アニソンが名曲になる理由

 スタジオに入ると、まずフェンダーのツインリバーブを探してプラグを挿す。このアンプが一番自分のニュアンスを伝えてくれて「自分の出している音」という感じがするのである。マーシャルやブギー、ミュージックマンだと、自分以前に「アンプが鳴っている。」
 ところがある日同じようにツインリバーブに繋いで驚いた。「自分の音じゃない」。レスポールをつないでOctopus's Gardenのイントロを弾いたときである。まるっきりジョージの音がした。ということで全ビートルズファンの反発を買う覚悟で主張!少なくともイントロに関して、ジョージはレスポールを弾いている。おそらくワインレッドの「パティ」である。(このペットネーム、勝手に付けましたが、ある程度のマニアになら賛同はしてくれなくとも理解はしてもらえると思います。なお、Webで検索するともうひとりだけレスポールと言っていた。)

 私のレスポール、以前チラッと書いたがギブソン特注品である。ほんとのことを言うと正体不明で、83年のブラウンサンバースト。ヘッドの裏にはギブソンカスタムショップの銘があり、マホガニー1ピースネックである。で、木目はネックの向きと微妙に角度がついているというオールド仕様。当時輸入代理店が企画したVintage58ないし59のうちの1本かと思ったが、色はレスポール80やエリートの深みのあるあれ。しかし80はマホガニー3ピースネックなのでこれらとは違う。エリートにはカスタムショップのロゴはない。またこいつのトップは、強いて言うとリボンカール。
 これに決めた理由は、なぜか隣のレスポールよりも一回り大きく見えること、および試しにWhile My Guitar Gently Weepsを弾いたとき、特にオクターブグリッサンドしたときに、指先から快感が伝わってきて、ニターと笑みがこぼれてしまったこと。こんな気分にさせてもらえたギターはあとにも先にもこの1本しかない。というわけで、先ほどのペットネーム「パティ」、異論がなければ自分のに付けさせていただきます。

 アニメ「けいおん」で平沢唯が弾いているのはレスポールデラックスでは?と主張したが、漫画だと間違いなくスタンダードでしょう。というわけで娘に「同じ型ならパパ持ってるよ」。で取り出したところやたら気に入られてしまった。どれくらい気に入ったかというと5歳の娘が5分以上耐え忍んで立っていた。でかく見える分重いんだ。5キロもある。
 実はペグが壊れてしまい10年近くしまっていたのだ。これを機会に、と直した。ペグって自分で交換できるのね。「しまむら」楽器に行ってGROVERのまったく同じ形のペグを購入。交換に1時間。以前はGIBSONロゴのものも売られていたのだが、最近では手に入らない、ということ。かくして「GIBSON DELUXE」のロゴは「GROVER DELUXE]になったがペグの色も一緒だし、まあいいか。ボックスレンチと弦とあわせて10,832.-でした。

 弦高調整とかひととおりやって、何年ぶりかでニンマリと快感。かなりのレスポールマニアなのです。どれくらいマニアかというと、平沢唯のレスポール、シリアルナンバーまで特定!9 1864である。頭が疲れすぎたので買ってしまった「けいおん」1巻58ページを見て「あれだ」と分かった。確かめたい人はジェフ=ベックグループの写真を見てください。ただしアニメなら「デラックスだ!」と熱くなるが、漫画だと「作画資料みっけ」で終わる。でも後述の感想を確認するためZepのライブ映像を見直したところ、スタンダードでも角度によってはピックアップがあんなふうに見えることもあり、やはり定説どおりスタンダードなんだな、と、納得。どうやら私が間違っていた。

 けいおん!最終回、ステージ上、4人でアンコールのリズムを刻み始めるところを見て、やはりオープニングを最初に聞いた時の感覚は正しかった。澪はジョン=ポール=ジョーンズだ。走る律のドラム、もたつく唯のギターを正確無比なベースラインで纏め上げ、結果として唯一無二のグルーヴ感を出す。意識したのはレッド=ツェッペリン。ただしそのままではハードすぎるので紬のキーボードでやさしく包み込む。なんとすばらしいアンサンブル。中島梓が感動するはずだ。だから彼女には唯の代役ができないことが分かっていた。できるとすれば百戦練磨の山中先生。ものすごーく納得できたのでした。Cagayake Girlsのベース、手数が多いのはそういう理由よ。というわけですっきりとした。それにしても山中先生、うちの子のヤマハの先生に似ているなあ。いつもは普通っぽいなりをしているが、ついブルーノートで歌ったところ、私は聞き逃さなかったよ。

 オープニングテーマを歌いだした下のガキに、上のガキは「なんでそんな曲を」。パパは「いや端正に書かれたロックだよ。」ロックを評するのに「端正」という形容が使えるような時代になっていた。
 すでにロックにはそれだけの歴史がある。クラシック音楽の時代を、バッハがケーテンの宮廷学長になった1717年から、第一次世界大戦開始1914までの198年間とみてもおかしくなかろう。ロックの開始をチャック=ベリーがチェスレコードと契約した1955年とするとすでに65年たっている。およそ1/3の歴史にまでなっている、影響した人の数・人種を考えるとロックのほうが上ではないかい?それを考えると、ロックはすでに再現芸術の時代に入っているのかもしれない。もっとも不幸にもチャックベリーの時代から音源が残っているし、著作権というややこしいものも発明されたから、カバーバージョンではなく、似たオリジナル作品という形をとるがな。するとクラッシック音楽で「端正な演奏」というものがあるように、ロックでも端正な曲、というのがあって当然である。カバーバージョンといえないから、端正なオリジナル曲を作り、キャラクターの力で売る。別に外道ではない。(著作権保護期間は短くしないと、とここでも思う。時代の回転が速くなっているんだから。)
 逆に、アニソンのほうが無理にオリジナリティを、という気負いがなくなる分きっちりとまとまった健全な曲ができるのかもしれない。リスナーは馬鹿じゃない。瞬間最大風速ながらオリコン1、2位を占めたのはそれなりの理由がある。

 もはや独創的な音楽を作る余地はなくなったんだ。音楽史は終わっていた、とさびしく思ったのは、ドイツのバンド「ファウスト」を聞いたときでした。かれらのLP、全5枚、そろっています。その中で一番思い出深い一枚は、十字屋の2階で見つけたビニールジャケットのファーストアルバム。どうして売られているんだ?考えるより先に銀行まで全速力でお金を下ろし、汗だくになって戻り、息も絶え絶えにレジに持ち込んだ。だからJEUGIAが画面に出てくると無条件に熱くなるのだ。
 僕は北白川に住んでいたが、当然修学院にも馴染みがあるし。澪の石垣の背景は、もろ、である。

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