ここんとこ自由研究ネタが続いてつまんない人がいるかもしれない。なるほど、そうすればよかったのか!と納得してくれる人がいてくれるとうれしいんだけどね。仕事の方はまあぼちぼち、ファイルを減らせ!の指令が出たものの、前回の想像を絶する大活躍を誰も覚えてくれてなかったので(皆さんの感想を平均すると、なんかメールが来て、これ消していいか?の一覧があったみたいだけど、ファイルサイズが巨大で、めんどくさいからほっといたらいつの間にか目標クリアしてたねえ)、今回はラスト一週間、皆さんが音を上げるまでツール提供だけにすることにした。まあ切れたリンクだけは洗い出しとくかな。さて、何万個あるだろう。あたし大がかりなこともチマチマしたことも出来るので。でも「できる」ことと「得意」なことはちがうのよ。くれぐれも言っておきますがコンピュータなんてチマチマしたことは苦手です。音楽ネタ、目次へ
というわけで、今回は大きなことに適応しきってしまい、チマチマしたことができなくなった昔の自分のはなし。うちの子の志望校選定で、文化祭めぐりをしている。某アニメ以来、下火になったとはいえ軽音楽部がそこそこ燃えている。んで縁あって行ってみたのだが、
「きゃー、ギターの子美人!」「ボーカルの子かわいい!」「ベースの子スタイル抜群!」「ドラムの子カッコいい!」だったが演奏始まると音しか相手にしてない。へー、ギターの子、うまいわ。コードストローク主体なんだけど、肘がギターから綺麗に浮いていて、腕全体で歯切れよくジャカジャカやっている。少々荒削りなところはあるけども、そこは高校生らしくて好感が持てる。
ところが、単音を弾く段になると(アルペジオはまあまあだったけど)急に音がしょぼくなる。その格差に驚いた。
全体的になんとなく思い当たる節のあるこの人の弾き方、そして音。なーんだ、高校時代の僕にそっくりだ。そういえばこの人さっきアコギ持って歩いてたな。とても言語化できない高速・並列思考の1秒間を経過して当時の僕が下手だった理由が判明した。(今でも下手だけど脳と耳をコミで考えればエフェクターメーカーが専属契約する程度の価値はあるとおもっている。)
「最初にアコギでコードストロークの練習したときの感覚が抜けないんだ。」
大雑把にいうと、ストロークってのはフレットハンドで和音が出るように弦を押さえ、ピックハンドでジャンジャカとすることよ。
弦1本を弾くより6本弾く方が実は難しいのだけど、馴れやすい。というのはギターの場合、1本だけだと「6本ある中から1本」を選択して弾くという手間がかかるのだが、ストロークは「6本丸ごと弾いちゃえばいい」からである。とにかく上から下まで、下から上まで全力。テンポとリズムがあっている限り、そうこう文句を言う人はいない。アコギやると、とくにニューミュージックの場合はそうなのだが、最初にコードフォーム覚えてストロークで弾き語りするのよね。なので歌いながらコードストロークで伴奏。どうしても歌が中心になるからストロークは適当になる、でもそれで恰好がついてしまう。
また力づくでもなんとかなる。思い出せば当方「天国への階段」第三部のバッキングの16分、ミュート部分を全部ダウンで弾いていたような気がする。勢いというのは恐ろしい。今では絶対に不可能な技だ。当時だって弾き終えると血がにじんでいるのも珍しくなかったのだが。
もちろんアクセント、リズムキープ、高音弦/低音弦の強調具合など、ストロークにうまい下手はあるが、ノリに任せて力づくで弾くのもありだったということだ。そしてエレクトリックギターは弦が細い分、アコースティックギターよりもストロークの時の抵抗は少ない、だからエレクトリックに持ち替えると、ものすごく上手くなったように感じる。
ところがエレクトリックでよくある「単音のメロディー弾き」をするようになると、今までの習慣と比較した結果、「弦を一本しか弾いてはいけない」というネガティブな気持になってしまう。腕自体は今まで覚えたままに思い切りよく下、下から上のストロークの動きをしようとするのだが、大きく動こうとする力をあちこちで吸収して対処しようとする。従って動作はかなり遠慮がちなチマチマしたものとなる。手首と腕を逆に動かして動きを吸収することさえする。結果として弦をはじく時のピック先端の速度はかなり遅くなる。これでははっきりとした音が出るわけがない。 このようにピックに込められた運動エネルギーをあちこちに逃がすようになったために、弦にエネルギーがダイレクトに伝わらない。かくして音はしょぼくなる。あるいは、せっかくおおらかに動いていた肩を止め、肘を止め、前腕部を止めて手首だけで弾くようになる。エレキギター教本の多くは単音を弾くとき「肘の動きではなく、手首のスナップを使って弾きましょう」なんてあるのがこの傾向を助長する。手首の位置を固定して弾くのが正しいかのように読み取れるので、前腕部の動きを無理矢理止めようとするわけだ。 というのが高校時代の私だったし、先日文化祭のライブで見た彼女だったわけ。
6本の弦を一度に弾くに比べて、1本の弦だけを弾く動作は確かに小さいけども、だからといって、動こうとする力を減殺したり、手の一部分だけを動かしたりして弾くと、音の抜けが悪くなってしまうわけだ。あくまで腕全体を自由な状態にして、ピックの運動エネルギーを弦にピシッと伝える。これが大事。だからピッキング自体は、ベースの子の方がうまかった。弦の間隔が広いので、手首でチマチマするわけにはいかず、つまり動きを減殺するわけにはいかず、肘から、肩から、腕全体を動かしておおらかに弾く。弦も太いので運動エネルギーをきっちり伝えないと鳴らない、そうやっているのが見て取れる。(はっきり言ってギターの子、びっくりするほどいい楽器使ってたのよ。だから反応がいいので触れればそれなりの音が出るのよね。なので音のしょぼさが気にならなかったのかもしれない。)
じゃあどうするか、は当方が従来積み上げてきたメソッドの通り。あんなきれいな子でなければ直接教えてあげたいのだが、ルックスも兼ね備えたガールズバンドだとこちらも遠慮しちゃってね。
今回は「アコギから入ると単音がしょぼくなる理由(だからアコギでも単音から入った方がいいのよ)」が言語化出来たことで良しとしておこう。ちなみに、ストロークのまま単音弾きに移行するという道もあるようで、メソッドは確立されてなさそうだが実例はある。
例えば「ふなふなふなっしー」のPVで見られる高見沢俊彦。
あるいはGod Knows...のイントロを弾く長門有希。なお、自由研究ネタ、あと一つだけあります。これであなたも紀貫之の心に触れることができます。もう宿題の短歌に悩むことはありません。