プレ・クロマチック11.自分が下手だと分かる方法

 第10講で紹介したロング・ロング・アゴー。指板上への展開は、「100個のフレーズを覚えるだけでギターが飛躍的に上手くなる本」でいちむらまさきさんが載せていたのと同じです。著作権がどうだとか言わないでね。あのタブ譜に何の独創性もないから。最初に練習する曲としたのは借用と言われても仕方ないけど、うちの娘がバイオリンの発表会で最初に弾いた曲だから、これも普通と言えば普通。でも知らないふりをしているわけではないと言うことで、書名と著者名くらいは紹介しておく。いい本だよ。なじみのあるメロディーを使うことで「曲を覚える」という負担を減らして、徐々に使える音を増やしているなんていい着眼点だと思う。つい宣伝までしてしまった。
 で、更なる宣伝なのだがこの本のレッスン002がなかなかよかった。今回は独創性を認めてもいい。下手だと読者が落ち込まないように粗が目立つ部分をミュートで隠させるところだ。皮肉じゃないよ。読者を切り捨てないというのは大事なことだ。しかし、当方の場合は基礎をきちんとつけることを目標として講座を作っているので、この独創性は排除します。自分の下手なところとキッチリ対峙していただきます。

 バリエーションとしては簡単だ。ロング・ロング・アゴーの4分音符を8分×2に置き換えて弾くわけだ。次に4分音符を16分音符×4に分解、8分音符も16分音符×2と細分化して弾いているのだ。バイオリンの初習者もきらきら星でやらされる定番の練習だ。ギターではこのいちむらさんが紹介したくらいしか知らないのだが。
 というわけで弾いてみて?ドドドレ/ミミミファ/ソソラソ/ミミミミ/ソソファミ/レレレレ/ファファミレ/ドドドド。そうそうその調子、では16分に行こう。
 ドドドド・ドドレレ・ミミミミ・ミミファファ・ソソソソ・ララソソ・ミミミミ・ミミミミ、きちんとこう弾けた人は上手です。もう教えることはありません。多分レからミに行くとことかでピッキングが乱れてテンポが狂い、ファからミに移るところで音がボソッとなるときがあると思うのよ(中指ってやっぱり長いのよ)。つまり、ピッキングは弦移動でテンポをキープできず、フィンガリングは音を伸ばすべき最後の瞬間まで持ちこたえてなかったってことなんだよね。で、がんばって持ちこたえさせると次の音の頭が遅れたりする。ここで「右手と左手を同時に動かす」の重要性が再認識できると思います。
 いちむらさんの本は、16分になるとブリッジミュートさせるから、両手がずれてんのが分からないんだわ。はっきり言って模範演奏自身妖しい箇所があるし。(誤字はわざとです。)

 僕自身練習して、多少上手になったと思ったところでうちのガキのチェックが入った。ダウンとアップで音が違うのだそうだ。ところが対処として単純に音の強さを揃えたのでは駄目なんだなあ。もう「脳」が8分をどう捉えているかの問題です。強さだけなら、どっちかが強くて問題ではないのだ。拍の表が強くて当たり前なのだから。うちのガキは貧弱ながら一応音楽教育を受けているのでその辺は分かっている。が国語力が貧困なので上手くいえないようだ。「かき混ぜているような音がする」(ちなみにサークルピッキングで弾くと「あわ立てているような音がする」と表現する〜一応ニョーボにお菓子作りの手ほどきは受けております)そうな。ふと気がついて、ピッキングするつもりで紙の上で鉛筆をふり、紙に残った軌跡をみると(目を瞑ってふり、その間じわじわと紙を引っ張ってもらった)、ダウンからアップに移るときとアップからダウンに移るときの線の形が違っているんだな。ダウンからアップに移るときの方が「丸い」。この分、わずかに裏拍が遅れてくるわけだ。これを「ダウンとアップの音の違い」と表現したようだ。言われてみれば納得する。で、確かにうちのガキのバイオリンに合わせて弾くと16分の譜割が均等になるのだな。もっともピッキングの達人は「紙の上で鉛筆を動かしてそれが一本の線になるというのがおかしい」と言うかもしれない。

 というわけで、しばらくこのまま練習してください。弦を押さえて弾く、という基本中の基本がどんなに大変か分かると思う。ここで「ピアノはいいなあ、鍵盤を叩くというワンアクションで音が出るから」と思った方がいたら、転向するの止めません。向き不向きはあるからね。
 で、そろそろ分かると思うけど、左右で「弦を押さえる」「はじく」という別々の動作を行い、かつ「同時に」やらないといけないギターという楽器は「速く弾くには向いてません」。速弾きにあこがれたりすると思いますが、元々向いてない楽器なんです。
 ショパンの幻想即興曲、小学校4年生で弾いている、なんて例、決して珍しくないけども、ギターであの速度を出そうとすると大変です。ギネス記録を持つほどのギター教師、加茂フミヨシさんも生き恥を晒しながら弾いてます。この人鍵盤弾けるから、自分が生き恥晒しているって自覚あるんだよな。でもギターで弾く、理由は本人曰く「ギターの速弾きは熱い」から。私こういう人大好きです。

 ちなみに速弾きには「心臓の壁」「足の壁」「耳の壁」という3つの壁があって・・・ 全部僕の造語です。でも速弾き講座をすることはないだろうな。僕下手だから。リクエストがあれば「何故下手か」くらいは説明します。生き恥晒しながらね。生き恥レベルでよければ、バッハの平均律クラヴィーア第1巻、ハ短調プレリュードの前半をMM.208で弾けたりするのだな。多分それなりに音は出ているはずだと。。。これが耳の壁。この速度になると出している音を聞きながら弾くということが反射神経の関係でできないのだ。だから何を弾いているか分からずに弾いている。恐らくピアノであれば指先の感覚で弾いていることが自覚できるのだろうが、左右のタイミングが必須のギターでは無理。多分無理。では皆さんどうやっているかというと。。。

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