Led Zeppelinと北原白秋がコラボしたよ

 YouTubeに動画をあげるにあたって、自分の声を録音したのだが「聞き取りにくい」ので結構落ち込んだ。確かにレイテンシを勘でカバーというハンデがあったので仕方ないところはあった。
 そこで今度は声を別録りして編集過程でダビングするつもりで、録音機器を持ち出してきたのだが、やっぱり聞き取りにくい。音節を熟語単位に塊で発音するので、ようするに黙読の要領で発音するので聞き取りにくいようだ。もっと音節ごとに歯切れよく話さないと。

 この欠点をカバーするには普通に心がけて話すくらいではおっつかないと思ったので、いろいろ考えた。内省すると、そもそも当方の「リズムの取り方」がそういう欠点をもっているようだ。ピアノの鍵盤のように「一度叩いて発音、サスティンで音の伸びをキープ」という感覚に乏しく、オルガンのように「押している間、連続音」なわけだ。だから音節を叩きだす日本語の発音とうまく合わないわけ。ギターが下手なのもこういう感覚に原因があり、「ピックではじいて音を出し、フレットを押さえている時間で響きをキープ」でなく「ピックを動かしている間音が出る」という感覚になっていたわけだ。バイオリンに近い感覚なのかな?

 そこで、意識的に特訓しないといけない、と目覚めたはいいが、さあどうしよう。
 これはやはり北島マヤに倣って北原白秋を朗読するコトに決定した。「あめんぼあかいなあいうえお」である。アメンボって赤かったっけ?という疑問挟ませないほど耳アタリの良いフレーズを紡ぎだす北原白秋のセンスを感じさせる名作である。

 私の場合、発音の欠点が音楽的なリズムの取り方、と関連するのを自覚出来たがゆえにプラスアルファで気が付くことがあった。ころんでもただでは起きないめげない子。
 ようするに一音節ごとにタンギングがいるんだな(管楽器的発想)。トランペットの吹き語りは無理だから、ギター弾きながら1音ごとに1音節出してみるか。数年練習してギターを弾くときはそこそこリズムがとれるようになっているし。
 そして出た結論は(なんと唐突)
「Led Zeppelinと北原白秋のコラボ」
である。

 いつものように耳栓代わりにWalkman(アクティブサイレンサー付)を聞きながら、電車の中で北原白秋を黙読(口は多少動いている)していると、妙に相性の良い曲があった。
 最後のアルバム(?)CODAの最終曲「Wearing and Tearing」。
 これがうわさに聞くシンクロニシティか!というくらい合っている。

 北原白秋の詩「五十音」を朗読するにしてはテンポが速いがそれが「これもあり」と思わせる程度です。そんでもってね、「五十音」って詩はリズムが
4、4、5なのよ(あめんぼ あかいな あいうえお)。
決して日本語としてなめらかなリズムではない。普通は和歌の定型、5、7を使うよね。
 これが不気味なほど8ビートにあっている。しかもきっちり裏拍とらせてくれる。北原白秋ってロックなんだ。しかも裏拍にピタリと合わせさせるわけではない。わずかに早めに音節を叩きだすことを要求する。つまり微妙なずれの持つグルーブ感まで醸し出している。なんと北原白秋はLed Zeppelin独特のノリを踏襲するほどのハードロックだったのだ。

 プラントのシャウトが聞こえ始めるにつれて盛り上がり、白秋もクライマックスに突入!
「わいわい わっしょい おまつりだ」。
読み終えた瞬間音楽が変わる。

 最初はロックのリズムで詩を読むからラップのバリエーションになるのかな?と思っていたのよ。
 しかしここまで合うとなるとラップを突き破った先が見えた、これは北原白秋とLed Zeppelinのコラボだ。
 バンドやっていてもバックビートやグルーブ感というのが分からん奴は決して少なくない。そういう輩にはZepに合せて「あめんぼ あかいな」を朗読させるに限る。日本語ってこんなにロックに合うんだ。妙に音節をぶちぎったり、英単語を無理に交ぜなくてもいいってのが素晴らしいではないか。

 さて、知り合いの劇団員に伺いました。舞台での発音をよくするためにラップとか練習することある?やったことないそうだけど、でも即座に「滑舌の練習によさそうですね」という反応。(本人もいろいろ考えていたんだろうな。)

 これから劇団や声優養成学校でZepと白秋のコラボが流行るかも。

(「コラボ」という用語、個人的には使いにくいと思っている。女子校生がケータイの宣伝をしても本来コラボとは言わないだろう。女子高生が考えた使い方と銘打ってケータイの宣伝をしても、それが男子高校生でもOLでも考え付きそうなものである限りコラボとは言えまい。そもそも「消費者の要望反映」でしかない。
 しかし今回はZepしか出せないグルーブ感と白秋ならではの日本語への愛を結びつけたところピッタリと嵌ってしまった、これならコラボと言って差し支えないのではなかろうか。)

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