「ピッキングのときは力を抜け。」音楽ネタ、目次へ
つい最近、これが間違いであることを知った。
力を抜いてはいけないのだ。野球の練習で、力が入りすぎるのを自覚させ、きっちりミートするクセをつけるために右打ちの選手に、あえて左で打たせることがある。ギター弾いていてピッキングに迷いが出ていた私は左で素振りをしてみた。あれ?力は抜けないけど、楽だ。
つまり力を抜くと、手首から先がだらっと下がってしまうのだ。全てダウンで4ビート、なんかならこれで問題ないのだろうが、速度が上がると手首から先が下に落ちきる前に上に上げないといけない。したがって落ちている途中で引っ張り上げることになる。急激に方向転換が出来るわけがないから、なんとなくなどんよりとした動きになる。つまり動きにキレが無くなる。当然音にも反映する。逆に上から下へ、のときは嫌でも上で一回止めてトンと落とすものだから音にキレが出てくる。
それに手首の動きを自然落下に合わせているような気分になっても力は入っている。脱力している手首から先を支えるために、肘から手首を固定しないといけないからだ。また自由落下の結果、手のひらが下を向くのを意識的に止めている。
(うちの顔と勘と運だけはいい娘が「力が入りすぎ」「かき混ぜているような音がする」というのはどうやらこういうことだったようだ。)というわけで「力を入れる」ことにした。しかし闇雲に力を入れると、手首が動きにくくなってしまうだけである。そこで考えた。なんで左手の素振りが楽だったのか。理由は「そのときたまたま寝ていた」からだ。
正直言って「教えるの勿体無い」。「どうして今まで誰も教えてくれなかったんだ!不公平だ」って気持ちはあるからね。だが世の中に一人、教えたくなる人ができてしまったので書きます。これをネタにギター教室はじめればお金になるじゃないという意見があるかもしれませんが、そもそも私下手なので生徒が集まりません。(そろそろ出版社から本書いて、の話が来てもおかしくないのだが。)
と、もったいぶったところで、、、じつは全然大したことないのよね。手を軽く握ってペタンと置いたとき、どの位置で安定するかということなのだ。一つは、中指が腕の軸と平行になる時(スタイル1)。もう一つは手刀部分が平行になる時(スタイル2)。実際は親指が平行になるとき(スタイル3)も安定はするのだが、これをやると実動作時は手のひらが重力で落ちはじめているので案外安定しない。これに気がつかないまま脱力のしやすい、スタイル1とスタイル3の間でオルタネイトピッキングを行なっていたわけだ。そんなわけで、ダウンからアップに切り替えるとき、更に落ちようとする力に逆噴射してブレーキをかけ、噴射を続けて連続的にアップに移るという動きになっていたのだ。
というわけで、スタイル2とスタイル1の往復でオルタネイトをすることにした。スタイル2を「上死点」スタイル1を「下死点」とするのである。振幅も小さいので速く弾くときには有利である。「死点」というからには一瞬静止する。音のキレも良くなるぞ。んでもってフォームを確認しているうちに気がついた。上死点で僅かに親指側が浮くのである。(正しくは僅かに浮かせたほうが安定する。)つまり難関であったブリッジミュートがかなりあっさりとできる、さほど無理しなくて済む。
そうなると下死点から上死点に行くときは意識的に手首を返す動きを入れたほうがいいかもしれない。下行きは無意識的に左右の手首の動きに回転が加わるが、上行きは意識しないと発動しない(当社比)。これで更に技術は完成に近づいたのだが、身体的にはとっくにピークを過ぎている身としては悟りに近づく以外の効果はない。そう、精神修養にはギターを弾くことが有効なのだ。さとり世代の皆さん、更なる悟りを開くために、さあ当方の門を叩きましょう。
ウチの娘も「パパの音はお経を読んでいるみたいだ」と評してくれております。そりゃ基礎練習だから。(ストロークの動きはまた別よ。実は似ているんだが。)