プレ・クロマチック13.初心者向けギター

 テレビのワンクールって13回なの?
 あ、「けいおん!」が12回で終わって13回目が番外編だったのでてっきり12回だと思っていた。というわけで番外編はやっちゃったから、第0回目に書くべきだったかもしれないことを。つまり初心者が持つべきギターです。

 本稿は初学者を対象に書いていたのであるが、当方ストラトとレスポールしか持っておらず、初心者向けと自分では思っているPRSのSEやテレキャスターを持っていないという問題点があった。
 そこで、買いました。テレキャス。いやさあ、最低月一度の御茶ノ水回遊で、いつもと違う店に入ったのよ。去年だったかアッシュ材のものが入荷しなくなってきたってのを柏の新星堂で聞いて、確かにそうだなあと注意して見てはいたの。今年も後半になって急にアッシュが増えてきたが確かに「木目がなんか違う」。あ、ぼくさー、子どものときに製材所が多い地域に住んでいて、材木置き場で遊んでなんかいたから結構木目わかんだな。そんなわけで「代用品が出てきたってことはアッシュは本当に無いんだ」とアッシュ材のギターをなんとなく探してたわけ。で、今度はテレキャスターが欲しいな、と。やっぱりCDとか聞く限り音がいいんだ。ジミー・ペイジはここぞと言うときはテレキャスだしね。それに弾き手の個性を良く反映してくれる。是非弾きこなしたいなと。テレキャスの立ち上がりの良さはアッシュ、ってイメージもあったしね。で、アッシュのテレキャスはチェックしてたのだ。
 少子化が反映してか、通販が普及してか、LM楽器の店って減ったね。実家に戻ると市内に2軒くらいだぞ。50万都市の仲間入りかというのに。これが例えばフルートだと定年を迎えた段階の世代の老後の趣味、として逆に売上げが上がるなんてことも考えられるけどね〜彼ら経済的に余裕あるし。それを考えると気軽に御茶ノ水に寄れる私は恵まれているんだろうなあ。でも、寄り易いように居を構えたってところはあるんだぞ。それでも納得のいくギターにはめぐり会えなかったんだな。まあ高いの買う金もないけど。要するにだなあ、楽器の方からおいでおいでしてくれて、弾くと「一緒に音楽やろうぜ」ってメッセージを送ってくれる奴がいなかったのよ。1回Crewsがおいでおいでしてくれたのだが、握ると「うーん、ちょっと考え直さない?」だったので却下(された)。が、今回は違ったのだ。
 例によって中古だが(ピックガードに若干の傷はあるがとっても綺麗)、キンキラキンで色が気に入らないが(でも落ち着いてますが)、ブリッジは3つ独立だが(でも回転機構を入れているので6弦全部の調整が可能)、ブリッジ周りは弁当箱スタイルだが(でも一部切れ込みは入れてくれている)、フロントピックアップはピックガード取り付けだが、間違いなく手招きしてくれた。音出して思わずアンプのリバーブが入ってないか確認しました。見れば見るほどつくりが細かくて丁寧。あ、メーカー言うの忘れたね、momoseです。 こいつが88,000.-。これは安い。弾くと手になじむってのはこういうことか、あのね、指が明らかに他のギターより広がるんです。
 週末挟んで悩んで、買いに行きました。その店でいつもの弦を買って、交換してもらって、調整しなおしてもらいました。もうとにかく早く持って帰って弾きたくて、こんなどきどきする買物何年ぶりだろう。ちなみにギターがおいでおいでしてくれて、一緒にやろうといってくれたのは20年ぶりです。いやあ神田明神に寄ってよかった。ご利益だ。なんかあの日は力がグーッと自分に流れ込むような気がしたのだな。

 ちょっと恥ずかしいことですが、買いに行くときはギターのペットネームまで決まっておりました。なんつうワクワク感でしょう。テレキャスタータイプなのだが、フェンダー製ではないので登録商標では呼べない。ということで愛称の「テリー」をもらう。金色なので、「テリー・ゴールド」。ピックなどのギターアクセサリを作っている「Terry Gould」のもじりともなってます。

 ドッキドキー、でお持ち帰り。待っていたのは定期テストを控えた娘でありました。でも音を聞いてもらったよ。多分お前も気に入る音だ、裏返りにくいんだ、ってね。帰ってきた冷たい台詞。
「誰が弾いても裏返らない音だねえ。」

 結論。
 初心者には絶対のお勧めです。momoseのテレキャス。

 理由は繰り返しになるけど、

1.フラットトップでストロークの軌道がとりやすい。
ボディの前面が基準面となるので動かしやすいのだ。
2.ブリッジ周りに邪魔するものが少なくピッキングの自由度が高い。
ボリュームノブ、トレモロアーム、テールピースなどは無いほうが楽。
3.チューニングがしやすい。
トレモロが無い上にマグナムロックで弦交換が楽。
4.コイツはネックと指板が同一素材で、不要な振動が指先に撥ね返らない。
指板の振動が大きいと、それを押さえつけようとして指先に余分な力を入れるクセがつく。
5.ピッキングニュアンスをそれなりに忠実に反映する。
反応のいいギターの方が上手になります。といっても「誰が弾いても音が裏返らない」という娘の台詞のとおり、当方のレスポールのように粗をあげつらうほど反応はよくない。
6.補修部品の種類が多く、入手しやすい。
なんてったって標準的な型ですので。
7.実に丁寧に作っています。多分個体差が少ないでしょう。
弾き比べの出来ない未経験者が選ぶに当たっては「このブランドのこの機種ならどれを買っても大丈夫」ってのは重要でしょう。以前は「FGNなら品質が安定して」なんてのもあったけど、工場が別の廉価版FGNが出回り始めたのでそれこそmomoseかCrewsかって感じになっているのです。
 なお、浮かれて帰った父を冷たく迎えた勉強初心者のうちのガキには、テストを控えているがゆえに拒否できない陰湿な復讐が待っていた。
 この時代、西ヨーロッパ諸国はオスマン・トルコに戦争で歯が立たなかったわけ。イスラム教は戦争に強いように作られた宗教だからね。教科書とかには書いてないけどスペインまでイスラムに占領されていたんだよ。で、西ヨーロッパ諸国はキリスト教に支配されていて、それこそガリレオの「それでも地球は動いている」のように反論は許されなかったのだが、こうも負けてしまうと「教皇の言うことってホンマに正しいんかい?」という疑問が沸いてくるわけ。で、商人たちが強いイスラムに見学に行くと過去のローマ帝国の文化が流れていた。当然本家のイタリアの人たちは思うよなあ。俺たちも昔みたいにやれば強くなれるんじゃないか、って。そこでキリスト教会が破壊した古代ギリシャ・ローマ時代の文化をなぞり始めたわけだ。これがルネサンス、文芸復興だ。
 旧ローマ帝国ならそれでいいけど、帰りうる文化を持たないドイツの人は直接教会を批判しなければならなかったわけ。で、ルターが何か言い出して、つい誘導尋問に引っ掛かって「教会のやり方は間違っている」なんて口を滑らせちゃったそうなんだ。ところがそのつぶやきに「そうだそうだ、よく言った」と民衆が騒いじゃったわけ。これでルターを宗教裁判にかける予定が狂ってしまい、「宗教改革」ってのにつながってしまったんだ。フランス北部でも戻るべきローマ文化が無いって点では同じだよね。だから現在のキリスト教の姿を批判して改革を、ってなったわけだ。カルヴァンの言っているのは(ここでJGの校長先生の説教の紹介とその批判が入る)、教会もキリスト教も自分たちを守ってくれないんだから、自衛しましょうって、そんなことだ。
 こういうプロテスタントが勢力を伸ばしてきた。ローマカトリックは困ってしまうよねえ。信者が減る。つまりお布施が減る。ならばと新しい信者を獲得に入った。丁度発達している貿易船に乗ってね。文字通り渡りに船。さっき言ったようにイスラムが中近東を押さえているから宣教師と荷物は船でアフリカを回らざるを得なかったわけ。大航海時代って奴だ。それで海外に布教する。
 ザビエルが日本に到着したのもこの結果だ。で、実は宣教師というのは、船で着いた先を征服できそうかというスパイの役割もあったんだな。当然日本も調査対象になる。パパの友達の話によるとある宣教師は「日本を征服することは不可能」と書いて送ったらしい。考えてみろ、その時代、いいタイミングで室町幕府が弱体化しきっての戦国時代だ。最盛期は全国に120万人の兵隊がいた。しかも実戦に慣れている。確かにヨーロッパ人には鉄砲がある。たいていの国はこれに対抗できなかった。しかしそのちょっと前に種子島にポルトガル人が漂着して、あっという間に国産化に成功していたのだ。これでは勝てない。その戦争大好き征服当然のヨーロッパも手出しができなかったのがその時代の日本。つまり戦国時代だったわけだ。そこで宣教師たちは布教と貿易に徹したというわけだ。(大軍を派遣すればいいではないか、と聞いてきたので当時の輸送力では無理と説明した。時代は下って幕末の薩英戦争、イギリスは旗艦がラッキーパンチで破損すれば撤退するしかない程度の軍隊しか送れなかっただろ。江戸時代後半のナポレオンによるエジプト遠征ですら3万強だ。地中海を挟んででもこれだから日本までであれば千人単位の軍隊を送れたかどうかも疑わしい。インカ帝国を攻めたのは200人に満たなかったしね。)

 ついでに教えたのが、イスラム教とキリスト教の関係。イスラム教の神とキリスト教の神は人格的には同じ。ユダヤ教、キリスト教の神が最後に使わしたのがマホメットということにしているからね。だからコーランもアダムとイブからはじまるんだよ。そんなわけでイスラム教はユダヤ、キリスト教をある程度尊重しているから無理に征服しようとはしていない。が、神が同じということは「聖地」が同じということなんだ。エルサレムはやはり自分の勢力下におきたい。キリスト教だってそれは同じ。だから聖地争奪戦というのは避けられなかったわけだ。でも戦争ではイスラムに歯が立たないから、エルサレムはとっとと征服された。そこで起こったのが十字軍。これが烏合の衆で・・・。

 実は世界史は不得意教科なので100年単位で時代がずれてるんじゃないかというところはあるが、流れは見事に繋がっている。劣等生なりにまとまったわれながら名講義。途中「最後の晩餐」の構図がルネッサンス以前とどう変わったか、なんて豆知識も入る。これがなぜ陰湿な復讐かって?うちのガキは口に出せないけど感じていると思うんだ。なんでこんなことを今まで教えてくれなかったんだ!きちんと教えてくれれば成績も早く楽に向上していたのに。いやあ、何度も教えようとしたんだが、そのたびごとに逃げたのはお前だろう。

 最後はギターと関係なくなったかな。でもある程度ギターが弾ける人はこの「プレ・クロマチック」を読んで、うちの娘と同じような感想を持ったかもしれない。「なぜ、誰ももっと早く教えてくれなかったんだ」ってね。理由は第一回に書いたとおり。売れないから。だから気づいた私が無料で書いたのだ。で、「プレ・クロマチック」を読んでまどろっこしい、と読み飛ばしちゃった初心者の方も、やがてうちの娘と同じような感想を持つかもしれない。「あのときしっかり聞いとけば良かった。」

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