ポータブル録音機

 自分の音を録音して聞いてみる、というのは、楽器なり歌なりの練習として有効である。自分でもやってみた。おかげでBeatlesのBirthdayだけは完璧に近いリズムキープができるようになった。当然、うちの子にもやらせてみる。ところがハードウェアがよくない。ポイントをためてもらったラジカセと実売価格1000円のマイクでは、、、耳が痛いらしい。うちのガキは赤ん坊のときからボンつく音が嫌いなのである。エレクトーンを聴くと耳を押さえ、ミニコンポが音を出すと逃げ出す。(テレビの音は逆にスピーカーが小さすぎて気にならないらしい。かってなやっちゃ。それでもある日、当方のステレオはあれだけ音圧があり、かつ低音も十分なのにもかかわらず嫌悪感が出ないのに気がつき、やっとパパのオーディオ趣味を認めてくれた。←こういうメリットがあった。)
 なわけで、練習のために録音、というのを本格的にやろうとすると、レコーダーから見直さないといけなくなってしまった。昔買ったMTR、処分したし。マイクだけでも馬鹿にならないし。とりあえずの解決策が「ビデオ」。生意気にも16bit、48kHzで録音できる。で、オーディオテクニカの安い外付けマイクをつけて(AT-9440)、DVD-RAMに録音していた。フォームも同時にチェックできるので悪くない。ただし問題がないわけではない。
・録音レベルの自動調整が常時かかっているので、少々不自然。(躁音に反応してレベルが一瞬下がるのか、しゃくれたような音になる。)
・録音してから、再生するまでに、ファイルのPCへの転送→MPEGへの切り出し→媒体(DVD)へのコピーと時間と手間が思いっきりかかる。
・可愛いのでついついビデオとして残しておきたくなってディスクを圧迫する。

 そういうわけで手軽で高音質なレコーダーがほしいなあ、と常々思っていた。
 なんのことはない。ナマロクをやりたいという気持ちが20年ぶりに復活したのである。

 いろいろと検討してみた。CDに焼くことができると、ステレオで聴けるな。でパソコンでの録音を考えた。まずは実験。内蔵サウンドカードにマイクをつけてどれくらいの音質で録れるか。どうやらビデオカメラにつけていたコンデンサマイクではレベルが低すぎるらしい。電池内蔵でプラグインパワーは不要という機種ではあるがコンデンサマイクはコンデンサマイクだしな。で、マイクアンプをかませることを検討。共立のスレテオマイクアンプキットを購入/製作。
 むむ、レベルが上がらない。。。このパソコンおかしいのかなあ。もう一台に接続。やっぱり-20dBが限界。どうやらステレオマイク端子を使うと、どうしても-20dB以上のレベルで録音ができないという仕様であるらしい。(モノラルにすると振り切れる。)

 続いて外付けUSBオーディオユニットを探す。ステレオマイクがつなげるものってあんまりないのね。マイクアンプを繋いで、LINE INか。かさばるなあ。それにマイクアンプ、一度失敗しているからなあ。2台のパソコン両方で、しかも録音ソフトを複数使って、それでも-20dBよりレベルが上がらないとすると、これは伏せられてはいるがMicrosoft Windowsの仕様かもしれない。また、発表会の録音もしたいから持って動けるものがほしい。

 なんのかんのと理屈をつけるところを見ると、やはり私にもナマロク魂がくすぶっているようだ。しかし今更デンスケでもあるまい。第一カセットデッキなんて今時ないぞ。(私のAKAIも壊れてしまった。チューナーと同様に、単品コンポの世界からは消えてしまったのだろうか。)しかし、今やデンスケもデジタル化しているらしい。記録媒体に直接PCM形式で記録してしまうポータブルレコーダーがいくつか出ているようだ。

 早速楽器店に行って見ますと、ZOOMのH-4というのが出ていた。いやあROLANDとM-AUDIOの現物を探しにいったんですがね。でもROLANDはノイズが多いらしく、M-AUDIOはファームウェアがバグだらけという噂。ここでZOOMの新製品に出会えるとは運がいいわい、、、でも、妙にでかい。中途半端にでかいのだな。手で持つことはできるが、ずっと持っているにしてはでかい。むしろもう少し大型にして肩から下げたほうが。。。また余計な機能が多すぎる。オーバーダビングするわけではないのだからMTRはいらない。ましてやエフェクター機能なぞ。

 もっとシンプルな機種は出ないかなあ、と待っていたところ、KORGからMR−1という1ビットレコーダーが出るらしい。悪くなさそうだ。もしこれに「今までの録音は何だったのだろうか」なんてコピーがついていなければ買ったかもしれない。いやコピーがついていたとしても、KORGが「今までの録音はだめだったから、1ビット以外の録音機器を全部生産中止にします」と言ってくれれば間違いなく買っていた。
 1ビットレコーディングの説明ももう少しなんとかならないかな。広告も見せ方があるだろう。1ビットレコーディングというのは、音をパルスの粗密で記録するものだそうだ。だったらなぜこう書かない「従来のレコーディングをAM放送とするならば、1ビットレコーディングはFM放送です」。ぐっとくるだろう、ぐっと。
 あるいは「音は空気中を粗密波の形で伝わります。これをそのままディジタル化したのが1ビットレコーディングです。しかしこのためには高い周波数を安定的に扱うという困難さがありました、LSIも専用のものが必要になります。しかしついにKORG技術陣はそれを可能にしたのです」くらいは言っていい。空気を伝わる音の形そのものだからD/Aコンバータが不要なのだ、と駄目を押す。こういえば音声信号の経路がシンプルになる理由を直感的に感じてもらえる。

 もし宣伝文句がこんなふうだったら、当方ふらふらと買ったかもしれない。が逆に自分で考えたから自分は買えなくなった。なんで自分で考えた広告に自分が買わされなければならないのだ。(やはりソニーのカタログってうまいよね。機種別の違いがソニー独自の分かりやすい専門用語もどきで書いている。すると、消費者は自分で判断したという気になれるんだ。結構これって満足度高いよ。多少不満があっても納得できる。)

 また、KORGが使えない理由がもうひとつある。電池の持ちが悪いそうだ。発表会の録音となると、かなりの長丁場。自分の子供だけならいいんだけどね。うちの子は同門のマーちゃんを目標ににしているし、ユーちゃんはパパがファンだし。それなりに長時間録音になる。できれば、発表会の録音係をやってくれている人のバックアップが引き受けられるとうれしいし。
 ここで電源が乾電池なら休憩時間に取り替えるという運用もできる。しかし、内蔵充電池だと継ぎ足し充電が間に合わないのだ。同じ理由でM-AUDIO 24/96もダメ。
 ローランドはノイズが多いとか、高域が持ち上がるとか、あまり評判よろしくないし・・・、デザインはいいけどスペックに比べて値段が中途半端に高い。

 なわけで、選択機種がなく止まっていたところ、ZOOMがH2というポータブルレコーダーを出すらしい。4チャンネル録音が可能というのはどうでもいいが、199ドルというお値段が魅力。

 でも、出ないんだなあ。。。発表が2007年3月。同時に発表されたものは4月に出たのに音沙汰なし。このメーカーはインターネット時代に乗り遅れているらしい。少なくとも興味を持った人間が(大事な見込み客だ)情報を得ようと検索して、中々出ないことに不満を感じてネットにそれを書き込むという動きを想定していない。せめてうちの子の夏の発表会(8月)には間に合うかと思ったが。
 8月末になってようやく、楽器店が予約受付を始める。(それでもZOOM本家のホームページには記載なし。顧客の期待に応えようと「突然の販売延期」のリスクをとって予約開始してくれている楽器店を、せめてフォローしてやってくれ。)

 まあ、8月30日に御茶ノ水方面に用事があったので行ってみると下倉で初めて現物にお目にかかれた。パイオニアたちが導入し、印象を語るのを待つ。音はやせ気味だが、値段を考えれば十分。右チャンネルと左チャンネルがどう考えても逆!という大ボケ仕様だが、まあそんなものらしい(分かっていて対処が簡単なバグであればそれほど恐れる必要はない)。週末を挟んだところで購入決定。
 販売前に「音圧がある」と評していたサイトがあり、確かにそういう印象はあるんだけど、むしろ「音がやせ気味なので、聴感をあわせるべくボリュームを上げてしまうと、結果として音圧があるように感じられる」が正しいんじゃないかなあ。

 義理堅い私であるから、最初に説明を聞いた下倉に行くのが普通なのだが、どうも値段が高い。23,800円ナリ。合衆国の定価$199.-とだいたい同じであるが、H4の初出実売価格29,800円<合衆国定価$349.-(だっけ?少なくとも300ドルは超えている)と比べると割高感は否めない。それに御茶ノ水には当分行く用事もないし。。。ということで秋葉原トモカ電気で購入。22,000円。久しぶりにラジカンに行った。しかし10年のギャップはいかんともしがたい。昔はどこに何があるか、きちんと把握していたつもりなのだがなあ。

 久しぶりに大きな買い物をして、ルンルン。早速電車の中の音を録ってしまうとこなど気分はナマロク少年。たしかにあっさりとした音になるが悪くない。というか予想以上。権威あるコラムニストらしき人が、音についてはあまり評価していないようなことを書いているが(H4のレポートがとっても遅かったけどH2はやたら早いのね)、よく読むとROLAND R-09、ZOOM H-4より音がいいが値段は安いので、修辞を凝らしているかのようにも見える。
 買った人間の欲目かもしれないが、ほんとにそうかもね。だって屋外で録った音をさらっと紹介したあと《しかし、こうした野外の音のレコーディングと音楽のレコーディングはかなり異なるもの》と話題を変え、スピーカーで再生した音を録音しR-09、H4と比較。音声サンプルをあげているが、なぜかH2,R-09,H4でファイルサイズが違う。H2が一番小さい。普通、比較対象機種の録音時間を短めで切り上げることはあっても、トピックとしている機種の録音時間を切り落とすことはなかろう。

 もちろん自分でも音楽を録音。うちのガキにバイオリン練習させる。本人が「やっぱりこのスピーカーいいねえ」と納得しているので多分いいんだろう。(耳の良さに関しては、私は完全にウチの娘を信頼している。)なお、自分の耳で聞いても「中音域の張りは減るけども、これだけとれれば十分じゃない?」という感想。少なくともSUZUKIのバイオリンと聞き間違えることはない。

 なお、先ほど、ZOOMという会社はインターネット時代に乗り遅れていると評したが、その証拠は間もなく誰の目にも明らかになるかもしれない。いやね、左右が逆に録音されているとしか思えないのだわ。でもZOOMはそれを仕様と言い張って、対応が全然なので(発売がとびっきり遅いのに何の音沙汰もないがゆえにただでさえ待ちくたびれた人が怒っているのに)、大騒ぎになりそうな気配が漂っているんだわ。かの噂に聞いた「祭り」というのを、その発生からリアルタイムに体験できるかもしれない。ちょっと興味。


(2007.09.09 加筆)
 左右が逆に録音されるというのはメーカーがファームウェアを更新してカタが付いたが、別の不具合発見。「録音したWAVファイルがパソコンで再生できない。」
 どうやら拡張子はWAVだが、中身はBWFフォーマットらしい。
 なんでこういうあほをしたかというと、要件変更時の影響調査不足、と推定。製品の発表時は「5.1チャンネル録音可能」だった。ハード単体では出来るわけがないから、多分何らかのソフトをバンドルして(H4はバンドルされている)そこで加工してくれと言うつもりだった。BWFフォーマットはそこでWAVフォーマットに変更すれば問題はないと思っていた。
 ところが何らかの理由で、ソフトのバンドルが出来なくなった。本当ならそこで録音フォーマットをBWFからWAVに変えれば良かったのだが、忘れていた。とまあそういうことだろう。価格を下げることも忘れていたみたいだしね。
 sp-waveというソフトで読み込んで、WAVに書き出すと普通のWAVファイルになることを発見。その後。ssrcでノーマライズ、サンプリング周波数変換、量子化ビット数変換をする。とりあえず当方はそれでしのぐことにした。
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