プロも知らない「コードを押さえるコツ」

 ギターとは段階的詳細化が可能な楽器である。
 最初はコード譜を見て、適当にジャカジャカしながら歌う。
 そのうちアルペジオも入れてみる。
 装飾音を入れたり、ベースラインを半音進行にしたりして味わいを出す。
 キャリアに応じてそれなりの演奏法をとれる。
 手軽な楽器と思われるのはそのためだろう。

 なので、けいおん!においても「最初にコードを覚えたらどうかしら」と言われている。
 個人的には、そのまえにギターに手を慣らすのがあるだろう!とあまりお勧めしないのだが、たしかにそこそこ弾けてそれなりに楽しい。

 一方で「手が小さくて指がコードに届きません」なんて人もいる。そりゃコードから始めるからだよ、E♭を除いて届かないってことはなかろう、と言いたいのだが確かにそれで悩む輩も実在する。ところが「Bang and Dream!(バンドリ!)」というアニメを見て「そういえば届かないってこともありうるなあ」と思い直すに至った。

 このアニメ、ESPというギターメーカー、販売店、音楽エンタメ関連の専門学校のコングロマリットがスポンサーについているので、ギターを始めた主人公がちゃんとした指導を受けて上達するシーンを少しは期待していたのだ。使っているギターがトレモロなしのランダムスターというのもよろしい。あれ、見かけによらず初心者に適しているのだ。ギブソンエクスプローラーをベースにした形だが演奏性に関係のない部分を切り落として軽量化。ネックの形も日本人の体格に合わせているのか、実につかみやすい。フラットトップでストロークの軌道が決めやすい、ブリッジ周りに余計なものがなくてピッキングの自由度が高い、という私が勧める定番の理由も押さえている。最高なのはエクスプローラーゆずりの突き出た角。肘をわずかに触れさせることができるので、腕の力がすっと抜ける。形は変態だが実はいいフォームを身に付けるには最適のギターなのだ。(ヘッドの形も吊り下げて保管しやすいように改良されている。)
 なのだが、4話で同級生を講師にコードの押さえ方練習してたのが「まじヤバくね?」
「あの教え方じゃ指が短いと思うのも当然だ!」

 ちゃんとシナリオ監修してんだよね>ESP。いつもギター講師一般に「こんなことも気が付かずに人に教えているのか!」と怒っている私ですが、今回は「あきれました。」
 でもここまでやってくれれば「ほとんどすべてのギター講師よりも私の方が優れている」と胸を張って言えます。証拠となる事例まで用意してくれるとは。だってESP学園だよ。そこらのギター講師が下手でも「そりゃギタリストという夢に届かなかったんだから何か足りないのは当たり前だよね」と慰めてあげる気にもなりますが、ESP学園は法人だよ。ちゃんとカリキュラムを組んでいるはずだよ。でも誰も口を挟まなかったってことだからね。Didn't anybody tell her?
 なので私が「コードを押さえる時のコツ」を分かりやすく説明して差し上げます。
 というわけで動画を作りました。
https://youtu.be/akY5N8PZ9M4
冒頭の部分、あえてESPのギターを使っています。おまえら、ギターはそこそこいいもの作るんだから(価格はぼったくり)、教える方もしっかりやれよ。あたしもESP、嫌いじゃないんだからさ。動画の最初のコードストローク、ビートルズのLady Madonnaのキメだけど、あの音どうやって録ったかわかる?中華アクションカメラの内蔵マイクだけど。ただの生音よ。無茶苦茶よく響くでしょ。

 バンドリのアニメがそうだったのだが、「5弦2フレットを人差し指で押さえる」というときに「指を伸ばしながら」やってたのだな。「6弦3フレットを中指で押さえる」時も同様だ。掌の位置を変えずに指だけを伸ばすもんだから、長さが足りなく感じるのもわかる。当然指を伸ばすとき、指は指板スレスレの高さを這っていくから、指が指板に対して立った形にはなり難く「隣りの弦に触れてしまって音が出なくなる」となりやすい。
 このやり方の場合、有用なアドバイスはアニメでも言っていたが「中指を先に押さえるとやりやすいよ」程度である。あ、でも動画のアナウンスしっぱいしたな。「焼け石に水」ではなくて「五十歩百歩」が適当だった。バンドリに合わせたGコードの押さえ方をしたので、手が落ち着かなかったこともあったのか、動揺した。

 では実際はどうするか。まずはネックをむんずと「つかむ」。そのあと指を引っ張って所定の位置に置く。ネックをつかめる限り手の大きさが小さすぎるということはない。指先は初めから指板に垂直近い角度で立っているので、隣の弦を避けるのは容易である。

 言われてみるとアホみたいなことなのだが、こんなことにも気が付かずに専門学校のカリキュラム作っている人もいるのだ。強いて付け加えるとすれば、ネックをむんずとつかむときに4本の指が無意識に6弦上に並ぶような癖をつけるようにしよう、かな。
 位置が安定するとコードチェンジの時に動かしやすいし、指が並ぶとリードプレイに切り替えやすい。

 ついでに「コードチェンジがうまくいきません」という人のために一言
「円の動きです」
 軸をどこに取るかはit dependsですよ。

 バンドリ、アニメとしてはどうしようもない出来でしたが、オーナーが主人公とみれば、つまり引退後のプロギタリストがライブハウスを経営。若い人に活動の場を与え、叱咤激励しながら成長を促す物語、と解釈すれば(間延びはしているが)、そんなに悪い話ではない。コミュ症だらけのバンドに「音楽の厳しさを教え、そんな子達でも人前で演奏できるまで育てた」というコトで解釈できる。最終回が実はオーナーの回だったしね。

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