定番スピーチ

 珍しく賞をもらったので(つまり誰も傷つけない程度の便利な仕事をしたということ)、スピーチ原稿を用意した。(使わなかったが)。

 システム開発に重要な資質とはなんでしょう。
 緻密で論理的な思考やチームワークといったものが必要なのはもちろんですが、
ここではあえて別のものを挙げたいと思います。
 楽をするためならどんな苦労もいとわない、という責任感のある怠け心です。
(他人に振るためにどんなに努力したとしても、それだけではシステム化できません。)

 引き継がれた仕事を何度か繰り返しているうちに誰もが考えると思います。「どうしたら楽にできるか」。
 そのとき、自ら責任を持って楽をしたいと思う人は、
どうやれば自分がやらずに他人に振れるか、なんて毛の先ほども考えません。
 最終成果物をみて仕事のフロー追いながら、
自動化できたとしたらどうあるべきかを考え、
必要な技術を洗い出し、
自分のスキルと見比べて、
あとどれだけのことが出来ればシステム化が実現できるかを明確にし、
調べて、学んで、身につけて、
そして実装するでしょう。
 私はどう考えてもコンピュータに向いている人間ではありませんが、このプロセスを担う力はあったようです。かくして私のパソコンの中には楽をするためのツールがおよそ二十年分、蓄積されてきました。

 今回、新規ビジネスということで蓄積した技術を活かす機会ができましたので、貯め込んだ中で汎用性の高いものをいくつか提供し、皆さんに喜んでいただけました。これがこの受賞につながったと思っております。

 いままで、こういった個人のアイディア、個人のツールといったものをすくい上げる仕組みがこの組織にはありませんでしたが、この動きを活性化させれば、おそらく全社からアイディアや役に立つツールがどんどん湧いてくることでしょう。
 そうすれば社の生産性も上がり、新規ビジネスも次から次へと立ち上がってゆきます。
 かくして本来の意味のリストラクチャリングが、すなわち、不採算部門を切り捨てるといったリストリクトの意味ではなく、あるものを再構成してより時代に適合したものに変容するという意味でのリストラクチャリングが、進んでゆくのではないでしょうか。

 当社の未来は明るいです。
 その明るい未来の先触れとして、この受賞が位置付けられるとしたならば、これほどの喜びはありません。

 みなさん、ありがとうございました。

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