文化祭シーズンである。上の娘の学校で先日行われた。お祭りは大好きなので心が踊る。下の子が行きたくてたまらんらしい。今年も弓道場で矢を射った。僕としても綺麗な部員さんが自分の顔を覚えてくれてたりしてうれしかった。音楽ネタ、目次へさて、ガキの学校の高等部、それまで「ロック部」だったのが「けいおん部(軽音楽部)」になって新入部員がどっと増えたそうな。バンド組んで中庭その他でライブやってます。お弁当食べるついでに聞いてました。
幸か不幸か中等部ではライブやっているのはいないらしい。若干期待した。「ライブやるんだ聞きに来て(ジャラーン)」と言ってきたクラスメイトに、うちのガキがどうツッコムか少々楽しみであったのだ。「今持っているのは練習用で、本番はちゃんとした楽器使うんでしょ」とかいいかねない。(思い起こせば僕もこっぱずかしいお誘いをしたものだ。)もっとも聞いていた僕も突っ込みたくなった。あのね、高校生だから下手なのは理解できる。それは僕らの時代より機材、練習環境、参考資料、比較にならないほどよくなったからもう少し上手くても、、、ってのはあるけどね。デジタル技術を使ってキーを変えずに速度を変えられるトレーニングマシンとか、参考となる動画とか、あちこちのサイトのQ&Aとか、うらやましいのが沢山あるんだから。
が、下手すぎる。もちろん楽器も(特にキーボード)だけど、歌が。最初はステージが見えないところで聞いていた。(注:うちのガキは耳からの音を左脳で処理していたようだ。)いずれもひどかったが、多少ましなのが出てきた。ギターとベースがユニゾンでリフを刻み、ドラムがしっかりとサポートする。リミッターは使っているのだろうが、音の粒は揃っている。縦の線が合っているので聞き苦しくはない。高校生だからこれでいいよな、と好感を持って聞いていた。
しかしボーカルがひどい。声量、声質、音程ともに全然駄目。わめいているのだが声量がないので楽器に隠れきる。これギターとボーカルの兼任かなあ。重いギター抱えて弾けばそれは声量不足もやむをえないなあ。などと思ってステージを覗くと。
ボーカル専任じゃないか。
で、今まで聞いたバンドを脳内プレイバック〜いずれもボーカルがひどい(実際に聞いているときは私も左脳で処理していたようだ)。なんでこんなにひどいの?これは予想と著しく異なるのだ。キーボードが下手なのは、ヤマハ音楽教室その他を見る限り受講者のレベルが下がっているのである程度予測できた。けいおん部に入ってキーボードに回されたのでそれから始めました、って感じの人もいましたしね。
しかしボーカルが下手なわけはない。今の子どもたち、産まれたときからカラオケがあって、付き合いの悪いうちのガキですら時々行っている。歌うのには慣れているはずだ。
同輩の方、最初にカラオケ行ったときのこと覚えてます?主旋律がなく伴奏だけなので自分で音程とるのに苦労しませんでした?今の機械は採点までしてくれる。楽曲も昔の歌謡曲みたいに1オクターブと1音(例外:シクラメンのかほり)に収めるなんてこともなく、音域が特に上に伸びている。「hi-Aまでしか出ません。僕の声は低いのでしょうか」などという質問までネットにある。どう考えたってレベルは上がっているはずだ。しかも圧倒的に。
なのにどうしてあんなに下手なの?音楽に関しては天才かもしれないうちのガキに聞いた。「何で下手なの?カラオケで鍛えられているでしょ。」あっさり答えた「あんな狭いところで歌って上手になるわけないじゃん。」
なるほど、である。隣近所の部屋からの騒音が漏れる狭い空間で、機械的な採点のプレッシャーの中、声域の広い曲を歌うのだ。電気の増幅に頼ってか細い声で歌ってしまうというクセがついてもまるで不思議ではない。それであんな風になるのね。私事で恐縮ですが、狭いボックスだと声が回っちゃうから声量抑えること当たり前のようにあるからね。さすがうちの子。4オクターブ超の声域と絶対音感に裏打ちされた純正律の音程。中2女子なのだが肺活量が3リットルオーバー、と恵まれているだけはあるわ。が、うちのガキの歌を聞いて「うまい」と思ったことはない。最近「残酷な天使のテーゼ」が気に入ったらしく、多少練習しているようで、二拍三連がきれいに取れるようになったな、くらいである。「ザラストロをやっつけろ(夜の女王のアリア)」の後半が歌えれば凄いと思うが、前半だけだ。生まれ持った高音を張り上げているだけである。
歌唱のレベルは全体的に上がっているから、そのうち周りにつられて上手くなるやとほっといたが、期待は出来ない。教育パパゴンその気になった。
で上のガキに依頼。「残酷な天使のテーゼをハミングで歌って。」
歌った後本人が「今のはヒナギクバージョン」というので、「あれ?オリジナルでは?じゃあ今度高橋さんの歌やって。」「違いが分かったかな?」「うん、ヒナギクはこの辺で響かせて・・・。」うちのガキ、あとで聞いてきた「鼻歌でなにをやらせようと思ったの?」
「いつもは気がつかないところが分かったでしょ。」
例えば歌い方自体に感情を込めることが出来るのに気がつかず、歌詞を読んでいるからあとは適当に抑揚をつけて感情を込めた気になっていたとかね。それでは上手いとはいえない。
もっともうちのガキにそこまで分かったかは不明である。音程や息の使い方に集中できるというのは分かったらしいが。なお、下のガキは「ハミングで音量を出すためには、口先で歌っていたのでは駄目だ」ということにもまだ気がついてない。これは仕方なかろう。文章のタイトルは「子どもの声が低くなる」(服部公一,筑摩書房,1999)のもじり。
服部さんの言うことは分かるが、ヒット曲を聴く限り高くなっているじゃないか、という疑問がようやく解けた。