製作能力限界超え?ナマロクマイク3号機

 ダメモトで作ったナマロク用マイクが結構いい音だったので、いろいろと気合を入れて作り直したわけだが、活躍の舞台がなくて欲求不満であったのは前回書いた通り。

 そんなとき、近所で夏のイベントとして駅前コンサートをやるという情報を聞きつけた(平たく言うと駅のポスターに書いてあった)。鉄道会社主催で沿線の高校の音楽関係の部が入れ替わりで演奏してゆくというもの。
 一通り道具を抱えて行った。おおやってるやってる。早速マイクをセットして、イヤフォンでモニター。ありゃ、あまりよくないなあ。
 少々がっかりしながら、演奏を聴くと・・・おいおいおい、この高校の演奏「マイクで拾ってスピーカーから出している!」でした。それなりの人数の吹奏楽部でこれはかなり恥ずかしいのではなかろうか。そういえばカメラマンはレンズを通してこそ気がつくことがあるらしい。私の場合もマイクとヘッドフォンがあるから気がつくことがある、ってことだろうか。
 というわけで目の前の人たちはスルーして「トリ」の演奏を待つ。日本一の激戦区で県代表になるのだ。うまくないわけがないし、もちろんアンプなんぞ使うわけがない。希望的観測かとおもったが気合の入ったアンサンブルを当たり前のように生音でご提供いただいた。
 おかげで自分の腕と経験の不足を気にかけなければ納得できる音で録れた。じつは強引にマイクを三脚に固定したため、左右のマイクの仰角が多少ずれていたのだが、それが反映されているんじゃないか、というくらいしっかりと録れた。すごい性能だ。

 家に帰って編集し、STAXのヘッドフォンで聞いてみたが、その辺の雑誌の付録で「録り下ろしハイレゾ音源」と銘打っているものよりも音の素性がいいのではないかい?確かに「松脂が飛び散る」「演奏者の息遣いが聞こえる」というこれ見よがしなハイファイ感はないのだが、実際に聞こえる音にきわめて近い。オフマイクのくせに音圧もあったりする。うれしさのあまりCDに焼いてその高校に送ったりした。著作権!?会場でビデオが何台も動いてましたからノープロブレムでしょう。「家庭用ビデオカメラは許容範囲だが、お前の録音は質がいいからダメ」って理屈はないよな。万一そのような過分なお言葉をいただいた場合でも勘弁してくれるよう、CDに添えたお手紙に「自作マイクについて興味があるようでしたら部品調達・製作ともお手伝いさせていただきます」って書いておきました。
 でも気になることが一つ。低音の量が超オンマイクのプロ録りとあまり変わらないぞ。

 そこでマイクの回路にあるコンデンサを見ると224。あれ、売り場の札には間違いなく2.2μFと書いてあったのだが。
 そういえば若松通商で買ったのだった。あそこ平気で人をだますんだよね。だまされた私が悪い?(通信販売代金2万円振り込んだが、知らぬ存ぜぬを繰り返したりする。やっぱり物を買うときは顔を合わせないとだめだわ、世の中には注文すら受けられない馬鹿が普通に存在しているんだわ、の授業料としてあきらめてはいるが、、、まあ、こういうところで昔のことを書いても謝られこそすれ、文句を言われる筋合いはない。)
 一応カットオフ周波数を計算すると80Hz程度。悪くはない、というかビッグバンドのPAではミキサーでカットする妥当な線なのだが「設計通りでないというのは気持ち悪い」。チェロの最低音が3dBほど落ちそうだ。なんか作り直したくなってきたなあ。

 それともう一つ。マイクを作ったときの動作確認として、手持ちの安いミキサーで音を聞いてみるのだが、ヘッドアンプでゲインをとったときの感度上昇がものすごく効くのだ。ってことは「多少作りにくくとも、プリアンプをマイク本体に内蔵してみるのは十分に価値があること」かも。
 スイッチが入った。入力インピーダンスが高いのではじめから0.22μFでよいとなると、東信の赤いのを使います。個人の趣味です。2SK30A-GRが2本。抵抗が9本。設計者が想定していないサイズのコンデンサを使い、これを直径29ミリのボタンに載せる。何度基板レイアウトを書き直したことか。でもギリギリのサイズに収めることに成功。しかし実際の配線は困難を極めた。配線手順は頭の中で何度もシミュレーションしたのだがね。
 アース線を短くするという妙なこだわりがあり(というかアースのために基板の面積を割く余裕がないのだ)、同軸の3芯が基板の端に分散、となり、あれま、網線がショートしかねない位置に。抵抗の足は使わない導線の被覆を使って絶縁しているのだが、真上まではカバーしない。2mmの間隔は十分かもしれないが、いろいろ使っているうちに変形する可能性はある。仕方なく、間にプラパテを詰めて事なきを得てます。
 同軸をつけて再度テストすると今度は音が出ない。半田の角(つの)がノイトリックの外周にくっついてますですか(^^;。え、ついてるように見えますが、これでも接触不良?へとへとになりながらも、配線完了。あとは組み込む、だけなのだが。目分量で平行とって、は神経使います。押さえたまま接着、ってのもうちのガキ手伝ってくれれば楽なのに。ところでアロンアルファって、硬化するのに時間かかるのね。さすがプロ用。
(塩化ビニールを接着する必要があったので、プロ用にせざるを得なかった。)
 当方の工作能力の限界を超えているとしか思えないが、実際、接着部分は例によってみっともないが、どうやら気合で何とかなったようだ。うん。これがきっかけで素晴らしい吹奏楽の演奏を提供してくれた近所の高校の皆さんとお友達になれるといいな・・・ってそんなことが期待できる土地柄でもない。となりの市は高校生が(小)中学校を回って指導し、市全体のレベルアップを組織的に図っているというのに寂しいことである。

 パテとか半田とか、短い電線とか、部品表に出てこないものを含めても、1本1800円くらいで作れんじゃないかな。やはり「電子部品はマイクカプセル内のFETだけ!」の1,2号機に比べて高くなる。

 プリアンプ内蔵第3号機を作り始めた理由はもう一つあって、やはりこれ!活躍の場が見込めたのよ。そういうのが好きな人が知り合いにいて、マイク作ったよ、と吹奏楽の録音を聞いてもらうと、感心してもらえた。そこで「今度弦楽四重奏のサロンコンサートやるんだけど、録音してみないか。」マーケティングの一環かもしれないが、声はすごく喜んでいた。それにチームを組んでからでも20年近い、というプロが演奏するのを録音していい、というのはそんなによくある願ったりかなったり。娘と一緒に行くよ。(娘は嫌がっていたが。)

 あとで演奏者に感想を教えてもらおう。
 音はプリアンプ内蔵型の方が落ち着いていていいと思うのだが、「特性的にはそっちかもしれないけど、私はこっちの方が自分の音に近いと思うなあ」なんて意見が出てくると楽しいではないか。

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