインするとどーたらこーたらで何か特典があるらしい。うちの子は日曜の午前1時からタブレットにかじりついている。そんな暇があったらとっとと勉強せんか!と正直あきれているのだが、とにかく入れ込んで頑張る、ということに関しては評価すべきと見のがしている。

 さて、イベント終了1分前、これぞ駆け込みのラストスパートだろう、と思って子供の方を見ると手を止めていた。「サーバーが重すぎて反応がない。過負荷でトラブルを起こすと折角稼いだポイントが飛んでしまう可能性があるからもうやめた」そうだ。そういえば夕方あたりから「重い」と言っていた。まあ皆さんスパートだ。重くなるのは当然だろう。

 あれ?ホントに当然か?アクセスが集中したら負荷が増えるのは分かるけど、ブラウザゲームのサーバーってクラウド上に構築するわけにはいかないのだろうか、というか構築してないのだろうか。
 負荷がかかると重くなる。ならばその分リソースを動的に割り当ててやればいいじゃないか。確かにそんな予備のリソースを自社サーバーといて用意するのは現実的ではない。しかしクラウドならばそれができる。リソースの動的割当ってアマゾンのクラウドサービス、AWSの得意技じゃなかったかしら。この仕組みを使えば、ゲーム会社はラストスパートで顧客にストレスを感じさせることも減ろうし、さらには売り上げも増える。
 うちの子の話によると、現状では追い込みで課金する人はいないそうだ。というのは、サーバーが重いものだから課金が反映されるまでに時間がかかって、結局イベントの終了時刻以後になってしまう、からだそうだ。だから現状では皆さんどんなに熱くなっても土壇場の課金はしないのだ。これがサーバーの処理能力を一時的に増やして課金処理を間に合わせることができるようになれば、当然売り上げは増える。しかもかなりの額になりそうだ。やらないのは、ブラウザゲームが既に顧客をゲーム漬けにして社会問題になっているような状態だから自粛しているだけなのであろうか。

 クラウドというとまず「リソースの時間貸し」というのが紹介される。Iaasという奴か?ようするにCPUとかメモリ・ディスク容量とかを指定して仮想ハードウェアを借りてくるモノが紹介される。ようするにハードウェアを購入することによるリスクを減らせるわけだ。ブラウザゲームのように当たればでかいが、当たらなければ(あるいは問題が発覚すれば)すぐに畳まなければならないようなものに、巨額の機器投資をするのはリスキーである。これを回避するために仮想マシンを時間借りする。極めて合理的である。

 これがPaasとなると借りてくるものにOSやミドルウェアも入るらしい。しかしはっきりと説明してくれた人は誰もいないのだが、AIを実現するライブラリ、なんぞも含まれているらしい。ライブラリがクラウドベンダーが他社との差別化を図るポイントと思うが、セミナーに行ってもはっきり言ってくれないのだよなあ。私の勘違いかしら。
 んでもってSaasというのがアプリケーションのレベルでクラウドのサービスを使うようで・・・いくつかググってIaas、Paas、Saasを比較して説明しているサイトを見たが、解説が悪い。単なる「ユーザー視点」とまとめてしまうとIaasはハードウェア、Paasはミドルウェアまで、Saasはアプリケーションを含んで提供ということで間違ってないのだが、よく考えよう、ユーザーには2種類ある。クラウド上のASPを使うユーザーもいれば、コンピューターアプリケーションのベンダーというクラウド上にASPを構築したいユーザーもいるのだ。
 現状ではASPのユーザー(に関係あるのはSaasだけ。これに対してASPを構築したいユーザーに関係ありそうに見えるのはIaas,Paasだけに見える。しかしながら、アプリケーションベンダーがSaasを、つまりクラウドサービスそのものを立ち上げるためのサポートってないのか?ないわけないだろ。少なくともAWSというサービス名があるんだ。特定の商品の販売ページにアクセスが集中しても、お客様を待たせないという超高性能なロードバランサーを備えているはずの。

 これがあればブラウザゲームというASPを立ち上げようとする会社はSaasを開発するプラットフォームを提供するクラウドサービスを利用すればよい。この時、ベンダーはハードウェアを購入して失敗するリスクを軽減するに加え、一時的にサービスを拡大させる必要ができたが処理能力が足りない、というリスクからも解放されることになる。当然、ブラウザゲームへの参入は容易になる。
 あってしかるべきなのに、なぜ聞えてこない。私の耳が悪いのか、あるいは誰かが隠しているのか。

 もうひとつ、サーバーをクラウドにあげたほうがいい理由が一つある。
 クラウドでしょ。サーバーの持つ回線容量がものすごく大きいよね。つまりゲームイベントの土壇場で集中するアクセスに備えて大容量回線をあたりまえのように使えるんだよ。お得じゃない?土壇場は日曜夜に設定しておくと、ビジネスユーザーと競合することも少ないからクラウド提供者としてもそう困るようなことにはならないだろう。

 クラウドの提供会社の方にもメリットがあるよ。市場が広がるのはもちろん、しかも資源が比較的空いている休日に余っている処理能力を金に換えることができるというのも大きいけど、こういうゲームイベントの終了日時って結構重なるんじゃないかな。当然、高額契約の先を優先したくなるし、優先してもどこからも文句は来ない。

 もっともゲームのほかに超大口見込み客がいそうだ。JRA。処理能力が売り上げを決める。ギリギリまで馬券を販売できれば確実に売り上げは伸びるからね。ただこれほどの大物となると自前でサーバーを増設するだろう。ブラウザゲームの方がゲーム会社にとってのメリットは大きかろう。当たるかどうかやってみるまで分からないところがある。リスクは回避したいだろう。

コンピュータネタ、目次
ホーム