日本向けの真空管ギターアンプ

 ギターアンプは真空管をよしとする。
 前にも書いたがこの需要があるので真空管はいまだに生産されているわけだ。

 ではなんで真空管がいいかというと、音がきれいに歪むからだ。実際、CDやテレビで聞いているエレキギターのサウンドというのは、殆どの場合、何がしか歪んでいる。
 で「歪む」というのはどういうことかというと、まあこういうことだ。
 アンプとは、入力信号を拡大してスピーカーに送る拡大コピー機である。
 とはいえ出力できる紙の大きさには限界があるから、あまりにも拡大しようとするとはみ出てしまう。で、トランジスタアンプだとはみ出たところは切れてしまって印刷されないのだが、真空管だと、はじっこのほうを適当に丸めて、つまり歪めて、印刷してくれる。つまり、拡大コピー前の図の大きすぎるところも、出力された紙を見るとなんとなくどういうものが書いているか分かるわけだ。これゆえに真空管アンプが珍重されるのだ。

 なお、この「歪み」という文字。普通の人は「ひずみ」と発音するらしいが、当方は自信を持って「ゆがみ」と発音する。そのほうが美しく、音楽的だからである。なに?分からんって?「バロック音楽」の「バロック」とはどういう意味でしょう?ハイ、「歪んだ真珠」という意味です。これは10人が10人「ゆがんだ」と発音します。だから「ひずみ」はただ音波の波形が崩れることだが、「ゆがみ」はその崩れの中から新たなものが生まれるというニュアンスを持っているはずである。したがって「ゆがみ」が正しい。(と強弁。)

 当方も昔から「真空管アンプがほしい」と思ってはいたが、いくつかの理由から断念していた。場所をとるし、第一うるさいのだ。歪んだ音を出すためには、素子の限界を超えた増幅をしないといけない。つまり音量をでかくしないといけない。これはマンション暮らしとしては致命的である。
 ところが、、、よくあることだが、この手の「ほしい」病は間歇的に発症する。ところが今回は前回発症時と違ってインターネットの普及が進んでいた。特にコンピュータの知識を持たないギタリストでも、音声付動画を公開できるくらいに。
 最初はラジオ用の小出力管である6BM8あたりを使ってギターアンプを作った奴がいないかなあ、と探していた。目的のは見つからなかったが、小出力の真空管アンプ。というのはあるみたいだ。名前はnano head。なんと0.5W。世界最小真空管ギターアンプだそうだ。
 ところが定価12万円。円高の今日、並行輸入すれば5万円くらいでなんとかなるはずだが、円高差益という幸せを関係者が分かち合っているらしく末端価格はつりあがったままである。バカたれ!こういうものの需要は地下室のある家が多く、爆音を出しても問題ない合衆国よりも、住宅事情の厳しい日本で売れるものだ、だったら薄利で数を出すほうが儲かるだろうに。新しいマーケットを作る可能性プンプンだぞ。

 まあニッチといえばニッチだなあ。。。ともかく一つ取っ掛かりが出来た。あとはWebが連想してくれる。ふむふむ、似たようなものをつくったアーマチュアがいて、基板のキットが出ているのか、Fireflyという名前ね。え、配布中止。まあ回路図と組み立て説明図は公開されているからなんとかなるかな。似たようなものでSuperflyというのもある。これのほうが部品点数は少なそうだ。早速検索・・・が、ですねえ。同じ音楽関係でSuperflyというバンドがあるらしく、今の私にとってはただのノイズ。わからん。

 結構役に立ったのがYouTubeで音を聞かせてくれる動画。関連するビデオとして同じような超小型真空管アンプのものが並んでいる。その中でこの動画で比較していたRockBlockというのに注目!これ聞いてよ、そりゃパソコンのオーディオなんてちゃちですよ。FLVフォーマットの音なんて論外ですよ。が、伝わってくるものがあるでしょ。あ、そうそう外観はエフェクターと変わらない。エフェクターとしても使える。が、れっきとした1Wのチューブアンプです。

 早速調査開始。インターネットが普及して本当に楽になった。(この楽になったのを活用せず安易に人に聞く輩も多くて嫌になる。)うーん。日本で売っているのは1軒だけ。ちょっと高いなあ、あ、中古もある。一応チェック。3万円+消費税。店の名前は・・・聞いたことないなあ。
 1週間ほど何もしなかったが、別件でストレスがたまっていたためか、つい注文してしまった。中古のほう。よく知らないところで、評判も何も見つからなかったが、まあ店 のホームページのつくりを見る限り悪くはなさそうだったので思い切った。若干の行き違いはあったが、こまめに、かつ誠実に対応してくれたので逆に評価上昇。

 で、物が届きました。小さいワリにいろいろつまみがあるなあ。音はとりあえず(楽器用)ヘッドフォンで聞くことにして、ESPストラトつないで、まあこんな感じか、悪くない。ところがレスポールつなぐと、
いいです。これ。

 いやね、若干早まったかなと思ったんだわさ。例えば3万出すならチューブアンプ、ないわけじゃない。フジゲンのこれなんかよさそうだ。一方RockBlockは出力と図体が小さいのだけがとりえ。結局スピーカーキャビネットを作ると高くつくし大きさだって余り変わりそうもないのは自明の理。
 ところがですねえ、日本のギター教育のパイオニア成毛滋さんの言う、真空管アンプを使っている生徒のほうが明らかに上達が早い、の理由が一発で分かる。ピッキングのアタマが、なんつうか潰れないんですよ。さっきアンプは拡大コピー機だと書いたけど。で、出力用紙がA4であれば、はみ出すはずのところでもA4に押し込んで再生するのが真空管アンプだけど(トランジスタはばっさり切り落とす)、こいつは一瞬だけど、根性でA3に写してくれる、そういう感じだ。

 こういうことならキャビネットも作ろうかという気になる。オーディオ的に考えるとギターアンプのスピーカーキャビネットは問題が多いんだ。再生周波数帯域からして口径がでかすぎる。後面開放では周波数特性暴れまくりだろう。
 再生する周波数の最低が決まっているので、ここはバスレフで。大型ダクトにして再生周波数以下は逆にキャンセルすることを狙う。これで演奏ノイズを減らす。小音量でもフルアップに近い迫力のある音を、がそもそものテーマだからスピーカーは8オームを2つ直列にして見かけ上の能率を下げる。2本のスピーカーは左右に並べるのではなく前後に配置。これで音圧でキャビネットが動くのをキャンセル。アタックの強さを殺さないように。あ、意外に思われるかもしれませんがスピーカーの箱って音圧で動きますよ。これをキャンセルするとアタック感が全然違ってくる。
 ユニットはテクニクスF100シリーズがあれば絶対採用だが、とっくの昔に生産中止。
 よし、ここは長年備蓄していたフォステクスFE108Sに登場願おう。ひょっとしたら、ちょーっと注目のサウンドになるかもよ。

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