いつの時代も「入門者用の曲」というのはあるのだが、今バンドやっている子には「女々しくて」あたりが人気なのかなあ。ギターマガジンの今月号も初心者用の曲として取り上げている。そういえばウチのガキも念願のバンドをはじめ、来月の初ライブが「女々しくて」なんだそうだ。聞いてみたが山口百恵が歌うと歌詞を除いて似合いそうだ。音楽ネタ、目次へなわけでネット掲示板には「軽音楽部に入りました。女々しくて、をやりたいのですが、7月に間に合うでしょうか」「楽譜はどこでダウンロード出来ますか」などというマヌケな質問が溢れることになる。でもウチのガキはそんなこと言ったことないぞ。
去年の末にバンドやりたいとか言い出して、本格的に練習したのは春休みから(ちょっとフライイング)なのだが、楽譜は部が持っていて貸してもらっている。(要するに本の貸し借りと同じで、きちんと出版された楽譜を借りてくるだけなら著作権がどうのとは言われない。)
新入部員への指導が追いつかないのは、地域の楽器店にお願いして、講師の人を呼んでもらい同じ楽器の人でグループレッスンを受けた。
多くの軽音楽部はバンドを組んでその中で楽器の分担を決めているようだが、楽器を最初に決めて、はじめのうちは楽器単位のグループで練習しているみたいだ。バンド演奏はその後である。部としても早く弾けるようになってほしいから、それを考えるとこんな練習形態のほうが合理的なんだろうね。
ただし、最初がこれだと他の楽器の音を聞く習慣がつきにくいだろうと思ったら、そうでもないようだ。まずはおそろいのTシャツを作ったのが利いているのかな。(放課後ティータイムみたいだ。)楽器に分かれて練習している段階でも、こういうことをやってチームワークを醸成するって考え方なのかな。
楽器も今のところ部が持っているのを貸してもらっている。落ち着いてきたらまあある程度のものを張りこまないといけないんだろうな。
(さっきの楽器店が協力してくれたのも、将来のお客さんを育てるためかも。)かなり至れり尽くせりだと思う。しかし部費が高い。払うのは親・・・まあこれで学校生活が充実してくれればいいかと割り切っている。
さて、上記の文章、一つもウソは書いていないが、確実に誤解を招くだろうなと思っている。
楽器の修得は時間のかかる行為で初めのうちは基礎練習、それを2,3年ってのが普通です。ピアノ始めてプロがリサイタルで弾いてもおかしくないような曲を弾くのに何年かかる?それを考えると、軽音楽部に入部して、卒業までに人前に立てるレベルになれば御の字、というのが常識的な発想といってもいいのではないかな。始めたばかりで、秋の文化祭に間に合うでしょうか?なんて聞かれても「あほかおのれは」と鼻で笑われるのが落ちである。しかし現実問題としてそんな悠長なことをやってられない場合もある。促成栽培が必須な分野だ。そしてうちの娘はその促成栽培がおそらくは最も強力に必要な部活に入ったのだ。
小学校のブラスバンド部である。本来的には卒業までひたすら基礎練習が望ましいのかもしれない。が、そんなところ誰が入部する。小学校4年生にやる気を与え、いきなり全国大会!なんてのを目指すのだ。すぐに手応えを感じさせる必要がある。1年程度で誰もが形になり、手近な目標に到達し、全国大会なんてとこまで視野に入れさせる。かなり大変だ。うちの子の学校凄いよ。全国制覇もやったし、小中学校合同のコンクールで2位になったりとかね。小学生は圧倒的に不利なのだ。肺活量を考えてみてよ。
ここ2,3年低迷しているが、それでもオーディションに受かって「近所の遊園地で演奏する」くらいの目標はキッチリあるのだ。一生の思い出になるだろうね。そんでもって日本一を目指してほしいもの。うらやましい限りだ。一生のうちで日本一を目指せる機会なんてそうそうあるもんじゃない。おっとこれは余談。しかし、小学生が幻想交響曲全曲やったのは驚愕を通り越して呆然となった。最初、わざと誤解を与える書き方をしたのは軽音楽部でバンドを組む初心者の方々に促成で上手くなるためには、こういうノウハウが溜まっているんだぞ、って紹介をしたかったから。こういう小学生を見ると自分たちは何をやっているのだろうか、って反省して欲しいところもあるし、バンドつくるならまず何年も練習して個人で弾けるようになってという正論に対して、こんなゲリラ的な手法もあるよ、ってのも言いたかった。
バンド分けを決める前に、楽器分けをして、ベース担当だけ集まって一緒に練習していたら競争心も湧くだろうし、うまくなりそうな気がしない?で、ある程度形になったところで「バンド組め」となれば当然上手い人のところにオファーが集まる。そのとき誰か声をかけてくれるか?かなりのプレッシャーだぞ。
コンクールがあるわけじゃないし、そんなんじゃ楽しくない、って思うかもしれないけど、その程度の厳しさもなくて楽しいの?
うちの子の場合、適性がどうかもよく分からずアンサンブルの都合で担当楽器を振り分けられて不満そうだったけどね。それは家庭でフォローした。ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のフーガ聞かせたんだよ。一度ハープが入る所で落ち着いて、弦が徐々に盛り上がった頂点でホルンが主題を吹き始めるところ(ここの14分8秒あたりから聴いてみるとわかる)は身震いするほどカッコイイぞ。もっとも本人はローエングリン第3幕への前奏曲で納得したようだ。普通は花のワルツあたりが効くものなのだが。パート練習に凝り固まって、他の楽器を聞かなくなるおそれがあるので肩たたきをやってもらった。(「凝り固まる」←「肩たたき」は縁語のつもり。)ブラスは楽器ごとに楽譜の調が違うので隣と会話が通じにくく、セクショナリズムに陥りやすいと最近気がつき懸念したのだ。今度演る曲を歌いながら肩叩いてもらった。するとパーカッションがどういうプレイをしているか思い出しながら叩くことになる。更に次の練習の時、お駄賃ほしさに、合奏中、パーカッションがどうやっているかに耳が行く可能性大。すると「和声とバランス」はともかく「テンポとリズム」は合わせられるようになる。そうなればアンサンブルは何とか成り立つ。来月の初ライブ(近所の植物園)が楽しみです。
そうそう「近所の遊園地」隠す必要もないから書いとくけど、ディズニーランドです。
上の子も同じ小学校だったからブラスバンド部の演奏何度も聞いたんだけど、明らかに音楽の得意でなさそうな子が後ろの方で小太鼓を前にスティック1本で構えているんだ。
この子にはうまくなってほしい、とホント応援したくなった。シンデレラ城をバックに演奏するという目標は、小学生には不自然といっていいほどの気迫を生み出していたのだ。