前回は1音出したところでおしまい。音楽ネタ、目次へ
本当は、第3回で練習したメトロノームにあわせて手を叩く要領で、ダウンピッキングだけでポーン、ポーン、ポーンと、当然メトロノームにあわせて弾く、ってやってもらおうと思ったのだが「どうやって手を動かせばいいか」これを説明しておかないとここで変な癖がつく可能性がある。
「破裏千流武道ピッキング」でも書いたように腕と手首と指先をシンクロさせるのだが、いきなりは勘がつかめまい。まずメインとなる手首の動きから。手首は水平に回します。しかしこの動き普通の生活では行いませんから、いきなりは無理でしょう。というわけで「水平面を意識するための小道具」を用意します。当方の場合はテレフォンカードだった。テレフォンカードを手のひらに納めて手を軽く振った瞬間に関節の回転させ方が分かったのだ。今やテレフォンカードは絶滅に近いからその辺でもらえるプラスチックのポイントカードでいいや。(テレカのように素材が柔らかい方が無駄な力を入れない練習になっていいとは思うのだが。)
これを手に納めてカードの面がブレないように左右に振る。あれ、こんな動き出来たんだ、ってくらい意外な動きだと思う。でもこれが基本。このとき手首を左右に振るちょうつがいがどこにあるか感じてみて、たぶん親指の付け根側にあると思う。まあしばらく振り続けて感覚をつかんでください。でも普段やりなれない運動なので筋力がふつうないのよね。というわけで筋トレ。筋トレの定番は水の中で水圧と戦いながら。というわけで、今度風呂に入ったときにその運動やってみて。カード持って入れとは言わないから。手はピックを持ったつもりで、ほかの3本の指は軽く握った方がいいかな。
やってみた?分かったかな?水圧を避けようとして手のひらそのものが横に振る基準面になったね。これが理想型。ここであえて「理想型」と言った理由、分かりますよね。絶えず妥協を迫られるから。具体的には「ミュート」という奴がいるのだ。これは音を出さないテクニック。が、まあそれは後からね。次、腕行こう。よく腕は振らず手首で、なんて言うけど良くないです。僕無意識にそれをやっていて娘に「動かすまいと肘から先に力が入っている」と指摘された。腕は動かしていいんです。肘から振っていると言えない程度にね。無理に止めてはいけない理由は「止めようとして、実際止めると、実は手首とは反対の方向にわずかに動く」から。自分だけかと思って観察したら大なり小なりそうなるものみたいね。というわけで意識的に肘から先をふらふらにして動くようにしてみました。これね、手首を回転させるピッキングなら割と楽なんだよな。腕の位置変わんないから。僕がいうように手首を面で動かやりかたをとると両立が難しい。あとで出てきますが肘には弦移動という大きな役割をやってもらわんならんし。ここは自分でも何となく出来始めたところです。うちの娘は似たような動きを苦もなくやります。手首が左右に揺れるように動く。アレだと分かっちゃいるんだが。
あ、そうそう肝心なこと書くの忘れてただわさ。手首を左右に動かす筋肉がつくのに、だいたい2年かかりました。長い?そうでもないよ。フレットハンドでコードを押さえる筋肉がつくにもだいたいそれくらいかかります。最後は指。ここは最初は「弦から伝わる力を指先で感じる」ことを考えて弾いてください。第2回目でピックを持つときには指との接触面積を大きくするようにって書いたのは、指先で感じやすいように、です。その意識ができたら、今度は「指先で弦から伝わる力を受け止める」にしてください。音色がはっきりしてきたでしょ。(そのうち「受け流す」の感覚も必要になってくるのですが、今んところは「受け止める」で。音の粒を意識的にそろえられるように、です。) その気になったら手首使わず指だけでもピッキングできるんだよねえ。楽です。問題は楽すぎること。弦の抵抗がなくなったところで指の動き止めちゃうようになって、弦とピックが完全に離れない場合さえ出てきてはっきりした音がでなくなった。指の力は手首にかなわないからこうなってしまう。だから、最初は感じることに集中。そのうちに指で弾いているつもりでも、実は手首が動いています、なんて状態になります。
これで、メトロノームの前で孤独に耐えた練習を再現。手を叩く代わりにピックで弦を斬る。
ダウンの方が楽だけど、アップピッキングもそんなに苦労しないと思う。人差し指で弦からピックに伝わる力を受け止める、ってのはほかに例えようがない感覚なので面食らうかもしれないが、問題はそれくらいだ。なんかやりにくいって?第一回で説明した姿勢を思い出して。きちんと肘を張って。ちゃんとできるから。
ここで牛角ピックを使った理由を説明。これ、ものすごく弦離れがいいのだ。どんなに力を入れても弦をすっと抜けてくれるのでやがて「力を入れる」なんて面倒なことをしなくなる。また深くピックを当てようとしても、滑って結局浅くなる。さらには分厚いのでピックを挟む2本の指が結構離れる(4mm)。すると両方の指の感覚が混濁しないのだな。ダウンの時は親指が弦の力を感じ、アップの時は人差し指が弦の力を感じる。さらに分厚いのでピックが弦を通過するのに多少なりとも時間がかかる。すると「キュッ、キュッ」と擦過音がするのだ。耳障りだぞ。これを聞きたくないので、弦を疾く斬る、そんな習慣が付く。ということでポーン、ポーンやってください。ここでの禁則事項はピックミュート。今では信じがたいことなんだけど、弦をはじく練習として、まずピックを弦に添えて一度振動を止めてからメトロノームにあわせてポーンとはじく、っていう指導があったんだよ。確かにあわせやすい。しかし音楽というのはいちいち前の音を止めてから次の音を出すものではない。
まあそんな感じで練習練習。慣れてきたら2弦以外でもやってみて、そろそろ「ポーン、ポーン」が「ピーン、ピーン」に変わっているころかな?