ギターのネックは「つかむ」もの

 私はギター教本の筆者に良い印象を持っていない。
 通り一遍でないことは教えられないのか。これじゃ印税もらえないだろ。
 もう少し丁寧に説明できないのかね。分かるように書いといてやれよ。
 「内省」という言葉を知っていますか?思い付きをそのまま綴られてもねえ。

 教えるよ、と申し出て聞いてもらえる程度には上手くなった人間へのやっかみが入っていることは否定しない。でも、講師の皆さんも耳が痛いところ、結構あるんじゃないかな。
 しかし私も人のことは言えない。私も去年の半ばまでは見落としていた、というか気が付かなかったことがあったのだ。が、気が付いた途端「教えるのが職業なら、このくらいのこと気づいておけよ!」と言いたくなった。勝手かもしれないが、お前らプロとして恥ずかしくないのか。そう開き直りたくなるほど単純なことだ。
 ネックは「つかむ」ものである。

 ピッキングのやり方についていろいろ考えて、突貫工事で動画をとってアップしたのは以前書いた通り。その解剖学的裏付けが欲しいので姉のダンナ(リハビリテーション専門医)にいろいろと伺った。予習が大変。そのかいあってピックの持ち方としてとてもためになることを教えてもらえた。人間の手がものを持つ方法には4通りあって、「握る」「つかむ」「つまむ」「ひっかける」。分かりやすいのは4つめの「ひっかける」。手提げ袋を文字通りひっかける。「つまむ」はいくつかバリエーションがあるが、ようするに親指と相対する指をペアにしてそのあいだにモノを挟み込むことのようだ。麻雀パイをツモるのもこのバリエーション。
 一見区別が難しいのは「握る」と「つかむ」。「握る」は親指以外の4本の指をそろえる。「つかむ」は5本の指で包み込む。対象に対する指の方向が違うのだな。んでもって教えてもらった例が「テニスのラケットは握る。湯呑はつかむ」。やってみると湯呑を持つ時、指の間はやや広がる。意識して「握る」と各指は接触する。
 まてよ。これピッキングだけじゃなくて、ネックを持つ方の手にも適用できないか?指の間が広がるということはフィンガリングがやりやすいことにつながるはず。そもそも4本をそろえようとしないことで、各指の運動の独立性が高まるのではなかろうか。

 そのあとしばらくの間、ものを持つたびに「これは、握っているのか、つかんでいるのか」を考えながら過ごした。電車のつり革、握ることを前提としたデザインだけど、つかんだほうが安定するなあ、とかね。というわけで結論が出た。「ギターのネックはつかむもの」。
 あたりまえといえばあたりまえすぎるくらいあたりまえ。
 ところが自分がつかんでいるのか握っているのか、あるいはつまんでいるのか無自覚なまま過ごしますと、なかなかこれに気が付かない。その証拠にものすごーく多くの人が「ネックをつまんで」います。娘に付き合って中高の文化祭行って、ネックの持ち方を観察したんだわ。圧倒的につまんでいる人が多い。そうでなければ握っている。たぶんつまむのは「バレーコードを押さえようとして人差し指と親指でネックを挟み込む」から、握るのはクロマチック練習のやりすぎ・・・でなくてやっぱりコードフォームからくる問題なんだろうなあ。私もDやEのコードの時は握っている。要するにてっとり早くギターが弾ける気になろうとすると、ネックをつまんだり、握ったりしてしまうみたいなのよ。更にはフィンガリング練習で「動かさない指は指板につけたままにする」にこだわると「握る」形からなかなか脱却できないだろう。また、つまむ形だと手の甲がネックの下に伸びてしまいがちなので、よくある「立つとギターが弾けない」という症状につながりそうだ。

 こりゃあかん、皆さんに教えないと。知らないと上達は遅くなるだろうし、こうしている間にも挫折者が、と説明動画を撮るつもりでおったのですが、やっぱり動画編集は苦手だ。細部にこだわりすぎる傾向があるので、終わんないんですよ。
 が、早稲田の合格発表に間に合わせたくなる事情があって・・・作りました。
 前回の動画は、突貫工事だったので、画像と音声は同時収録しました。その際カメラがポンコツなのかソフトが間抜けなのか、ずれまくりで実に聞き苦しい(しかも音声が歪みまくり)でしたので、今回は動画と音声を別々に録って合成しました。チョーっとずれとるかもしれんけど、まあ勘弁してーな。あと電車のつり革のつかまり方、京浜急行に朝早く乗っのロケなのですが、解像度を合わせてなくて(合わせ方知らなくて)かなり見苦しくなってしまったところ御勘弁を。

https://www.youtube.com/watch?v=Laa7COWO_kc

 動画本編でも入れたけど、確かにネックの「つかみ」方は、一般的な「つかむ」動きとは違うのだな。通常「つかむ」は手のひらも使って包み込むように持つ。ところが、ネックをつかむとき、通常ネックから手のひらを離している。ここは持ち方について迷った時に意識する必要がある。
 同じような例外は、バイオリンの弓を持つ右手、なんだそうな。そう、子供が苦労する奴です。

 ただしネックをつまむと「バレーコードが抑えにくい」という印象はあるだろう。多くの中高生を見ると、親指と人差し指でネックをガッチリと挟み込んでから他の指を置いているからね。でもこれやると人差し指とそれ以外で動きやすさに差ができるからノリが悪くなるのです。というわけで、バレーコードを押さえるときはまず「人差し指以外の部分を押さえてから」人差し指を添えましょう。これで「つかんだ」状態でバレーコードが押さえられます。E♭が分かりやすい。それで音が出ないようでしたら、バレーコードに取り掛かるにはまだ早いと割り切ろう。

 バレーコードを「つかむ」動きで押さえると、中指や薬指をコチョコチョ動かしてリフを弾くとき、ノリが良くなるでしょ。Rolling StonesのBrown Suger弾いてみて。あれ、って思うくらいカッコよく響くよ。(動画の最後に弾いているの、この曲です。)

 手がものを保持するやり方は4通りある。こういう「分類」を知ると、感覚的なこともこのようにきちんと説明できるようになります。みんな、勉強しようぜ。

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