芸術の秋、ハイレゾのこれから

 芸術の秋、というか周囲では音楽発表会シーズンである。
 うちのガキもバイオリンを弾く。これの録音が自作マイクの一つの目的であったわけだ。発表会本番までに満足のゆくものが完成してよかったよかった。

 ところが、上のガキは発表会が連続し、翌日はピアノも弾くという。言われてみれば習っていたねえ。んでもってピアノのお師匠様がバイオリン発表会の時は伴奏してくださるのですから〜バイオリンの師匠とピアノの師匠は近所に住んでいて仲がいい〜ピアノの発表会はパス、というのはありえませんね。まあ下手なのをさらしてらっしゃい。ところで場所はいつものところ?違う。まーあれくらいの人だといろいろつながりはあるからねえ。んでどこ?片道2時間かかるではないか。前回行ったときまっすぐ帰ってこれなかっただろう。電車を間違えてディズニーランドまで行ってしまったのはわざとじゃないとしてもお前大丈夫か?仕方がない、おとうさまが付いて行ってあげよう。もちろん録音機材持って。
 そういえばあなたの師匠はCD何枚か出しているピアニストだったね。月刊ステレオで優秀録音のCDとしてそのうちの1枚が丸々1ページ特集されたというくらいの。それを思うとわくわく。お願いして先生の演奏も録らせてもらおう。発表会丸ごと録音してCDに焼くまで引き受けますから、と申し出ればあの人のことだ、快く許可してくれるだろう。プロの成功した録音と自分のナマロク機器&技術の距離が測れるという願ってもない機会だ。

 おい。待てよ。ハイレゾで録るんだぞ。
 まともなICレコーダーとしては最安値機器とはいえ。
 部品代2000円以下のマイクとはいえ。
 売れっ子とまでは言えない人の演奏とはいえ。
 ネイティブなハイレゾ音源が不足している現代において、私が録音したものはそれなりに需要のあるものになるのではないかな。先生のことだからレコード会社との兼ね合いもあり、自由には動けないだろうが「チャリティ100円。ダウンロード販売」となれば買う人が出てきて何ら変ではない。(よくチャリティ公演やっている人だよ。それに留まらず人格的にも素晴らしい人だ。)

 そういえば「ハイレゾ音源」って少ない。それはあるにはあるが、SONYの紹介ページのトップに「中森明菜ベスト」が出てるってことは、新規録音はものすごーく少ないのだろうね。要するに音楽業界が不況なので新しいものが出せないのだろう。そもそもハイレゾ対応の録音機材は高いらしい。でも本当にそうか?あたしの録音機材、スタンド込みで3万円だぞ。消費税入れるともう少し上だが。
 確かにこれでオーケストラをとろうとすると辛い。ワインポイントの限界があるからね。かなりもやもやとした音になるだろう。しかしながらピアノソロ、伴奏つきバイオリン、弦楽四重奏(←これもプロのサロンコンサートを録音させてもらった)ならそれなりに対応できる。少なくとも「現行のCD程度の音は」出せる。マルチマイクのいかにもなハイファイ感は難しいがな。

 では、各演奏家がそれぞれに録音して配信を・・・と話を持っていけるかというとそうはいかない。たとえば私の姉の演奏を録音したとして(ルックス抜きで)需要があるとは思えない。そこまでクラシック音楽の市場は厚くない。そりゃ、姉の弾く「エリーゼのために」は残しておく価値があると思うけどね。ロンド後半の連打は「これぞベートーベン」である。
 結局、娘の師匠のように、何枚かCDを出していて、地道に活動している人を助けることができれば御の字、程度だろうね。

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