モーツァルトを聴くと虫歯にならない(後編)

 あえてだまされてモーツァルトを聴きながら歯磨きしてくれたよい子のみんな! 「あえてだまされる」のは大人の態度だから、よい子というのはないんじゃないかという突っ込みはおいといてくれたまえ。

 さて、なんでモーツァルトを聴きながら歯磨きなんてのを勧めたかというと、一つはリズム感の養成ってことがあるのだ。これは私の例なのだが、16分音符という譜割がとれないのだ。性格的におっとりしていることもあるけど(思考パターンはともかく、性格そのものはのんびりしているのだ)8分しかとれない。16分は元のテンポを倍にして8分でとっているのだ。これはクラシックの曲をシロートが歌う程度であれば特に問題ではない。クラシックに16ビートってのが滅多にないからね。ところがロックでギターなんぞをやっていると致命傷である。ピロリロは弾けても、同じ音価のピロロロは弾けないのだ。具体的にはDeepPurple、Highway Starの16分は弾けても、ずっと遅いSmoke on the waterの16分は弾けない。Highway Starはロングトーンののち、新しいフレーズの頭から16分なので力づくて倍テンポの8分を叩きまくればなんとかなる。がSmoke onthe waterは8分の間に16分が混じる。倍速度にしようにも切り替えが付いてゆかず、リズムがヨレる。ましてや体が付いていくわけがない。
 だから16分が滅多に出てこない(出てきても16分部分が切り出せる)ベースだとノリがよいのに、ギターだとダメダメになるのよね。

 そこで、16分を体に覚えこませる方法が何かないかと考えた。実際のところ、この辺の感覚は高校生になればもう手遅れ(そこまではいかずとも遅い)みたいなのだが、そこを何とか、ということである。
 思いついたのが「はみがき」16分を刻む腕の動きを体の中でも特に感覚の鋭敏な口腔が受け止める。ただし8分の倍ではない明らかな16分に合わせることが必要だ。ここでヘビメタを使うとおそらく口腔を傷つけてしまう。クラシックでもチャルダッシュなら出血必至だろう。自然自然に軽く疾く、歯切れよく体を動かすまごうことなき16分音符の曲。なんとなくモーツァルトが適しているような気はするでしょ。
 それこそK331、トルコ行進曲くらいしか思いつかなかったわけよ。

 でもあの曲ピロリロと弾いてもそれなりに聞ける。だからもっと拍がはっきりしたものがほしい。ディベルトメント1番でもいいんですが、曲は出だしが肝心。半ばあきらめてました。ところが、うちのガキがバイオリンの先生に「速度を上げるにはどうすればよいか」を相談して、教えてもらった曲がよかった。
 それが「ハフナーセレナード第4楽章」です。ガキの課題曲はクライスラーが余分なものをつけてますが。

 これを歯磨きの基本的注意事項とセットで紹介して、歯磨きをすれば体が16分を覚えこむに違いない。CD買ってきて、さっそく実施。2日ほどで手の動きが滑らかになってきた。演奏者はやっぱりパールマンがいいです。(メニューインが原曲を弾いたのを聞きたいのだが、入手は絶望的ですわ。)

 早速、今まで弾けなかった曲が弾けるようになりました、とまではいかない。ただし「リズムがヨレなくなった」んですな。さすがはモーツァルト効果です。

 歯みがきをやれといったのはもう一つ理由があります。歯ブラシを持つ手の力の入り加減。腕は自由に動かせ、かつ柔らかく。手首は小刻みに。これって、ピッキングのとき意識すること、そのものではございませんか?問題は歯みがき時に肩の力を抜きづらいことですが、これはモーツァルト効果に期待しました。力を抜く感覚が、音楽から伝わってくるでしょ。

 そんで空いた手に傘を持て、といったのは、ジョークに見せかけているけど理由はあるぞ。今度はネックを持つ時の力の入り方なんだよ。野球でバットのグリップの感覚を伝えるとき「傘を持った手の感覚を思い出して」という言い方をすることがある。モノをしっかり持ってはいるが、力を入れすぎない感覚を誰もが経験している事象を使ってうまく説明している。(同じように弓道の弓を持つ時も「雨傘を持つように」と教わった。離れのときは「風が吹いて傘が飛ばされるのを止めるときの握る感覚」と教わった。先生はお元気だろうか。)だからネックを力を入れて握りすぎないように、ということで「傘を持つ」感覚を借りてきたわけだ。実際にはネックを握ってギターを固定するわけではないから、そうだね...電車の中で傘を地面につけて、倒れない程度の力でネックを握っているとき、かな。

 つまり(右利きの場合)「左手に傘、右手に歯ブラシ」というのは、ギターを持つ両の手の力の入れ具合を同時に体感させる、ということだったのですわ。

 なるほど、だまされたかいはあった、と納得してくれた良い人はいるかな?

 三連符はどうするかなのだが、三連符に関しては当方、訓練済みなので不要なのだ。(同様にギターのうまい人は、どこかで16ビートを体得済みなので私が先に挙げたような悩みはそもそもない。だから「うまい人の書いた」教本にはそういうことが書いてないのも理解できる。)文化祭で弾くことになった三連アルペジオを練習していると、姉がものすごい形相でやってきて目の前にメトロノームをドン!「私のリズムまで狂わさんといて」。泣きながら練習したおかげでなんとかなってます。でも、ここはお勧めを教えてほしいという人が・・・いるといいなあ。

 やはりモーツァルトから選びたかったのですが、シューベルトの即興曲D899の2番にします。ツィンメルマンの演奏を聞いてすべてが吹っ飛びました。もちろんDVDを買ってきました。
 私が今まで三連符だと思っていたのは、あまりにも奥が浅かった。

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