上のガキ、ピアノでモーツァルトが弾けなくてビービー泣いているので、私が一番好きなモーツァルト弾きがたった一枚残したピアノ協奏曲を聞かせた。「この人、これ一枚しかないの?」「うん、もう弾かないよ」「弾いてもらう。私が説得する。自信がある。英語とかはできないけど、それ以外なら。」音楽ネタ、目次へ
急に人格が変わった。やはり馬鹿ではないらしい。ショルティはもう死んだことを告げるとがっかりしていた。
しかし、上のガキはコツコツやらないし、拍節感はあいかわらず「無い」。そんだけいい耳してるんだから自分の音をちゃんと聴け。
(ニョーボがモーツァルトを弾くと、小鳥が一緒に歌ったという伝説がある。そういう人に絞られているのだから大変だろう。タネを明かせば手乗りのセキセイインコが歌ったわけなんだが、ありふれた話ではなかろう。)下のガキも最近いろいろ習い始めたのだが、こちらは真面目にコツコツやっている。上のガキは未だに楽譜が読めないのだが(絶対音感でなんとかしてきたツケ)、下にその轍は踏ませまいと、一応教えた。
付点八分音符と十六分音符は「タッカ」というリズムパターンと見させて、
「これが「タッカ」よ。で、「タッカ」が4回、あとは「ター」。歌ってみて。」
「タッカ、タッカ、タッカ、タッカ、ター」。
「この音符なあに」
「シ」「ド」「レ」「ド」
「ドはシャープがついているから半音上がるのよ」
「シッド、レッド#、レッド#、レッド#、レー」
最初にベートーベンのト短調のメヌエットを持ってきたセンスはほめてくれ。下のガキ、なかなか飲み込みがよく、かつ努力するのでこれはこれで期待している。WBC以来野球にも興味を持っているので「日本で一番速い球を投げるピアニストを目指せ」と勝手なことも言っている。訳が分からないって?うん。うちの子もピンと来ていない。
ピアニスト中村紘子さんの言うことによると、ピアニストが故障するのは、手首とか肘とか腰とか、投手が傷める箇所と同じらしい。なので調子が悪くなると投手のトレーナーをやっている人のところに行くとか。ということは、投手として使う箇所が強ければ、ピアニストとして必要な筋肉も備わっている、ことになる。少なくともオクターブの連打は速く力強いだろう。
仮説検証のために実例を探した。ピアニスト野球大会がないので、ピアノも弾ける野球選手を探す。甲子園で唯一人、延長戦でのノーヒット=ノーランを達成した早実のピッチャーはピアノも上手かったそうだから「日本で一番速い球を投げるピアニスト」と勝手に認定する。それだけ強靭な手首、肩、肘、腰があれば、鍵盤を叩くとカーン!と球場全体に響くようないい音がしそうだ。また「ずるい!」と言われそうだが、みんな同意してくれるよねえ。王貞治です。あとは拍節感をいかにつけさせるかだが、それほど心配なさそうだ。下のガキはノリノリの曲を好む。ちゃんと聞かせておけば大丈夫だろう。
と思ったが大丈夫でないことに気がついた。ノリノリの曲を「ちゃんと」聞くのは大変なのだ。いや実は意識的にビートルズ聞かせてなかったんだわ。インパクトありすぎてね、他のが耳に入らなくなってしまう恐れがある。私の場合Thank you Girlを最初に聞いたとき以上の衝撃を、未だに音楽から受けたことが無い。(サザンの誰かもそういっていた。)
が、ほっとくとビートルズの亜流が勝手に耳から入ってくる。それまでも「この曲イメージはBack in the U.S.S.R.だろ、なのに何故アクセントが一拍目に来る」というのはあったが、とりあえずスルー。しかし「おかあさんといっしょ」でYou can't do Thatの質の悪い盗作が流れているのを聞いてこりゃあかん。ちゃんと聞かせないと。現在LPはプリアンプが壊れていて聞けないので、CDをごっそり借りてくる。正当な権利者なので誰からも文句を言われることなくPCにダビング。
ビートルズを最初に聴いたのがBBC、という世界標準の経験を持つ私は日本語の題名を知らない。今回初めて確認できた。「嘘つき女」の原題は、え、やっぱりThink for Yourself。でI'm Looking through Youが「君はいずこへ」。What Goes onが「消えた恋」になっている。というわけで昔からの疑問を開示。これはRubber Soulを日本でリリースするときに手違いがあって日本語タイトルが入り繰ったのではないか。
「嘘つき女」はThink for YourselfはではなくI'm Looking Through Youのほうが似つかわしい。
Think for Yourselfが「君はいずこへ」なんじゃないかな。
でもそれを言うならWhat Goes onを素直に「君はいずこへ」として、Think for Yourselfを「消えた恋」に当てはめても悪くない。
多分、日本語題だけが先に送られてしまって、急いだ担当者が適当に当てはめたのだろう。確かに歌詞が分からないままにあのファズをかけたベースを聞くと「嘘つき女」という激しいタイトルをあてがいたくなるのは分かるが。嘘を日常的についているのはI'm Looking through Youのほうだろう。と、親は適当に突っ込んだり、これだけ短期間でここまでスタイルを変化させてなおかつ名曲ぞろいとは、と感心したり、そういや産休から復帰した彼女は、見れば見るほどkiyokoにそっくりだなあ、とひたったりしていればいいが、さすがに5歳の子どもにAnnaのようなオールディーズはピンとこないようだ。
強力に反応したのが The Night Before。イントロのカッティングが気に入ったらしい。まあ5歳だ。こういうシンプルなのがいいんだろう。あとI Should Have Known Betterくらいかな。典型的なロックンロールではすでに複雑すぎるらしい。というわけで生まれて一番衝撃を受けた曲は引き続きベートーベンの「熱情」ということになった。よく分からんやつだが、本人は音楽をそれなりに分かっているのかもしれん。ともかくも音楽のジャンルに惑わされずに音を聴く、ということはできているようだ。
上の子はビートルズに反応無し。映画GetBackのLDを見せると、60年代の映像を食い入るように見ていたが。
まあ、今からビートルマニアになってもなんなので、これくらいでいいのかもしれない。ノリ、はある程度分かってくれるだろう。上の子が縦笛を吹いていたところジャズのフィーリングが少々出ていてびっくりしたこともあるんだわ。殆ど聞かせていないのに・・・と思ったらトムとジェリーで散々聞いていた。なるほど。これでウチのガキ、ブルースフィーリングが出せるようになると怖いね。ウチのニョーボはブルースも理解できるらしい。TVで日本の某ミュージシャンがニューヨークでストリートミュージシャンに挑戦!などという番組をやっていていたが、地元の人には全然受けない。それを見て「あれが分からんようじゃ話にならんね」と冷たく言い放っていた。