あまりにも余談の多いスケール特訓の話

 もうすぐ発表会なのに変ロ長調の音階がとれない!ということで、お父さん、気が気でないのでありました。曲を弾くとまるで無調のように聞こえる。アイヴスと独立に無調を、アイヴスと独立に多調を、アイヴスと独立にポリリズムを、アイヴスと独立にトーンクラスターを創始したという我が子でも(赤ちゃんの時にピアノをデタラメにぶっ叩いていたことの親ばか的表現)、既存の曲を無調で弾くのはよろしくない。ちゃんとピアノで音階を弾いてやっているのになぜ合わない、、、。まてよ、ひょっとしてこいつは平均率と純正率の区別がついて、平均率だと落ち着かないのでは?ハ長調とかイ長調はバイオリン始めたときから無条件に叩き込まれているが、新しい調が出てくるとなかなか慣れないのでは?
 ここまで来ると親ばかも他人をげっそりさせるレベルになるが、なにしろバイオリン始めて半年後、あまりの音階の悪さに「Gの音出してみろ」と怒鳴ったところ、一発でチューニングメーターが点灯したという伝説的な奴だからなあ。
 確かに耳はいい。音の向こうの風景は見えるし(黒と闇の区別が付くみたいだ)、演奏者が投げやりな音を出すと怒る。サロンコンサート中に歌い出した件もほんの数秒楽譜を見せられただけで通奏低音が歌えたというところだけを取り出すと偉い。(万一将来有名な演奏家になったとき「幼時のエピソード」として紹介されるに足る出来事である。)なら既に僕より耳が良くなっていても全然不思議ではない。

 しゃーない。純正率の変ロ長調の音階を聞かせてスケール練習をさせよう。でも、どうやって。昔のKORGのシンセは一発で切替が出来たようだから、音源ソフトを探すとあるのだろうが、今はそんな時間も、金もない。
 周波数は自分で計算することにした。Aを440Hzとして、えーと、これが階名だと「シ」に当たるから、純正率では基音に対して8分の15。というふうに計算した。
 ついでにハ長調やイ長調もけいさん。ふーん。純正率では調によって同じ音名でも高さが変わるというの、実際にそうなのね。高さが違うので自由に転調できない、従って平均率が発明された、というのは知識としては知っていたが、今や実感に。
階名 変ロ長調 ハ長調 イ長調
音名 周波数 音名 周波数 音名 周波数
変ロ 234.667 264 220
264 297 247.5
293.333 330 嬰ハ 275
ファ 変ホ 312.889 352 293.333
352 396 330
391.111 440 嬰ヘ 366.667
440 495 嬰ト 23

 この周波数の音をオシレーターソフトを使って発振させれば音階ぐらいは作れる。検索するとフリーでOSCILというソフトがあるのね。小数点以下の周波数をサポートしているのが気に入った。これでドレミファソラシドの音をWAVファイルに出力。結合。こうして出来たのが変ロ長調の音階ファイル。

 ひゃー、コンピュータって便利だわ。昔ワンボードマイコンが流行ったとき、それだけでは本当に何にも出来なくて、不満を感じていたところ、コンピュータはインターフェースが高価で、それがあればソフトを書くだけでいろんな機械に化けて何でも出来ると弁解されたけど、ホントそうなんだね。インターフェースが安くなって、ソフトウェアも信じがたいほど豊富になった。あー私が中高生の時に今のようなDTM環境があればいろいろできてさぞ面白かったろう。(ライブでシンセを積む代わりにノートパソコン1台、というのは「おれはガムばっリキんでロックしてるんだぜ」というイメージが出ないが。)

 さあ、ガキ、とっくんよ。リピート再生にしているから2分40秒、連続で頑張るのよ。人間が音に対してホントに集中できるのは4分33秒が限界と言い張っても、たいていの人から文句は出ないから4分33秒といいたいけど、連続ということで第2楽章にあたる時間でいいから頑張るのよ。さてこの曲の初演(というか初演しかあり得ない曲だと思うのだが)が、お茶の水のカザルスホールで行われたらどうなっていただろう。開演前5分からみなさん声一つ立てないという日本一マナーのいい客層を持つ(持っていた)ホールだから、演奏者がふたを閉じてもそのままじっとしていたハズで、いくらケージといえど、その間に聞こえた音が音楽だ、とは言い張れなかったに違いない。

 うまくできたらご褒美にのだめのバック(ただし鍵盤の向きが左右逆〜その方が2000円ほど安い)を買ってやるから、あ、いらない。そう。ドラマの展開ではSオケが勝つって?そんなに甘くないよ。原作読んでないから完全に推測だけど、このドラマ多分12月終了だよね。Aオケが第9やってたでしょ。多分伏線だと思うんだわ。勝つとすればその時。Aオケの第9に対抗して、Sオケはブラームス1番。あえてブラームスが第9を引用している曲を使う。勝負は第4楽章。気が付いている人は少ないが第9は第4楽章に弱点があり、少々テンションをおとしてやらないとたいていの演奏では息切れするんだわ。ミュンシュが極端だけど、アバドもショルティもそうよ。
 ベートーベン円熟の第9に対してブラームス駆け出しの1番。普通ならば勝ち目はない。が、ブラームス、協奏曲についてはベートーベンに勝るとも劣らない。ならば、いかに第4楽章を協奏曲として響かせるか。中間部で楽器の個性をぶつけることができれば、よく言うとシンプル、悪くいうとこけおどしのフィナーレが効いてくる。ピタリと合った第9の最後よりも全員がソリストと思いこんで弾く奇人変人集団のブラームス1番の方がライブでは盛り上がるかもしれない。でこういうとき演奏順序がものを言う。通常は格順でS→Aだが「合唱団の都合」という言い訳でA→Sにする、と。
 ん?なんのこっちゃさっぱり分からない?かもね。でもおまえはいずれ分かってくれそうな気がしてきたぞ。そりゃおまえはパパの言うこと聞かないけど、いつかは納得してくれるはず。だって今まで全部そうだったじゃない。

 なに、パパは普通の人と言葉が違うから分からない?うーん、多分こんなにはいかないな。(確かにブラームス1番を協奏曲〜ブラームスの場合は独奏楽器によるオブリガード付きの交響曲〜に編曲できそうなところって2〜3カ所しかない。テレビで編集するには十分な長さだけど<<そういう問題かい!)でも最終話はラプソディ=イン=ブルーだな。エンディングテーマに使われているし、じゃなくて「ピアノが使われているオーケストラ曲」だから。

 これをアップすると私の感覚のおかしさが証拠として残ってしまうのでありました。まあいいか、おかしいけど間違ってはいない。
 で、変ロ長調の音階の方は・・・あ、2回でやめた、集中力の無い奴め。じゃあ一人でやってごらん。。。あのー、弾けるんだったらどうしていままでやってないの?(実際には中指と薬指の間の開きがいまいちなので、上行と下行で別の音がずれる。)
 でも曲の解釈を云々したい状況までにはなってきた。ニョーボの言を借りると「その弾き方はミニスカートだ。ロングスカートを引きずりながら歩きなさい。」なかなかピンときていなかったので、おしゃれ魔女ラブ&ベリーのカードを持ってきて、曲のイメージに合わせてコーディネートさせた。

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