Coffee Break用ギターアンプ

 騒音(ex:私のギターの音)の出しにくい我が家では、家人がいるときはヘッドフォン必須である。いくら最大出力1Wのアンプとはいえ「音がでかい」。なお、使用ヘッドフォンはいつ吹っ飛んでも惜しくないことを優先に安物。SENHEISERのHD218である。安物とはいえBICカメラにWalkmanを持ち込んで片っ端から試聴させてもらって決めたわけだ。同価格帯でこれが圧倒的に音が良かった。どれくらいいいかというと恐ろしく音にうるさいうちのガキが「許可を得て」借りていく。(普通は勝手に持っていく。断るということは価値を認めているわけだ。)

 こんなこともあって上達のためには真空管必須と言っている私ではあるが寝っこりがりながらでも気楽に使えるギターアンプがほしいなと思っていた。しかしもっと小さいアンプなんてあるのか?あるよ、それは。でも見るからにおもちゃである。先ほどのヘッドフォンの話ではないが、まともな音が出るのは必須条件。それなりに調べた。
 ビビビ、と来たのがこれ。Smoky改。煙草の箱に詰められてSMOKYというアンプが売られているのは知っていたが汎用オペアンプ用ICであるLM386とコンデンサだけというちゃちな回路。あんまりでございます。しかるにこの子はFETのバッファーアンプ付き。トーンコントロールやVolume、GAINもついていて「結構使えそう」。実は回路設計は別の人なんだが、なかなかに評判がいい。そこで作ってみることに決定。
 しかし、私が普通に作るわけがない。入力がいきなり電解コンデンサにつながるのは精神衛生上良くない/信号とシリーズにカーボン抵抗が入るなんて生理的に受け付けない。
 かくして使用部品は徹底的(でもないが)見直された。入力の1μFは言うまでもなくフィルムコンデンサ(Cross-CAP、でかい)になり、信号シリーズは無誘導巻線抵抗(NS-2B、でかくて高い)。そこまで凝らないにしても抵抗はタクマン電子REY抵抗に、コンデンサは信号とシリーズに入るものは無極性電解コンデンサ(MUSE-KZ)、最終の220μFだけは仕方なかったわ。それ以外はMUSE-ES。マイラコンデンサ、セラミックコンデンサなんぞ絶対に使いません。基盤はもちろんガラスエポキシ。ボリュームはコスモスのRV16YN。入力ジャックはスイッチクラフト。それでいて半導体は2SK30AとLM386。合わせてもコンデンサ1個の価格に足らんのではなかろうか。なんつーアンバランス。アンバランス大いに結構、それこそがマニアということ(after長岡鉄男)。あ、線材はダイエイです。19芯にしときゃあよかったな。

 製作技術は落ちたね。ハンダが半球形に決まったのは数カ所だ。基盤の写真は恥ずかしくて載せられません。下手な上に不恰好なのだ。なぜなら、部品が標準品より一回り以上でかい。かなり無理して詰め込んだのである。
 ジャックの端子構成がお店で伺ったのと少々違っており、結構悩んだ。プラグの抜き差しで電源OFF/ONを切り替える野望は潰えた。ボタンスイッチで押し込んだときはON、もう一度押すとOFFになる、というのを探したが、無いんですな。どうしようとまた探しに行って、さすが秋葉原、見つかりました。

 組み上げて、音を出します。とりあえずスピーカーは手持ちのFOSTEX FE-83を使用。音は出ました。すっごく小さい音。ギターアンプっぽい音ですが迫力不足は否めない。試しにFOSTEX FE-208Sに繋ぐとでかい音が出ます。アンプの出力もありますが、これはスピーカーの能率の問題ですね。ということで後は組み込むだけ。

 さて、いつものことながら問題となるのはケースです。このような手作り小型アンプの場合「100円ショップで見つけた◯◯」というのが定番。というわけで私も100円ショップを探しました。が、よさそうなのがない。いかにも流用しました、というありきたりなタッパー風シェイプ、シースルーで汚く見えそうだし、が嫌なのです。が、見つかりました。
 ただし加工というか部品取り付けが大変そう。でも1.かわいい、2.バッフル(スピーカーを付ける板)が付いている。となると心が動く。それではこれは何でしょう?コップです。ピクニック用品のところにあったストローを指すことが前提であるため蓋の付いているコップです。ティータイムにはちょっとですが、麦茶やウーロン茶ならOK。いや、そこまでしてTeaTimeにこだわることはない。CoffeeBreak用で十分だろう。私元々コーヒー党だし。この蓋にスピーカーユニットを付ける。ユニットが上を向きますがメリットがないわけではない。
 スピーカーが空気を押し出すときに反作用でスピーカーが動きます。これで立ち上がりが一聴して分かる程度には悪くなります。ユニットが上向きの場合、スピーカーは床に押し付けられることになり、動きませんから立ち上がりの悪さを招くことはない。それに床にポンと置いて弾くことを考えると音が上に出てくるのは正解です。コーンが上に上がるときと下がるときの重力の差に影響を受けるが、まあこれは「重力波歪」という「量子論をギターアンプに適用し、f分の1揺らぎについて解いたときに得られるナチュラルな歪」とでも言っておきましょう。自分で書いていて恥ずかしくなった。
 また材質がポリプロピレン。これは内部損失が大きいので箱の固有音がしにくい。もともと丈夫だしね。内部が円筒形なのは定在波を生みまくる可能性はありますが、多分配線、基盤、ボリューム,およびユニット自身で適当に凹凸ができるから大丈夫でしょう。それとね。コップだから取っ手が付いているんです。このメリットは後で言いますね。問題は曲面に部品を取り付けること。隙間ができたらパテを詰め込むつもりでこれも購入。

 しかし、ここで問題。コップの口が小さくて、FE-83はとてもじゃないが付きません。まあそうでなくてもマグネットがでかいから使いづらいのですがね。そこで候補となるユニットを探しました。2インチユニットになります。普通に売っているのはおもちゃに使われるのと大して変わらないようなもの。でもパソコンの外付けスピーカーを意識してか、少しずつラインアップがそろってきたようです。ギターアンプの雄、マーシャルと同じセレッションを見つけて心が動きましたが思いとどまって、このクラスでは意外なほど低音がでるという噂のPeerless830970。しかし問題が。秋葉原に売っていない。これは結構プライドに関わる。私が秋葉原で見つけられないものがあるわけない!という変な意地です。が、年齢相応に丸くなったということでしょう。とっとと通信販売で申し込みました。
 音出ししました。口径は1インチ小さいですがヘタったまま20年放置していたFE-83より良いかもしれない。噂通り低音が結構出ます。試しに取り付けて、ケースも加工のうえ仮組みして鳴らしました。いいです。十分使えます。どれくらいいいかというと、聞いていたうちの娘がまたやって来ました。「今、3和音を弾いたけど、6弦と5弦の音が鳴り出す間隔が5弦と4弦の音の鳴り出す間隔よりも長い」たしかにその傾向はあるかもしれないが、それでも普通の人よりはストロークの動き速いと思うがなあ、、、とまあそれが聞き取れる程度には分離が良いということだ。ついでに今使っているピックの音は良くない、と全部のピックを持ってこさされて、比べてくれました。ベストはESPのティアドロップ、ミディアムらしい。分からなくもないです。でも少しは僕のこと持ち上げてくれたんですよ。「音が裏返らなくなったから、他のことが気になるようになった。」これでも本人褒めてるつもり。

 デザイン。悪く無いでしょ。取っ手を左手で持ちます。ジャックを抜き差しするときに本体を押さえることができるからね。ジャックがえらく下にあるのは安定性を考えて。そして、取っ手を持った状態から左手親指で電源をON/OFFしやすいような位置にスイッチ(赤い丸)をつけました。設計者は得意げに見せましたがガキに言わせますと「色が良くない。不味い抹茶の色だ。」
 ケース加工は、そういえば買ってたなあ、のリーマーが役だってくれました。湾曲した側面に部品を付けますが、埋めなきゃなんないほどの隙間は出来ませんでした。あとで知り合いの工業デザイナーに見せに行こう。史上最高の醤油差し、15度の角度を発見した人です。

 というわけで現在完成目前。あとはスピーカーユニットをハンダ付けすれば完成です。とりあえずワニ口クリップで接続して使っている。なぜ付けてないか、ですが「エージングしてないから」。振動するものは振動に慣らさないといい音で鳴ってくれないのですな。そこでスピーカーならオーディオアンプにつないで鳴らしてやります。普通のステレオであれば、完成させてから適当に鳴らしこんでいけます。聞かない時でもBGM的に音楽を流せばいいのです。しかしこいつはギターアンプなので鳴らすためにはこっちがギターを弾き続ける必要がある。これはキツイ。それにギターの音だけに慣らすのもなんだなあ、ということで使っていないときはパソコンを音源としたDigiFiの付録のOlasonicのディジタルアンプに繋ぎ、foobar2000でVAN HALENやLed Zeppelinを鳴らしてやります。なぜfoobar2000かというと設定でモノラル再生ができるからよ。またこのユニット、アルミ振動板だからエージングに時間がかかりそうだ。でもさあアルミ振動板、ゴムエッジというのはメリット大。前述のようにユニットが上向いてますからホコリが溜まる。紙の振動板だと掃除がしにくいではないか。

 ところで、今、なんとなくやりたいのは「同じ物を普通の部品で作ったらどんな音になるか?」こいつの部品代、高品質を買い集めたから7000円を越えたのよ。安売りのPignoseなら買えてしまう。同じ回路、同じケースを安物とはいわないが、それなりの部品で作ったら、半額以下になりそうだけど音はどうなるの?というのは気になる。
 うちの子が「夏休みの自由研究どうしよう」なんて言い出したらぜひ作ってやろう。

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