Cagayake!ロック少年の夢

 「けいおん!」のアニメ中バンド「放課後ティータイム」アルバムが、世界チャートの18位に入っていたらしい。なお、1〜6位はマイケルジャクソンが独占。当然他にもチャートインしているから、マイケルが「けいおん!」終了に気落ちして死んでなければ放課後ティータイムが世界のトップ10に入っていたことになる。もちろん海外では個人輸入分しか売れていないだろうが、ベストヒットUSAならぬベストヒットワールドという音楽番組があればそこで流れていたことになる。
 テレビをつけっぱなしにして自宅でリラックスしていたエリック・クラプトンが「日本に新しいバンドが出てきたのか、僕の461のサウンドに似ているなあ」と画面に目をやると、あまりのことに手にしていたグラスを落とす、という光景が実際ありえたわけだ。

 そうでなくても、フェンダー本社は「日本で左用ジャズベースが爆発的に売れている」という報告内容に興味を持たないわけはないし、オーストリアのヘッドフォンメーカーAKGは最高級品の注文が殺到した理由を調査しているだろう。既に少なからぬ影響力を発揮しているということだ。
 ではアニメ「けいおん!」は世界展開できるのか。十分可能だろう。あまり日本の風俗に依存したところがない。それこそマクドナルドが展開している国であれば十分受け入れられるだろう。それはドラえもんクラスになると自国にはない「押入れ」も「ドラえもんのベット」と納得してくれるようだが、セーラームーンだと「セーラー服は男の服」という認識のまま広まっている国もあるらしい。売れていればいいのかもしれないが、受け入れられる下地があるかは重要だ。
 「けいおん!」の場合、唯が最初に弾くチャルメラのフレーズで笑いは誘えまいが差し替えるほどではない。澪の晴れ着姿は日本の誇りだ。(民族衣装にはどこか崩れた淫蕩さがあるものが多いが、和服には清楚な美しさだけがある。)
 世界展開するとなると、多少手直しの要望があるかもしれないがな。オープニングは京都の風景をバックにしているが、折角なら世界遺産に差し替えてくれという要望が京都市観光局からくるかもしれない。京都といえど観光客誘致になりふり構っていられる場合ではないはずだ。すると京都造形芸術大学の階段からジャンプするシーンは清水の舞台から飛び降りるシーンに差し替えられる・・・さすがにこれはないか。加茂川(not 鴨川)の飛び石を渡るシーンが、地主神社の石の間を目をつぶって渡るシーンになる可能性はあるかな。

 というわけで「けいおん!」が海外でも放送されたとする。フェンダー、AKGは応援してくれるだろうし、もちろんギブソン、マクドナルド、KORG、YAMAHAにとっても悪い話じゃない。すると今度は「放課後ティータイム」のアルバムが海外で売れるか!という問題になる。

 売れる。ブリティッシュロック伝統のへヴィーなサウンドに萌え声が乗るというパターン、Happy Birthday!の一発屋で終わったとはいえAltered Images、クレアのボーカルのほうが通りがいいかな?という前例がある。問題はこれだけの速度で母音を叩きだす歌を世界が聞いたことがないということだ。日本語は単位時間当たりに発する母音数がおそらく全言語で一番多い。案外ここが気になるんだわ。例えばドイツ語のポピュラーミュージックは流行しない。単語で切れるから乗りにくい。だからドイツのミュージシャンがイタリア語で歌ったりする。(ネーナの「99の風船」は、、、あの怒りがドイツ語以外で歌えるか!)

 ただそれをクリアできるとすると、これは日本発の音楽が世界に広まる可能性が十分にある。

 言いにくいことは他人に言ってもらおう、ほぼ日手帳のどこかにあったんだが(みつからん)「東南アジアで現地の若者がロックをやっているのを聞いた。欧米人が僕らのロックを聴いて、多分同じような感覚を持つんだろうなと思って、ロックをやめた。」
 ロックの本場欧米では、結構人種的偏見が根強いと思うのだ。ジャズはまだよかった。元々黒人と白人の音楽が融合して生まれたし、進駐軍相手のクラブで演奏した先人たちが日本人にもジャズができることを分からせてくれた。がロックはどうだ?黒人の場合はそのリズム感を尊重してくれるが、黄色人種は?
 YMOは「イエロー」を強調して、しかも旧日本軍だか中国人民服だかわからん格好をして、露骨に言うとコミックバンドとして受け入れてもらった。しかし日本得意の電子機器を持ってくる。これでサウンドも聞いてもらえるようになった。
 ローランドのシーケンサーMC−8にライディーンのデータをカセットテープから転送するのに5分かかるので、ステージで間を持たせるためにギャグをやっていたというのはあるからコミックバンドには違いないんだがな。

 日本のフュージョンバンド「カシオペア」がロスで公演したとき、日本では好評と報道された。これは海外進出か、と盛り上がった。しかし現地ではこんな反応だったらしい。「たしかに素晴らしいバンドだ。しかしあの程度のバンドならいくらでもいる。」同じようなバンドが沢山あるなら、母国のバンドを応援するよなあ。
 しかし、放課後ティータイムのようなバンドは世界のどこにもない。そして日本人が偏見を持って見られることはあっても、日本のアニメキャラなら素直に受け入れてもらえるはずだ。だからしっくりこないかもしれないが、CD売上が激減しているのに今更と納得できないところはあるかもしれないが、ついに、ついに、ついに、日本の音楽が世界に受け入れられる入り口が見えた。

 サウンド的にはいい線行っていると思う。くりかえしになるが、ロックにはもはや新しいフレーズやアレンジを作り出す余地がなくなってきた。ならばクラシックのように無理をして一般には受け入れがたい現代音楽に行くのではなく、たとえカバーバージョンに毛の生えたようなものであっても、楽しく演奏して/聴いていこうよ、という方向性があってもいいし、これは受け入れてもらえると思う。これを当方は「ロックでもポップスでもないけいおん」と評したが、海外ではK−ONになるのかな。
 アニメで売る、というのに納得できない人がいるかもしれないが、例えばロッキー3のテーマになって大ヒットしたEye of the Tiger。演奏したSurviverは現地ではアイドルバンド、らしい。しかしながら「完全なミーハーバンドですよ。でも音を聴けば納得できる」と評してもらえた。(サウンドストリートで技術をやっていたアメリカ人の台詞です。)だから放課後ティータイムも「アニソンですよ。だけど音を聴けば納得できる」という位置につくことができれば、皆さん異論はないでしょ。

 ただし海外に出るにはまず国内の「アニソン」という偏見と戦わないといけない。難儀なことだ。高崎晃、ギターを弾いてくれ。アイドル扱いでデビューしたときの複雑な気持ちはあんたが一番知っているだろう。そして「レイジーのギタリスト、すごいテクだ、アイドルバンドで終わるわけないよ」と目利きのファンが引っ張りあげてくれた恩をあなたは忘れてないだろう。あなたが弾けばみんなもそれを思い出す。
 個人的にはイルカに「私の恋はホッチキス」を歌ってほしい。普通にいい曲だと万人が認めてくれるだろう。
 誰だっけ、LIVE AIDで「これは世界に出て行くチャンスだ!」を連発し、結局出て行けなかった奴。再結成してDon't Say Lazyをカバーしろ。あんたが歌えば国内の態度が変わる。これはあんたの義務だ。自分がチャンスをもらったように他人にチャンスを与えてやれ。少なくともLIVE AIDで自分が世界に出て行く!だけを繰り返し「このような世界規模のチャリティーイベントに参加させてもらったことに感謝する。自分も難民救済のために精一杯歌うのでみんなも協力してほしい」と言わなかったことに対しての罪滅ぼしは必要だろう。

 フォロアーが出てくるかという問題もある。けいおん!は終了した。これに続くアニメのキャラクターバンドが生まれてくるかだ。これについては絶対可憐チルドレンでバンド結成の動きがある。第二期のアニメがあるという条件付だが、CDにするならボーカルは平野 綾だろうなあ。ん、期待できるかも(中途半端に上手いのが気になるけど)。すみません。ハルヒは見ていません。

 がんばれ澪ちゃん、すべてのロック少年と元ロック少年の夢を乗せて。え、全てのロック少年が世界に出て行く夢を持っていたわけではないって?でも、女の子にもてるようになって、澪ちゃんみたいな彼女が出来るといいなとは思っていたでしょ。だから協力してくれ。レスポールを持っていると「けいおんの影響?」と聞かれると腹立つのはわかるがぐっとこらえてくれ。日本の音楽が世界に出て行けるチャンスが本当に来たんだ。


2009.8.19加筆

 というわけで真面目に涼宮ハルヒを見たが、、、。おかげで思い出したことが。
 ある日同じ寮の奴がやってきて、「興味ある子がいるんだが『これからの人類が進化する方向を予測して書け』と言ってきた、手伝ってくれ」と頼まれた。もちろん「おもしろそうじゃん」と書いてやったら実に感謝された。返事はなかったらしいが「100点とる人大嫌い」と思われたのだろう。まあ頼んだ本人も「あれに反応しないような女に興味はない」とフォローしてくれた。

 しかしもっと身近に似たような奴が、というよりハルヒのモデルと言われても納得するようなのがいた。
 マンガほどではないがよく見るとかわいい。知能はむちゃくちゃ高い。不随意筋をコントロールできる人間離れした運動神経を持っている。ついでに家事百般完璧にこなす(らしい〜ホンマかと思って針と糸を渡したら、瞬きする間に糸が通っていた)。
 しかし性格は滅茶苦茶で、すさまじくわがまま。交番の前に駐在が立っているにもかかわらず、まんまえを赤信号で渡り、振り向きもせずにフォローさせる。コクられればついて行くらしいが、すぐに潰されたみたいだ。そーだろうな。面白いは面白いがとても疲れる。普通の人間なら1ヶ月ともたないだろう。

 と余り思い出したくないことを考えながら、1、2話で大まかな世界観をつかむ。そして伝説とも言われているライブシーンを鑑賞。むむむ。描き込みはいい。曲間の雰囲気はすばらしい。しかし肝心の曲が。やっぱりガムばってリキんでロックしてますなあ。結論、却下。キャラクタの力だけでは、音楽の行き詰まりを打破できない。演奏シーンを完璧にアニメ化した、というだけならトムとジェリーに誰もかないません。そもそもテレビアニメでそれに対抗しようなんて無茶です。ギブソンSGを持ってきたのはいいセンスしてると思いますし、しかもSGスタンダードとは感涙もの。山中先生がフライイングVを背中に担いでいるシーンも「これ描いた人、本当にギターが分かっているんだな」としびれましたが、アニメーターがどこまでがんばっても、超えられない限界があるのです。これでは「日本の音楽が世界に出て行けるかも」と熱くはなりません。
 絶対可憐チルドレンの方は、さすがです。絵からイントロが聞こえてきました。ストラトのフロントピックアップのクリーントーン。少々Frozen Japに似ているんだ。歌までは聞こえてこないということはボーカルはその場にいなかった薫かな。ひょっとして期待できるかも。ギターとドラムが引っ張ってゆくバンド、というとVAN HALENとかTHE WHOなんだが、キーボードが加わってくる。どういうサウンドに仕上がるか楽しみである。

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