当方のレスポール、1983年ギブソン・カスタムショップ製、ブラウンサンバースト。1992年に池袋のイシバシにぶら下がっていたのを一目ぼれして購入。音楽ネタ、目次へ
一番気に入ったところは、While My Guitar Gentry Weepsのオクターブグリッサンドをしたとたん、指先からにんまりするような快感が伝わってきたところ。
色や作り、ピックアップの位置から当時のレギュラーモデルのリファイン版と思われる。レスポール80との違いはマホガニー1ピースネックであること。エリートとの違いはトップにキルトが入っていないこと。そしてもちろん「Gibson Custom Shop」のロゴ入り。他に同型のものを知らないため、出来不明。
弾いた感触は最高なのだが、なにしろ取扱いには注意が要るし、重いので、だいたいはストラトを弾いていた。ところが折れていたペグを交換し、久々に弾いてみるとやはりこのたたずまいは魅力的だ。音もよさげ。結構弾き易い。大事にしてやりたくなった。パーツもいい加減あちこち錆びている。フレットも減っている。指板もでこぼこだ。それなりにメンテしてやらないと。オリジナルパーツに拘って、というほどのものでもないので、交換を決意した。ここで「コンデンサーは双信の宇宙通信用に交換」とかすると、いかにも自分らしくて話の種にはいいのだが、さらにワイヤーは6Nに交換とすると確実に音はよくなるのだが、そうなると多分ボリュームを変えたくなる。すると規格が違うんだ。コスモス製が使えないなんて、と思いとどまる。ピックアップはよく分からない。とても素直な音がするので不満が一切ないだけなんだが。
というわけで交換はフレットとブリッジのみに決定。フレットは「ステンレス」が妙に気になる。磨り減りにくいというのはマル。チョーキングも滑りがよいらしい。池袋のIKEBEで弾かせてくれるというので、行ってみたが、まあどっちでもいいか、という感想。しかしリフレットに4万円は高くないかい、というのもある。といいながら弦は安かったのでまとめ買い。(私は義理堅いのだ。試奏だけでもさせてくれれば、いいところを(あれば)ちゃんと紹介する。)
というわけでステンレスにはこだわらないまでも工房探し開始。あら、フジゲンはリペアを自社ブランドに限定してしまったのね。リペアマンにとっても役不足を感じない素材だとは思うのだが、まあ仕方がない。同じ市内にもやってくれるところはあるがちょっと高い。大手楽器店で精度の高さを宣伝しているところがあったが、行ってみるとどうやら下請けに出しているらしい。やめた。取次ぎ窓口に中間マージンを抜かせてあげるほど私は豊かではない。
工房検索中に「チタンサドル」などというものを発見。正直よく分からん。製造元のサイトを訪れた。文章が(上手くはないが)熱い!念のためあちこち検索したが悪い評判は聞かない。決定。ただし溝は切っていないらしい。リフレットと一緒に頼む必要がありそうだ。
文章が熱いから決める、というのはいかにも私らしい。ここ読んでみてよ。響きあうものがあるだろう。こんな人が作ったものなら、間違いなくよく響いてくれるはずだ。結局、キャンペーン期間ということもあり値段で判断。シブヤ楽器にリフレット依頼。大井町にはいい温泉が出ているのでなじみもあるしと、とってつけた理由もある。フレット交換と一緒にチタンサドルでブリッジを交換してくれ。チタンは扱ったことがないそうだが、なんとかよろしく。部品取り寄せに時間がかかるようだが、ついで言うとにサウンドハウスで買って持ち込んだほうが安いみたいだが、実際に仕事をしてくれるところだ。部品代マージンくらいは儲けてくれてかまわない。
はっきり言って時間はかかったが、問い合わせると詳細な理由が返ってきたので逆に好感度アップ。(つまり納期管理・進捗管理をしっかりやっているということ。)いつも使っている弦でテンションかけながらナットからブリッジまで一直線に面倒見てくれたし、仕上げも(ものすごく)きれいだったので、問題無しです。
あ、もちろん仕事頼む前に、店を訪れて雰囲気は確認しましたぞ。ブリッジは駒が前述のとおりチタン。ベースはゴトーのナッシュビルタイプ。(実はギブソン純正も入手できるところ見つけたんだが、面倒だしいいや。)これでフレットをステンレスにすると音がギラギラし過ぎそうだ。でジムダンロップで依頼。できるだけ元のやつと同じサイズにしてくれということで、ジャンボフレットを見繕ってもらった。指板も摺り合わせてくれたみたいで、実に丁寧。ただし、ギブソン風にバインディングでフレットの両端が覆われているわけではない。これは納得済み。こうしないと1弦連続プリングオフが上手くいかない。ここが不思議なんだが、連続3連プリングオフを得意技にしたはずのレス=ポール氏はなぜ、自分の名前が冠されたモデルをプリングオフがやりにくいフレット構造にしたのだろう(バインディングが削れてやがて弦落ちする)。やっぱりむちゃくちゃ上手かったんだろうなあ。
あ、ジャンボフレット、レスポールにはお勧めです。弾きにくい15フレット以上がかなり楽になります。殆どスキャロップドフィンガーボード状態になるので、力が要りません。自分のギター、いい音がするギターだと思っていたが、仰天するほどいい音がするギターだった。殆どクラプトン=ハリスンの「ルーシー」。チタンでドーピングしただけ上か?(恐れ多くもそう思ってしまった。)元々レスポールにしては硬い音がしていたのだが、ついでにネックは意外なほど薄かったのだが、更に立ち上がりがよくなり、サスティンも自然。確かに音がギラギラするところはあるが、ABBEY ROADのジョージの音を思い出してみてよ。ブリッジ交換自体も効いている。思った以上にビビッて、振動をロスしていたのね。シブヤ楽器のリペアマンもバイオリン並みに高精度に溝を切ってくれたようだ(チタンブリッジは初めてみたいなことを言っていたので、正直期待はしてなかったが、ベースとなる技術が素晴らしいのだろう。)、、、ところが問題が発覚。つまり、、、そのお、、、なんといいましょうか、、、自分が下手なことがよく分かる。
よい楽器はよい教師だというのはよく分かっていて、ESPのストラトもそんな感じだった。正しく弾くと弾きやすい。そんなわけで、随分教えられてきたのだが、それはあくまで「弾きやすい弾き方」。このレスポールはとにかく反応がいい。音色がコロコロ変わる。バッハの平均律ハ短調プレリュード、速度を上げるにつれ、明らかに音が悪くなる。要するに僕の弾き方が粗いのだ。ミュートをサボると共鳴が激しい。最終目標、4分音符=144まであと一歩まで来ていたが、速度を半分に落として再練習開始。
確かに速くはなったけど音が悪くなったなあ、と以前を思い出すべく中学生のころに弾いたPaul McCartney & WingsのCountry Dreamerのイントロのアルペジオ。久しぶりに弾いてみる。自分で言うのもなんだが凄い音した。ちょっとだけ、自信が回復した。えーとね、うちのガキがバイオリンでついにバッハの2つのバイオリンのためのコンチェルト、弾くことになったのよ。大好きな曲なんだけどね。で、心ひそかにあわせたいなと思って、ところがこの曲22フレットまでいるんだよね。ストラトじゃ無理です。というわけでどうしてもレスポールに登場してもらわないといけなくなった。(結果的に)それもあってオーバーホールしたんだけど、なんといいましょうか。これは須賀原よしえさん(元実在OL)が、越乃寒梅大吟醸を飲んだときの感想を引用しましょう。「これはお酒ではなくて別のおいしい飲み物よ」。
音だけ聴いてレスポールと思ってくれる人は皆無に近そうだ。BEATLESのOctopus's Gardenの音が本当に出るぞ。リペア前はイントロだけが可能だった。今なら間奏も弾ける。30年前の懸案事項を思い出した。さだまさし「木根川橋」にOctopus's Gardenの間奏をくっつける。絶対に合うという確信は未だ1音たりとも動いていない。