プレ・クロマチック6.フレットハンド

 ピックハンドで弦がはじけるようになったところで、フレットハンドに移る。
 あ、ピックハンド、フレットハンドってのは合衆国直輸入の言い方だからなじみがないかもしれないが、その名の通りピックハンドはピックを持つ手、フレットハンドは弦を押さえる手、です。右利きと左利きで説明を分けるのが面倒だし、いちいち「右利きの場合(左利きでも右利きでギターを弾いている場合は」と注釈を入れるのがスマートでないのでこう書いてます。

 フレットハンドは要するに、弦を指(先)で押さえればいいのだが、これまた考慮事項が多い。とりあえず「セーハ」つまり一本の指で複数弦を押さえることは考慮の対象から外す。で、エレキギターを単音で弾く場合、Topと言ってもいいようなズバリの指先で押さえることはない。何となくの指先で押さえる。特に人差し指はべったりと寝ている。指先のTopは押さえている弦の一つ低い弦を受け、押さえているポイントから根本にかけての部分で押さえている弦より高い弦に触れているのが普通(ぶっちゃけて言うと運指に余裕のあるときに限りますが)である。
 エレキギターはアコースティックに比べて極端にダイナミックレンジが狭いので、演奏ノイズ、弾いてない弦の共振をことごとく拾ってアンプか増幅し、スピーカーから放出する。なわけで、この演奏ノイズを出さないというのが大問題になる。人差し指をこうしておくと弾いている両隣の弦くらいはおとなしくなる。

 押さえないところをおとなしくさせる方法のさわりを書いたところで、押さえるべきところをどう押さえるか、に移る。とりあえずスローガン。「ピアノは熊手、ギターは箒。」
 ピアノの場合は、手首から指が放射状に広がって指先が下を向くが、ギターは指先が一方向、弾いている自分の方向を向くのだ。なお、熊手のように広げて弾くことも可能だが、たぶんネックの裏の親指の位置が上下に動く。極めてないのであまり発言権はないが、高音弦に移動すると、人差し指〜小指が下に落ちるにつれて親指も下に落ちるのだ。1弦弾いているときはネックの下をつまむようになる。立って弾くと僕でさえ手首がきつい。それと、このフォームだとチョーキングがやりにくい。ハンマリング・オンも楽とは言い難い。だからフルピッキングで、チョーキングも滅多に使わない、そんなスタイルを除いておすすめしない。ん?シュレッドと呼ばれるような速弾きのときだけこのスタイルにしたいって?うん。インペリテリは小指をフルに使うときこんな感じになっているような気がするのだ。

 箒、に例えた弦を押さえる手の形。見たまんまですがアンバランスです。自分の方を向いた4本の指に偏る力のバランスをどこかでとらなければならない。これを5本目の指「親指」でやります。具体的にはネックの裏、自分とは反対向きに伸ばします。最初は吊りそうなほど力がかかるかもしれません。でもそのうち、ほかの4本から無駄な力がとれると、それに応じて親指も楽になります。気がつくと親指がネックの上から見えていたりします。(この辺のメカニズムはやってる本人には分からないのだ。)

 弦の押さえ方にはこれまた余分に意識したほうがよいことがあって、指をブリッジの方向に向けてフレットの根元に当てるような意識で押さえる。はなすときは逆方向で。これができると運指がとても静かになるのだな。音程も安定するんだ。というのは、指をまっすぐおろすってのはとても大変なのだ。どっちかにずれる。すると弦を上か下に引っ張ってしまうのだな。6弦なんかついつい5弦側に引っ張ってしまう。すると音程は微妙ながら高くなるし、弦を離すときに弦が元の位置に戻ろうとして動き、ノイズを出してしまう。ならば、はじめから一番害のない方向に意識しておろしてやろうというのが趣旨。なお、弦を押さえるときはフレット近くを押さえなさい、というのは弦とフレットの接点が安定するから常識。というわけでフレットの根元を目指して、となるのだ。リクエストがあれば書くがチョーキングにもこの方が都合がいい。
 さて、以上を聞いてみなさん悩むと思う。人差し指は自分の方向に向けることができる。中指も可能。薬指も何とかなる。しかし小指はどうするのだ?僕もできません。が、うちの娘は可能だという。小指の中指と接する側で弦を押さえてしまう。不思議だ。こればっかりはどうしようもないです。まあ「できるだけそんな感じで」ってくらいですかね。

 あと、弦を押さえる指は極力弦から離さないという大原則があります。指がバタつかないように、ってね。ところが〜まず言及されないことですが〜指による違いがあります。小指は盛大に動いていいです。薬指も仕方ありません。が、中指は動かない方がよく、人差し指は決して弦から離れてはいけません。(そりゃ離れることはありますが、それくらいのつもりでいてください。)私はこの指による違いを意識することなくやってきたので、トータルでは指の動きは小さいはずですが、人差し指が他の指以上に動くのでとても苦労しました。近年特にその傾向が強くなっていたんだよね。だってさあ、パソコン打つとき、キーボードから一番離れやすい指はなに?人差し指でしょ。ノートパソコンがトラックポイント標準となったのがよくないんだよね。これに触れまいと無意識的に人差し指側をあげてしまう。従ってギタリストはトラックポイントを使ってはいけないのです。

 というわけでひととおり説明した後でエクササイズ。例によってギター構えて、フレットハンド側の肘を軽く吊って(外観上は「肘を張る」のだが、そうすると力を入れるイメージになるのでこの表現/肘を肩からの腱の上に置く、って言いたいがまだそこまで極めてません)、手首をまっすぐ伸ばして指の付け根の関節を軽く曲げ、そのまま1,2,3弦に人差し指を当てます。押さえちゃだめよ。3弦は指先が触れる程度。  僕の場合、このとき人差し指は7フレットあたりなので、+2フレットを薬指で押さえます。弦はピッキング練習で使ったのと同じ2弦。押さえる方向、ブリッジに向けてフレットの根元をめがけて、忘れないでね。中指は3or4弦の上にでも置いといて。弦に触れるけど押さえちゃダメよ。  この状態でピックハンドで弦をはじく。ブラボー。すばらしい。では今日はここまで。

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