マイクを作ってみました

 下のガキが吹奏楽部にいる。
 保護者は楽器運びのお手伝いがあるが昨年度は当番以外の日も皆勤。
 ついでに個人の趣味で録音させてもらっていた。
 結構いい感じで録れて、配ってあげたりすると喜ばれ・・・ていると思う。

 ところが3月の卒業演奏会の途中、レコーダーの調子がおかしくなった。
 不自然に電源が落ちる、というデジタル機器の末期にありがちな事象である。肝心な時に、というのもそれっぽい。
 これは買い換えないとな、と思ったが適当な後継機がない。目をつけていたのはあるが外部マイク端子がXLRなので、かなり本格的なマイクを買ってやらないといけない。
 当然コストは跳ね上がる。
 良く考えると、こどもの吹奏楽部。レベル低下が著しいので、招待演奏が減っており録音の機会も少なくなった。消費税も上がったし、で見送ることにしていた。ところが気が付いた。吹奏楽は置いとくとして、上の子のバイオリン発表会ってのもあるなあ。(下の子も弾いてはおるが。)
 そこで目を付けていた機器を改めてみると「安くなっている」。ならば買ってもいいかな。しかしその気になった途端、価格は1万円跳ね上がった。こうなると意地みたいなものが出てくる。絶対安く買ってやる。

 定期的に思い切ったバーゲンをするイケベ楽器は、時々ネットでちょっとした安売りをしてくれる。チェックすると、あ、2万円ポッキリ。プラス消費税あーんど送料だが、圧倒的に安い。というわけで購入。イケベの通販は秋葉原店取扱いだから、そこに行けば送料分節約できるかと思ったが、フツーの店頭価格でしたのでやむを得ず通販。(でもね荷物の発送は秋葉原店でした。次回以降ねじ込もう。送料分節約するのが目的ではない。秋葉原による口実ができるのがうれしいのだ。)ちなみにTEACのDR-100MK2です。

 マイクどうしようか?それなりにアテはあったのだ。作ります。
 自作マイクというと、WM-61Aという一個100円のカプセルを使えばそこそこの高性能マイクができることが有名で、ネットではlinkwitzさんの提唱した方法がポピュラーであったのだが、DR-100MK2はプラグインパワーに対応していない。
 なーんか方法ないかなあ、と探していたら、Shinさんという人がファンタム電源を使ったマイク回路をいくつか発表している。linkwitzさんほどの追随者はいないと思うが、この人の文体は信用できた。しかし超絶的器用さを要求されるところに浅学者お断り感が満載である。トランジスタも入手が難しそうだし。。。だったのだが、この人、今年に入って抵抗とコンデンサだけの回路を発表してくれた。これなら私にも作れそう、というか作れるようなものにアレンジ可能。

 とはいえプリント基板のデザインノウハウが全くない私は、うまく収めることができない。だってこの人XLRのジャックに回路を納めることを前提としてますのですよ。
 そこで、私は考えた。浅学なりにシンプルなことは考えられる。
 つまり「入れ物を大きくすればいいのだ」。プライドというものがまるでない浅学者ならではのまんまな発想である。が、この方向に迷わず進めるのが浅学者でもある。
 ケースは何にしよう。周りを金属の網で囲っているので多分それなりにシールド効果はありそうな「茶こし」。(これもShinさんの示唆。)そういえば当方地の利がある。IKEAに理想的なフォルムのものが見つかった。しかもたったの99円である。買いに行ったついでに100円ホットドッグ。
 基板に収めることはともかく諦めよう。とするとあれしかない。おお、片側3Pのラグ板ってまだ売っているのだ。これでもでかすぎて入りきらないなあ。端っこを削り落とす。足も曲げないとだめだな。しかしここで曲げる角度を変えると、交差する部品が空中で衝突しないという効果も得られる。

 何に苦労したって、WM-61Aのグラウンドへの半田付け。できるようにはなったのだが、強度が弱すぎ、引っ張ると外れる。エポキシ接着剤で固めたつもりなんだが。
 なわけで、安いが貴重なマイクカプセルが次々と犠牲に。最後にはついに銅線をマイクカプセルのケースにくっつける羽目になった。

 マイクとラグ板の間に円形に切り取ったコルクを挟んでこれを茶こしに接着して固定。
 コルク円盤は、部品の固定以外にも、無指向性のマイクカプセルが多少の指向性を持って音をとらえてくれるように、という願いもあって付けてある。とても素人な考えだが、セッティングを考えると左右の間隔はあまり取れないからね。
 ありゃ、茶こしの金網とラグ板につけた部品の絶縁、考えてなかった。とりあえずティッシュペーパーを挟んで、動くかどうか確認。結構ノイズひどいや。
 ギャッ、さっきの接着剤が固まりきってなかった。ティッシュ程度ならくっついちゃうんだ。
 かくしてものすごく恥ずかしい外観になった。

 これをどうやってマイク台に固定しよう。そもそもマイク台もないのに。
 ほーっほっほ、何とかなるものよ。

 高校野球地方大会には間に合わなかったが、近所の商店街のお祭りには間に合った。
 なので持って行きました。まずは接続確認を兼ねて音を聞いてみる。
 電源が電池なせいだろうか、ノイズは嘘のように消えた。
 恐ろしく細かい音まで入っている。ひょっとして使い物になるかもしれない。
 出来ればもうけもの、とあまり期待してなかったが、間違いだったようだ。

 こんなことなら、もう少し丁寧に作っておくのだった。  マイクカプセルの半田付けがむりやりこなので、左右のレベルかなり違うし。

 おうちで聞き返してびっくり。さすがに高域は落ちているが私はすごいことをやってしまったのかも。空気感までしっかりとらえている。マイクは必ずレコーダーの近くに置かねばならない、という制限は不可避なので、XLRコネクタまでのシールド線の距離をわずか30センチまで短くしたのがそれなりに効いているかも。
 なんかあったらパパを笑ってやろうと手ぐすね引いていた2人の娘すら感心していた。

 となると、やっつけ仕事で作ったマイクでさえこうなんだから、
「丁寧に作るとどうなるか」ですな。
 俄然気合が入ってきた。部品も少し見直そう。マイク信号のレベルは低いから、吟味のし甲斐があるというものです。

 というわけで、吹奏楽部の娘、実験に協力しません?あなたの耳と楽器演奏能力が必要。もちろん「夏休みの自由研究」のネタにしてよいから。
(つづく)

 自由研究のネタはすでに決まっていたそうです。「水素爆発」だとか。ニョーボの出た大学の子供向け公開講座に参加したので、その時に印象深かった実験なんだそうな。
(つづくかどうかわからない)

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