子どもらしく歌う

 姉が小学6年生の時、NHK全国合唱音楽コンクールで全国大会まで進んだ。残念ながら優勝は逃した。審査員から後で電話がかかってきたらしい。「絶対に1位だ。でも、美しすぎて子どもらしくないという理由だった。」

 合唱指導の先生は、それからぐれてしまった。合唱部の児童たちに、いかにも子どもらしい、はちゃめちゃな曲を歌わせ始めた。大きな声でひたすら騒いでもサマになりそうな、そういった曲である。(「チコタン」の「だれや」まではいかないが)
 当然、合唱音楽コンクールの成績は低迷する。ところが10年後、奇跡の復活を果たした。2連続全国優勝。
 快挙、ということでTVでもとりあげられたが・・・先生老けたなあ、、、などと思いながら、、、一つのシーンで感銘した。咲いている花の周りに児童をしゃがませたまま、花の歌を歌わせている。これか!!「こどもらしさ」のあの先生の答えは!!!

 あの、声にうるさい先生が発声には適当とは言えないしゃがんだ姿勢で歌わせること自体、私としては驚きであった。でも、そうなんだなあ、歌がなんのためにあるかというと、美しく歌うためではないのだなあ。なぜ声を出したくなるかというと、声が綺麗だと言われたいからではないのだなあ。少なくとも子どもにとっては。

花がきれいだと思ったら、それを声に出してみよう、歌であればなおよい。
 すばらしい発想だ。そこに歌があるから、きれいに歌おう、ではないのだな。プロの声楽家ならそう思うかもしれない、でも子どもたちは、ただ花がきれいだから歌うのだ。この純粋さが子どもの特権だ。

 姉らを最優秀賞にしなかった審査員がそこまで考えていたとは思えない。せいぜい「心がない」と漠然と感じていただけかもしれない。でも、先生は10年悩んで答えを得た。

 うちの娘が、しゃぼんだまが飛んでいるのを見ながら、「しゃーぼんだーま、とーんだ」と一生懸命歌っていた。下手ではあるが、感銘をうけた拍子に、小川先生のことを思い出した次第。ちなみに、小川はドイツ語では「バッハ」なので、自分を「バッハ先生」と言って笑いをとっていた。

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