破裏千流 武道ピッキング講座

 ギターを速く弾くことに憧れを感じまくっている当方は、いろいろと工夫に工夫を重ねているのだが、どうしてもできないことがある。左手の指で静かに弦を押さえ、静かに離すことである。指自体は最短距離に近い軌道を通って動いているのだが、そのままの速度でフィンガーボードまで行ってしまうので、左手だけで十分音が出る。ハンマリング&プリングの連続みたいになっているのだ。ものすごーくノイズが多い。どうすればもっと滑らかになるか、日夜悩んでいるのだが分からん。誰か教えてくれ。いや教えてくださいませ。

 右手のピッキングは、Dr.シーゲル(成毛滋)の教えをまともに受けて、工夫してみた。基本的には「手首と指先を同時に動かすと、双方の動きが小さくて済み、結果的に速く弾ける」という主張に沿っている。
 ただしDr.シーゲルは手首を回してと教えてくれるのだが(手を洗った後、水を切るような動き)、腕の中の骨が動いているのを想像すると、なんとなく無駄なような気がする。「ひねっている」というのも武道っぽくなくてヤなのである。
 だから手首は、親指の付け根下のちょうつがいから先を左右に振ることにした。不自然と思う方は、ジョン=レノンがAll My Lovingのコードカッティングをするシーンを思い浮かべること、それでも不自然に思える人は、世の中の熱狂的なジョン=レノンファンを思い起こしてもう一回見ること。確かに手首だけで全弦ストロークできるのはジョンだからかもしれない。僕だって本音を言うと気持ち悪いのだ。が、ほんの1センチ動けばいいのだと割り切ろう。
 これに指の動きを加える。人差し指で弦をはじき上げ、親指で弦をはじき落とすように上下させ、たまたまその間にピックを挟んでいるというイメージ。
 この二つを同時に行う。僕の感覚では親指の付け根のちょっと上で起動するとやりやすい。力は思い切り抜いても大丈夫。というのは、指でピックを上下させるときに自然とピックを握るから弦を通過する瞬間だけはピックに圧力がかかっており、弦ではじき飛ばされることはない(アコギの場合は保証の限りではない)。
 二つの動作をシンクロさせるメリットはもう1つあって、手首を動かすとピックはブリッジ側にずれる、が、指を動かすとピックはネック側にずれる。あわせるとほぼ弦に直角に動く。(要望があれば写真でもアップしますが。)
 ただし、動きが相殺しているということは、無駄なエネルギーを使っているということであり、ここんところが気分的に嫌だ。今言ったようなやり方をすると指の動きは左回りになるが、右回りにするとよいかもしれない。ただし、アップピッキングのとき人差し指の弾力で戻ることになるので、音の粒が揃わないような気がするので後回しにしている。
 一応実験はしてみた。手首をだらんと小指側に傾けると形にはなる。ところが、ピックと弦の角度が殆ど直角になる。これはまずい。パット=メセニーのように中指+人差し指と親指で挟んでピックの耳で弦を弾くようにすればいいのかもしれんが、常にピックと弦が並行でないと盛大に擦過音が出る。うまくやると太い音が出ていいのだが。

 ピッキング、親指の付け根から起動させて力を抜くと、手首の上下運動(野球のボールを投げる動き)がなんとなく加わる。さらに右腕から力を抜くと肘から先も同時に伸び縮みするようになる。(実際には肘と肩が動いているのだが、気持ちとしては肘から先が伸びている、とすること。でないと肩に力が入って肩が上がる。肩から力を抜くためには、右手を構えるときに手刀を下ろす角度で腕をだらんと下に落とし、必要な高さまで肘を横に引き手首を返す、というややこしい儀式をすればなんとかなる。)
 指+手首の左右+手首の上下+肘から先の伸縮、これだけの動きを総動員すると、ピックが弦を通過するときの速度が疾くなる。躁音が殆ど出なくなるので音の粒が揃ったように聞こえる。
 実際のところは、肘から先など殆ど動いてないのだが、動いている、と思い込むこと。こうするとピックが弦をまたぐ移動と、弦の間の移動が本質的に同じ動作で、かつ無理なくできるから嵌まると快感。ピッキングを意識せずとも、左手の動きに右手が弦移動を含めて付いてくる。1弦程度なら指だけで移動してしまうのは未熟者のご愛嬌と見てくれ。

 要するに古武道の考え方を使って、少しの動きを重ねていって全体で疾い動きを作るというのをやってみたわけだ。1箇所が支点となってそこに負担がかかるということがないので身体に無理がない(はずだ)、というメリットもある。
 欠点は4つほどあって「最適なピックの持ち方が未発見(爪の硬さが邪魔になる)」「右手ミュートが難しい(手首が浮くので)」「腕がフローティングの状態なので、弦の間隔を体得しにくい」「一つ一つの動きは小さくなり負担は減るが全部の箇所が細かい符割で動かせるわけではない」ことである。従ってトレモロをやると音の粒は揃うし、長続きするが、速くなるわけではない。もうこの速さは気持ちの問題かな(速さに気分が耐えられるか)という感じはするが。
 それでもピックの持ち方は研究中。使用ピックは今のところmoonのジャズタイプがいいかな。ダンロップに比べてちょっとだけ長いのがGOOD。適当にすべりにくいのがつまみやすい。ただしどこででも売ってるもんじゃないんだよな。Googleで検索しても最初の2ページには出てこない。もう生産中止か?ならば10枚くらい買い溜めておかないと。

 もともと「ピッキングを疾く」と思ったのは、当方の性格がぼーっとしているので(実際に会った人にはのんびりした雰囲気を感じさせるのだそうだ)、ゆっくりしたフレーズを弾くと、ピッキングまでゆっくりしてしまって、流れが止まるのが嫌だったことによる。指+手首の左右運動、だけでも相当疾くなり、ついでにどこまで出来るかやってみたというわけだ。速度も四分音符=152の六連符くらいまで上げたいんだがなあ。
 トレモロを速く音の粒を揃えて、であれば、マンドリンの方にノウハウの蓄積があるかと思ったが、Webを探す限りではそうでもない、ので、特に取り込んでません。(気がつかないわけではない、というイイワケ。)

 なお、甲野さんの影響を受けたのなら、「古武道」ではなく「古武術」というべきなのだが、あえて古「武道」と表現した理由はちゃんとあります。破裏千(はりせん)流の全国大会を日本「武道」館で開くとき、話が通りやすいんではというしょーもない期待。別に家元だなんていう気はないです。僕下手だから。というわけでいいアイディアがあればどんどん変えていってください。でも「序破急」の「破」、「裏千家」の「裏千」を組み合わせたネーミングはこじつけにしてはいい線行っていると自分では思っているので命名候補には加えておいてくれ。
 関係なさそうなものに「武道」をつける前例は、「武道整体」(魔夜峰夫)というのがあり、もう少し崩してよければ「格闘○○」(高橋留美子)というのもございます。

 技術が安定したら「木根川橋」+「Ocupus's Garden」を歌って弾いてニコニコ動画にでも上げるかな。ただし近所にFender Twin Reverbを置いているスタジオがないんだよねえ。でもいつかは責任取らないとな。「ギリシャ人が左手薬指と心臓が直結していると考えたのは当たり前だ。その指が一番チョーキングビブラートに感情が込めやすいからだ」と書いちゃった責任ね。
 というのは、そんなことを言う人がいたら、別に世界で初めて主張した人でなくてもいい、下手でも全然かまわない、絶対にその人の音を聞きたいと僕は思うから。おかしいかな、この感覚。
 が、つい昨日気がついたんだけど、私はこの左手薬指の位置キープが出来てないみたいだね。指板と指の間隔が薬指だけ違う。それで他の指あるいは薬指が無駄な距離を動くので最初に書いたようにノイズが多くなるみたいだわ。弱ったなあ・・・左手薬指がアンテナの役を果たしているからなあ・・・これは今後研究要。

 しかしなんで「平沢唯のギター教室(ガイド役、中野梓)」や「秋山澪のベース入門」という本が出ないのだろう。弾いているシーンを全部イラストにする、というのは大変そうだがアニメのカットが使えそうだし、追加分でも京都アニメーションなら難なくやるだろう。「けいおんアンソロジー」という本を作ったり、平沢唯モデルのギターを作るよりよほど健康的だ。作者のかきふらいもギタリストである以上、自分でギターの本を書きたいという気持ちもないわけじゃなかろう。
 まあみんなが知っているのは4コマの「けいおん!」ではなくてアニメの「けいおん!」だからね。でも作者は澪を左利きにした3年前の自分の肩を叩いて言ってやりたいだろう「ナイス」。
(最後の文体は、「ショムニ」の単行本カバー折り返しより。・・・まて、澪は左利きだから教本のモデルにはなりにくいのか。右利きのモデルは憂にでもやってもらうか。逆に右利きの教本しかないので苦労した左利きの作者だからこそ書けることもありそうだ。左利きの悲哀も書きたい、とか言っていたから、やる気になってくれるかもしれない。演奏のフォームとかを澪をモデルにするのであれば史上初の左利き用教本が今なら出せる。描かない理由はないと思うがな。まあベース用はともかくギター用は右利き用になるだろうが、それでもかきふらい本人がイラストを描くメリットはあるのだ。つまり、自分でポーズをとって、鏡に映して、それを写す。左利きだとこの過程がとても楽になる。〜鏡に映った左利きの動きは、相対して見た右利きの動きになるのだ。よく気がつくなって?うん。中学のときの彼女が左利きだったから。)

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