ハイレゾで、ばれちゃった

 久しぶりにONKYOショールームに行くと、私の好きな「響け!ユーフォニアム」の主題歌その他ハイレゾ配信版を聞かせてくれるじゃないか。
 感謝して聞かせていただきましたが、ん?主題歌「DREAM SOLISTER(劇場版)」のボーカルがずいぶん引っ込んでいる。いくら私の耳が弱ったとはいえ、このくらいのことは自信を持って判断できる。吹奏楽がテーマということでバックが生楽器ってのが影響しているのだろう。つまりCDフォーマットに比べて高音がオクターブ以上伸びたハイレゾ録音では、生楽器の場合、倍音をきっちりと捉えてしまうので相対的にボーカルの倍音が貧弱になってしまうのだろう。

 元々ボーカルの倍音は録音時に貧弱なものとなる傾向は確かにあった。ポピュラーミュージックの分野で支配的なマイクというとシェアーのSM58である。これは元々周波数による感度の差が大きい。中高域はしっかり捕えるが、10KHzを超えると問題外である。なのでそれ以外の楽器が40KHzまで伸びていると、どうしたって高域が弱く、ボーカルが引っ込んで聞えるのはやむを得まい。

 ところがアナログレコード時代、スペック的には謳っていなかったが優秀録音盤は高域が40kHzまで伸びていた。実際、CD−4形式における4チャンネルステレオのLPは意識的に50kHzまでカッティングされており、専用カートリッジでその音を取り出していた。(じつはハイレゾだったのだ。)当方、そのような40kHzまで入ってそうな優秀録音盤をせっせと集め、聞いていたがその時は「ボーカルが引っ込む」なんて気にしなかったものだ。これはなぜ?

 いくつか要因が考えられる。当時はマイクの質が悪く、他の楽器を狙ったものも、同じように高域が落ちていた。とか、優秀録音盤はボーカルにもっといいマイクを使っていた、とか。共通するのは「ボーカルも生楽器も同じような周波数特性のマイクを使っていたからバランスがとれていたのよ」である。ところが高音質のコンデンサマイクが普及して演奏側の録音はどんどん良くなってきたが、その恩恵はボーカルには及ばない。残念ながらずっと周波数特性、特に高域に難のあるダイナミックマイクが主流のままだった。理由ははっきりしている。周波数特性の良いコンデンサマイクは湿気に弱いのだ。呼気をもろに受けるボーカル用マイクにはあまり適していない。なのでダイナミックマイクのまま、進歩が止まったわけだ。(コンデンサマイクも実はあまり進歩していない。例えばNEUMANNのU87の発売開始はいつだっけ。ただしあまりにも高価だったのがどんどん安くなり普及が進んだのは間違いなし。)

 というわけで録音現場では「ボーカルが引っ込む」はかなり以前から起っていたのだろう。ではなぜそれが目立たなかったか。CDという、実は16kHzくらいまでしか満足に再生できないシステムが幅を利かせていたので「高音まで伸びきって録音されていようがいまいが、CDで聴く分にはあまり関係なかった」。こんなところだろう。
 楽器録音とボーカル録音(ただしポピュラー)の技術の差はCDが幅を利かせた30年のうちに人知れず拡大していたこれがハイレゾになってばれちゃった、ってことかな。

 もう一つ、多分ダイナミックマイクでも元の声が良ければ、そこそこしっかり録音されていると思う。(ビートルズはコンデンサでスタジオ録音してますが。)でも耳がCDフォーマットに慣れてしまうと(特にその周波数帯の音しか出さないシンセをバックにしてなんぞいますと)、声を出す方も「こんなもんかな」で成長が止まる傾向にあるのかもね。ようするにハイレゾ、ではなく(悪い言い方をすると)カラオケレベルで止まるってことだ。

 以上、個人の感想です。

 さて、今までガキの発表会、演奏会を録音したときは器楽だけだった。今後歌を入れないといけなくなるかもしれないのだが、まーどーしましょ。

音楽ネタ、目次
ホーム