ヘッドホンステレオは耳が悪くなるという噂を聞いて、ウォークマン及びその類似物を極力使わないようにしてきたのだが、十数年前になるだろうか、英語の勉強用に買ってしまった。電車の中でヒアリングの練習をするのである。ただし電車の中は騒音で聞こえにくい、負けずにボリュームを上げると本当に難聴になってしまうかもしれない。なんとかせねば、ということでノイズリダクション付きのインナーイヤー型ヘッドフォンを買った。まあ、TOEICを受ける年でもなくなってからお蔵入りにしていたが、去年、再び使用を開始した。今度は音楽用である。要するに子どもが出来て、なかなか家で好きな音楽を聴くことができなくなったのだ。マーラーの1番、第3楽章くらいならつきあってくれるが、バッハのイタリア協奏曲だと「うるさい、アンパンマンかけて」と言う。かくしてコンサートから帰ってCDをかけても違和感がないという高性能ステレオはアンパンマン専用となり、私は通勤電車の中でiPodを聞くことになったのである。音楽ネタ、目次へ
が、これがかなり快適。十数年前のSONYがきちんと動く。そこで気がついたのは、都会ではヘッドフォンステレオしていなくても、すさまじい騒音が耳に飛び込んでくるではないか、ということ。ノイズリダクション付きヘッドフォンをして、音楽を聴いている方がよほど耳には優しいようだ。しかーし、ついにこいつが毎日の酷使に耐えかねて断線してしまった。困ってしまった。ところが美しく、賢く、じんかくてきにもこうけつな我がお嫁様が「買ってあげるよ」。
何度目かの惚れ直し。ここでSONYの後継機を買ってもつまんないので、いろいろ探す。ふーん。BOSEが最高級品なのね。でも高い。まあいずれにせよ我がお嫁様はBOSE嫌い。輸入オーディオショーにつきあわせたところ「どうしてあんな音を人に聞かせるのかねえ」と酷評した。酷評の理由はBOSEの人も納得してくれると思う「うちのニョーボビオラ弾くんです」。まあこんなでかいのではなくて、持ち運びに便利で、暑くないのを探す。おおあこがれのゼンハイザーがあるじゃねえか。決まり。
お嫁様に申告すると「音は聞いたの?」「いや、昔からのあこがれなので」「ちゃんと聞いてからにしなさい」。バックオフィスのシステム構築についてはひょっとして日本一になっただけはある気の周りだ。というわけで久々にオーディオを扱っている店にゆく。試聴室では吐き気の出そうな音を聞いている輩がいる。これではオーディオが廃れるはずだ。ヘッドホンコーナーが別で良かった。オーディオルームの試聴の際は自前のCDをよく持っていったものだが、ヘッドホンの試聴の際は自前のiPodを持って行くのがコツだとわかる。吐き気の出そうな付帯音だらけの音を出す奴とか(これを残響と勘違いしている奴が多いのだろうなあ)、しまりのないボンついた音を出すヘッドホンが多い中(これを低音が効いていると勘違いしている奴が多いのだろうなあ)、ゼンハイザーはさすが!唯一まともな音を出す。ということで決定。
ゼンハイザーは中間マージンを電通国際情報システムよりずっと少ないとはいえ結構とっているそうだから(円高差益額から逆算して仕入れ値の50倍で販売。ボーナス12ヶ月分の会社と比較してはゼネラル通商はかわいそうだが)並行輸入品をネットで探す。電池ボックスがばかでかい、はっきりいって持ち運びに不便だが、ついでにいうと耳の穴にねじ込むSONYに遮音性能はかなわないが、あこがれのゼンハイザー、とっても充実感。少なくとも音はいいもんね。(かのブランド嫌いの長岡鉄男ですら、一度だけブランドにひれ伏したことがあるのだ。「演奏もオーマンディ/フィラデルフィアだから文句なし。」長岡鉄男の気持ちは痛いほどよく分かる。ちなみに外盤A級セレクション、サン=サーンスの3番です。)
そんなわけで、当方もこのヘッドホンには文句なし。僕らしくないなあ・・・が、文句を言ってみなさい。お嫁様にどんなひどい目に遭わされるか。