プレ・クロマチック4.初めてのピッキング

 連載も4回目だからそろそろ音出そうな。

 まずはフレットハンドはネックを支えるだけにして、ピッキングに集中。
 さて、どの弦をはじこうか、と悩むがここは2弦とした。
 6弦という考えもある。理由は「最初はダウンピッキングから始める。そのとき邪魔になる弦がないので弾きやすい」くらいかな。でも僕は反対。ピックの軌道を面で動かす、ことができなくなる可能性がある。特にレスポールのようなアーチドトップの場合、上面の湾曲に沿ってピックを動かしてしまいがちだ。具体的には弦をはじくとき、ボディ側からギターの前方にはじき上げるクセがつきやすい。一番細い1弦も、今度は逆にボディ側に弦をはじき落とすクセがつく可能性がある。真ん中当たりの3,4弦が適当かもしれないが、4弦はワウンドでピックノイズが出やすい。出ないように練習するのが筋だが、さほど筋肉のついていない初学者にそこまで気にしろと言うのは酷だ。3弦でもいいが、ここは一般的なギターの弦で一番テンションが弱いという理由で2弦とする。求められる音の高さと比べて2弦が一番細いのだ。最初は筋肉がついてないから物理的には一番楽な選択肢を選ぼうということ。

 ピッキングの心得は「速く、浅く」ってこと。日本のエレキギター界は「強く弾くのを美徳」としてきたので全体的にこれが苦手だ。理由はいろいろある。初代エレキギターヒーローの寺内タケシ氏が三味線弾きの家系だったらしく、撥で出すアタック感を小さなピックで実現しようとしたため、めちゃくちゃ力を入れていたこともあろうし、ギターアンプのいいものが貴重品であったため、みなさん小型のアンプから大出力アンプっぽい音を出そうとして、つまりできるだけ大きな音を出そうとして、力強くピッキングしていたって事情もある。1980年頃の入門書やサウンドメイクの解説には「強く弾け」と書いてあったのだ。(だから僕らはピッキングが強く、ミュートが下手になった。)あとはニューミュージックブームの影響かな。アコースティックギターから入ってエレキに流れた人が多かったのだ。(僕も広い意味ではそのうちの一人だ。当時エレキは不良のものだからと弾かせてもらえなかったのだ。)アコギは音量を出すためにかなりばっちんばっちんやらないといけない。しかも弦を斜め下(ここで言う下はボディ方向)にはじかないと音が出ない。アコギの振動板の形考えてよ。表板を空気に対して直角に振動させないと音にならないでしょ。つまり弦はその方向に振動させる。ボディトップに平行にはじいたのではその方向に振動しにくいから(回転運動という形で振動はする)斜め下にはじくより他にないのだ。エレクトリックは弦が磁界を乱せば音になるから、水平にはじいたのでいいのよな。

 というわけで「水平にはじきます」。「疾く、浅く、水平に」心構えが一個増えてしまった。(水平でない流儀もあるが、これはミュート奏法を書くときに述べる。)
 とりあえず、ピックの先端を2弦と3弦の間に入れて、2弦にふれるまで下ろします。(言い方がまどろっこしいが、「下」というとボディ側という意味と、地面側という意味と両方に解釈できるのだ)。ピックの先が弦からボディ側に1ミリ程度出るくらいにして、そのまま3弦方向に2,3ミリ動かして、ピックアップの上面と平行に1弦側にさっと払う。ポーン、音が出たあ!

 では次回はこのときの「払うとき」の腕、手首、指の動きについて解説してゆく。ようやく「牛角ピックを使うという理由が分かるぞ。

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